【函館記念】昨年1着のハヤヤッコ、3着スカーフェイスに連続好走のチャンスあり! 鍵は巴賞組の取捨

勝木淳

2023年函館記念に関するデータ,ⒸSPAIA

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通常のアプローチを捨てる重賞

夏競馬の重賞はハンデ戦で実力拮抗の組み合わせが多く、どれも難解だが、とりわけ函館記念は最難関のひとつ。昨年は重馬場で行われ、7、1、4番人気と函館記念にしては堅かった。その前2年は15、13、3番人気、2、14、12番人気とふた桁人気が2頭も絡んだ。出走馬を隅々までよく検討しないと、馬券はまず当たらない。力関係という概念を忘れてもいいほどの結果ばかりだ。

のちほど紹介するが、過去10年で前哨戦の巴賞掲示板は【0-0-1-28】、6着以下【1-4-0-21】。函館記念の難易度を象徴する。さらに今年の巴賞はフルゲートで2、1、3番人気決着。着順に反して力を秘めた馬も多そうだ。データは過去10年分を使用する。

函館記念の人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気の傾向から。1番人気【1-1-0-8】勝率10.0%、複勝率20.0%も象徴的だ。昨年2着マイネルウィルトス、19年1着マイスタイル以外はすべて人気を裏切った。アテになるのは3番人気【3-0-2-5】勝率30.0%、複勝率50.0%ぐらいで、人気で馬券を買うのは危険だ。10番人気以下は【1-5-2-61】勝率1.4%、複勝率11.6%で2着の半数はここに当てはまる。

函館記念の年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢の傾向も正直、はっきりしない。4歳【2-3-1-16】勝率9.1%、複勝率27.3%、5歳【3-0-5-32】勝率7.5%、複勝率20.0%、6歳【4-3-3-43】勝率7.5%、複勝率18.9%、7歳以上【1-4-0-36】勝率2.4%、複勝率12.2%。2着7頭が6歳以上と、人気と同じくほかの重賞のセオリーが通用しない。なお、4歳の1、2番人気は【0-0-0-7】と結果を残していない。

巴賞と函館記念の関係性

人気や年齢のデータから通常のアプローチが通じないことははっきりしたが、では的中に近づく道はどこにあるのか。ここからは前走成績を参考に紐解いていこう。

函館記念の前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別成績をみると、確率的には前走GⅡ【3-3-0-11】勝率17.6%、複勝率35.3%が絞りやすそう。今年は日経賞7着キングオブドラゴンがいる。ところが、前走日経賞【0-1-0-2】。18年サクラアンプルールが日経賞3着から2着と好走した一例にとどまる。

函館記念の前走レース別(GⅢ)成績,ⒸSPAIA


こうなると、前走GⅢ【5-2-4-33】勝率11.4%、複勝率25.0%をアテにしたいところだ。内訳をみると、ヤマニンサルバムなどが該当するエプソムCは【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%。ここは5着以内【2-1-0-0】、6着以下【0-0-0-7】なので、6着ヤマニンサルバムなどは好走ゾーンには入らない。

つづいてスカーフェイスなどの鳴尾記念は【2-0-1-10】勝率15.4%、複勝率23.1%。3着以内【1-0-1-4】、6~9着【1-0-0-3】で、8着スカーフェイスはチャンス。昨年の函館記念3着馬でもある。

凡走組が買えるのは新潟大賞典【1-1-2-7】勝率9.1%、複勝率36.4%。4着【1-0-0-0】、6~9着【0-0-2-1】、10着以下【0-1-0-4】なので、3着イクスプロージョンより6着ハヤヤッコが面白い。なんといっても昨年の覇者だ。

函館記念の、巴賞着順別成績,ⒸSPAIA


前走オープン・L【1-4-2-67】勝率1.4%、複勝率9.5%は巴賞【1-4-1-49】勝率1.8%、複勝率10.9%の取捨がカギ。頭数が多く、確率面を考えれば大胆に消しにかかってもいいが、なんでもありの函館記念ではやはり無視はできない。着順の内訳は冒頭で紹介したように5着以内【0-0-1-28】、6着以下【1-4-0-21】と、ほぼ巴賞で凡走した組から好走馬が出現する。

巴賞と函館記念の関係はやはり距離にヒントがある。巴賞は1コーナーまで距離が短い1800m戦のため、先行争いが2コーナーまでもつれない限り、流れが落ち着きやすく、基本的には先行馬が優位。まして馬場も最終週よりはいい。

対する函館記念は最終週で馬場が荒れていることに加え、正面直線を一杯に使う2000m戦では1コーナーまで距離があり、先行争いが速くなりやすい。宝塚記念のように序盤600mが速くなり、突っ込んで入った場合、最後はスタミナ勝負になる。巴賞と函館記念は問われる適性が大きく異なるため、巴賞で力を出せなかった馬のなかから函館記念好走馬が出やすい。

今年でいえば1着アラタ、2着ドーブネ、3着テーオーシリウスより13着レッドジェニアルの方がデータ的にはいい。今年の巴賞もテーオーシリウスがそこまで飛ばさず、前半1000m通過1:00.0とオープンとしては速くないペースになり、4コーナー4、1、2番手で決着した。函館記念は重馬場だった昨年も含め、直近3年は速いペースで流れ、差し馬勢が台頭した。テーオーシリウスもユニコーンライオンの参戦で巴賞のようなマイペースを決められない公算が高く、それでもハナを叩けば、ハイペースを誘発する可能性が高い。そうなると厳しい戦いになりそうだ。

函館記念のデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。


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