【クイーンS】ポイントは1800mの距離にあり スピード能力高いシャーレイポピーに注目

勝木淳

2023年クイーンステークスに関するデータ,ⒸSPAIA

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クイーンCではありません。クイーンSです

JRAには2月東京3歳牝馬のクイーンCと、7月札幌のクイーンSと似たレース名が2つある。まったく同じレース名というと、(かつての)金杯、天皇賞の二つだが、金杯は同日施行であり、天皇賞は春と秋なので、混同することはまずない。ところが、クイーンCとクイーンSは紛らわしく取り違えやすい。原稿を書く人間にとって、取り扱いには慎重を期する。なお、私はSをサマーのエスと覚え、夏はクイーンSと記憶している。クイーンSが夏から別の季節に移されたりしないことを祈る。2013年と21年は函館で施行された。以下では、それらを除いた8年分のデータを使用してクイーンSを展望する。

クイーンSの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-2-2-2】勝率25.0%、複勝率75.0%、2番人気【3-0-1-4】勝率37.5%、複勝率50.0%。ここが強力で、以下3~6番人気が複勝圏内、7番人気以下が単穴を開けるといった感じだ。ある程度は堅く収まる可能性はありつつも、人気薄も狙えないわけではない。

クイーンSの年齢別成績,ⒸSPAIA


今年もライトクオンタムが参戦するが、3歳は【1-0-0-9】勝率、複勝率10.0%とやや苦戦。17年アエロリットがNHKマイルCに続き連勝を達成した。3歳牝馬といえば、あとで触れるが、オークス経由が主流で、こちらは昨年のウォーターナビレラなど相性がよくない。やはりカギは1800mの距離にあるようで、中距離といえど2000mよりはスピード志向に少し適性が寄る。この若干スピード寄りの適性の見極めが1800m戦を攻略する上で大切だ。

古馬勢は4歳【3-4-2-21】勝率10.0%、複勝率30.0%、5歳【2-3-5-31】勝率4.9%、複勝率24.4%、6歳【2-1-1-17】勝率9.5%、複勝率19.0%。5歳は頭数が多く確率的にはやや落ちるものの、そこまで大きな差はない。


オークスよりNHKマイルC、ヴィクトリアマイル

JRAの主流距離ではない(芝のGⅠがない)1800mは、1400mと同じくスペシャリストが生まれやすい。上記のようにスピードの割合が高い1800mは馬場状態にもよるが、2000mよりはマイル側に好走ゾーンがある。これを頭に入れ、前走成績をみていこう。

クイーンSの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別では、前走(国内)GⅠ【4-3-4-17】勝率14.3%、複勝率39.3%、GⅢ【3-3-2-30】勝率7.9%、複勝率21.1%と重賞出走馬が好成績だ。夏の重賞といえば、格より調子という格言もあるように、格下馬でも状態の良さを生かして好走する場面もみられるが、クイーンSはちょっと当てはまらない。

クイーンSの前走レース(GⅠ)別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠの内訳は冒頭で触れたように前走オークス【0-0-0-6】に対し、NHKマイルC【1-0-0-0】、古馬もヴィクトリアマイル【3-3-4-8】勝率16.7%、複勝率55.6%と、好走馬はマイルGⅠ出走馬からしか出ていない。ヴィクトリアマイル15着イズジョーノキセキが当てはまる。ヴィクトリアマイルの着順内訳は4着以下の成績がよく、10着以下も【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%と巻き返す。

クイーンSの前走レース(GⅢ)別成績,ⒸSPAIA


一方、同格の前走GⅢ組は2000mのマーメイドS【2-2-2-14】勝率10.0%、複勝率30.0%がいい。ここは直近の牝馬限定重賞という点が大きい。だが、これも着順内訳をみれば、納得できる。5着以内【0-1-1-7】、6着以下【2-1-1-7】で凡走組が巻き返す。つまり、2000mで負けた馬が少しスピードに寄る1800mで息を吹き返すわけで、考え方の基本は同じだ。

今年はマーメイドSでハイペースを演出し、13着に沈んだシャーレイポピーがいる。全4勝がマイル戦という経歴からも距離短縮は歓迎で、むしろ2000mで飛ばしたことで、今回は行きっぷりも変わるだろう。適性面ではもっとも向いているような気もする。

フィアスプライドのエプソムCは【0-0-0-1】とデータ的には足りない。同馬は芝のマイル戦【2-1-1-1】で、GⅢ・ターコイズS3着の実績がある。1800mでも勝ち鞍はあるが、どちらかというとスピードタイプ。今回も通用する素地はある。

また、ルビーカサブランカなどの函館記念は【0-0-0-2】。このうち18年エテルナミノルは函館記念3着だったが、ここは6着と着順を落とした。時計を要する函館芝2000mは中距離でも重めにゾーンがあり、詰まった間隔と適性の差が出るようだ。

今年は3勝クラスの弥彦Sを勝ったグランスラムアスクも注目を集めている。しかし、前走3勝クラス1着は【0-0-0-9】。前走3勝クラスは【0-1-1-14】と好走馬を2頭出したが、いずれも3勝クラスを負けた馬だった点は押さえておこう。

クイーンSに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。


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