【函館記念】芝路線に転向し地力をつけたロングラン 抽選突破の強運を生かして激走を狙う
山崎エリカ
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緩みないペースで流れることが多い
過去10年の函館記念はかなりのハイペース4回、ややハイペース2回、平均ペース2回、ややスローペース2回。かなりのスローペースになったことはない。同コースは1角までの距離が約475m。坂の頂上からのスタートで2角まで下り坂が続くため、前半のペースが上がりやすい。ゆえにおおよそ緩みなく流れるレースと言える。
今回はユニコーンライオンとテーオーシリウスの兼ね合い次第だが、両馬ともにレースをハイペースにして良いタイプではなく、兼ね合いは付くと見ている。それでも平均ペースよりは速く流れる可能性が高い。格上のレースではペースが厳しくなっても先行勢ががんばりを見せるものだが、ここはワンテンポ脚を溜めて競馬が出来る中団勢が有利と見て予想を組み立てたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 マイネルウィルトス】
2021年4月新潟の福島民報杯では、超不良馬場を大差勝ち。当時は1番枠から好スタートを切って、好位の内目でレースを進め、最後の直線で外に出されると、他馬が伸びずにどんどん失速していく中、1頭だけ伸びて後続を突き放す異様な強さだった。
本馬は一昨年秋のアルゼンチン共和国杯や昨年の目黒記念でも2着の実績があるように、芝2500mなら捲っていく形で超絶高速馬場でもこなせるが、ベストはタフな馬場。昨年の函館記念も重馬場でかなり時計を要し、レースが消耗戦となった中、出遅れて最後方から無理をせず脚を温存させたことが吉と出たにせよ、2着に善戦した。
今回はそこから繋靭帯炎による1年の休養明け。また今年は昨年の函館記念時ほどの馬場悪化が見込めない。叩かれて本馬が得意とする条件になった時に狙いたい。
【能力値2位 アラタ】
昨年の札幌記念4着馬。同レースはタフな馬場でユニコーンライオンのハナをパンサラッサが叩いて、前後半5F59秒5- 5F61秒7とかなりのハイペース。本馬は12番枠からやや出遅れたが、そこから促してある程度の位置を取りにいく形。好位の外でレースを進めるソダシの後ろでスペースを作りながら追走した。
3~4角でもソダシをひたすらマークしてスペースを詰め、3列目で直線へ。序盤で前にジリジリ食らいつき、ラスト1Fでソダシを交わし、3着ウインマリリンとの差もクビまで詰めての4着だった。このレースは上位3頭が全てその後にGⅠ勝ち。それを考えればよくがんばっている。
本馬は芝2000m前後のレースが得意で、前走は巴賞を快勝。同レースは2番枠からまずまずのスタートを切って、序盤は3列目の内を追走していたが、最終的には飛ばす前2頭からやや離れた4列目馬群の内でスペースを作って追走。3角のペースが落ちたところで前との差を詰め、4角で外に誘導して3列目で直線へ。早め先頭に立ったことでバテたドーブネをラスト1Fで差し、3/4差で勝利した。
前走は実質差しの競馬で展開がピッタリとはまった。昨年の札幌記念と同等の自己最高指数を記録。函館記念で好走する巴賞組は敗退馬が多く、能力を出し切った後の一戦となる今回は高評価しにくい。
【能力値3位 ドーブネ】
昨春のクラシック出走は叶わなかったが、10月に戦列復帰すると阪神芝1800mの2勝クラスと3勝クラスを連勝。そこからは安定した成績で3走前の中山記念でも3着と善戦した。同レースは4番枠からまずまずのスタートで外からショウナンマグマに絡まれたが、これを制して3角まで淡々としたペースを刻み、3~4角で仕掛けを待って直線へ。直線序盤で同馬に並ばれたが踏ん張ってこれを振り切り、押し切りを図るところを内と外から差された。
前走の巴賞は15番枠からやや出遅れ、そこから軽く促して一旦2番手外を狙ったものの、テーオーシリウスとプライドランドがペースを引き上げたことで、最終的にはやや離れた3番手で進めていく形。道中も前2頭から2馬身ほど離れた位置で少し脚を溜め、3角手前で外からじわっと動き、4角で先頭。直線序盤は内で食い下がるテーオーシリウスとの叩き合いになったが、ラスト1Fで抜け出しを図ったところでアラタに差されての3/4差の2着だった。
中山記念も負けて強しだったが、前走も負けて強しの好内容だった。特に前走はアラタと位置取りが逆なら、逆転もあったと見ている。今回も脚を溜められれば、通用の余地はある。
【能力値3位 テーオーシリウス】
3走前の美浦Sは同型馬の不在を生かし、5番枠から好スタートを切って楽にハナを主張。1~2角から後続を引き離して大逃げの形。ただし、5F通過60秒8のスローペースでマイペースの逃げだった。当時が5馬身差の圧勝で好指数を記録しているように、自分の形で競馬ができれば強い馬だ。
しかし、今回は同型馬のユニコーンライオンが出走。それも同馬は2番枠に対して、本馬は14番枠と外枠。前走も緩みないペースで逃げて3着だったように、ここへ来て地力を付けているのは確か。うまく自分の競馬ができれば侮れない存在だが、さてどうなるか。
【能力値5位 ブローザホーン】
芝の長い距離を使われるようになって本格化した馬。前走の烏丸Sは9番枠から五分のスタートを切って、好位の中目を追走。3~4角で前との差を詰め、2列目で直線へ。序盤で早々と先頭に立ち、そこから後続を一気に突き放して5馬身差とオープン級の指数で圧勝した。
ただ前走は不良とタフな馬場で、かなり能力を出し切っているだけに、その疲れが気になるところ。さらに今回は距離短縮となると、通用するのは簡単ではなさそうだ。
穴馬は芝路線に転向して地力をつけたロングラン
本馬は久々の芝のレースとなった6走前の2勝クラスを勝利。ダートで大敗が続いていたところから、まさに一変だった。そこからは芝路線に転向し、3勝クラスをあっさり突破。オープンに入ってからもディセンバーS、小倉大賞典と小差の競馬をしているように、オープンでも通用する能力はある。
3走前の小倉大賞典はタフな馬場ではあったが、暴走逃げ馬レッドベルオーブが1~2角でやや逸走したため、極端なハイペースではなかった。本馬は14番枠からやや出遅れ、それを挽回し、中団の外目から最後の直線でも馬場の良い外を通って勝ち馬から0.2秒差の4着まで迫った。
前走の新潟大賞典は極悪馬場でセイウンハーデスが大逃げを打ち、先行馬を壊滅させるほどの緩みない流れ。本馬は五分のスタートを切って好位の外と、先行したこともあって11着と大敗した。芝で急変したタイプだけに、前走の芝不良馬場は堪えたのだろう。今回は立て直されての一戦。抽選を突破し、ラスト1枠に入った強運を生かしての激走に期待する。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)マイネルウィルトスの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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