【マーメイドS】優勝馬の最低斤量は48キロ、藤岡康太騎手が最多勝 「最高記録」を振り返る

緒方きしん

マーメイドステークス思い出の最高記録,ⒸSPAIA

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馬場を味方に大波乱を演出したトーホウシャイン

春のGⅠ連続開催も安田記念で一区切りとなり、宝塚記念や帝王賞を楽しみに待つシーズンとなった。そんな中、今週は毎年のように大荒れとなる一戦が行われる。それが、牝馬限定ハンデ戦のマーメイドSだ。2006年にハンデ戦になって以降、波乱決着が続いてきた同レースだが、特にここ5年は10番人気が3勝、7番人気が2勝とその傾向が顕著になっている。

そんなレースを制した牝馬のうち、斤量が最重量だったのがフサイチエアデールの58キロ。55キロを背負って逃げる1番人気トゥザヴィクトリーを鋭く差し切った。しかしこのレースはハンデ戦になる前で、ハンデ戦として最重量の勝利を挙げたのは2013年のマルセリーナとなる。

この年は斤量54キロのアロマティコが人気を集めていたが、好位から抜け出したマルセリーナがアロマティコの追い上げを凌いだ。マルセリーナはトップハンデの56キロが嫌われたか、あるいは2年以上勝ち星から見放されていたからか7番人気。2着に逃げ粘った10番人気アグネスワルツとの馬連は183.9倍となった。

反対に最も軽斤量でマーメイドSを制したのは2008年のトーホウシャインで、その斤量は48キロ。重馬場も味方につけ、上がり最速で差し切った。同馬は当時2勝馬で、1000万以下(現2歳クラス)にあがってからは1年間で7戦して最高着順が4着。重賞はこれが初挑戦で12頭中12番人気というのも頷ける。

しかし、レースではベッラレイアやザレマといった相手に堂々たる競馬をみせた。配当は単勝116.3倍、馬連740.0倍という大波乱となった。重い斤量を跳ね返した馬、軽ハンデを味方につけ大激走した馬、どちらも万馬券演出に一役買った。


ハンデ重賞となってから3勝の藤岡康太騎手

レースレコードは長らく2007年のディアチャンスが記録した1:58.4だったが、昨年ウインマイティーが1:58.3で勝利し、15年ぶりに更新した。ウインマイティーは10番人気での勝利だったが、鞍上の和田竜二騎手は2009年にも9番人気コスモプラチナで波乱を巻き起こしている。

このレースの最多勝利騎手は、3勝タイで武豊騎手と藤岡康太騎手。武豊騎手はハンデ戦となる2006年よりも前に2勝をあげているため、ハンデ戦となってからのマーメイドSという意味では藤岡康太騎手が最多勝と言える。

武豊騎手は1997年エアグルーヴ、2004年アドマイヤグルーヴで母娘の同一重賞制覇を達成。この2頭は1番人気での勝利で、もう一つの勝ち星であるディアチャンスも2番人気。いずれも人気に応えての勝利だった。一方、藤岡康太騎手は2010年3番人気ブライティアパルス、2014年1番人気ディアデラマドレ、2015年8番人気シャトーブランシュと、幅広い人気で勝利を挙げている。なかでもシャトーブランシュはのちにエリザベス女王杯と宝塚記念を制するマリアライトを同斤量で差し切る見事な競馬をみせた。

またマーメイドSは繁殖としても活躍する牝馬が多く勝利している。第1回勝ち馬のシャイニンレーサーは、クイーンC勝ち馬シャイニンルビーを、第3回勝ち馬のランフォザドリームは、函館2歳S勝ち馬フィーユドゥレーヴや桜花賞2着馬オウケンサクラを輩出した。エアグルーヴやローズバドらの活躍は説明不要だろう。

上述の藤岡康太騎手と制した牝馬からも、ディアデラマドレは2021年マーメイドSの2着馬クラヴェルを輩出し、シャトーブランシュは昨年の年度代表馬イクイノックスやラジオNIKKEI賞の勝ち馬ヴァイスメテオールを輩出している。今年も未来の名繁殖牝馬が誕生する可能性は十分ある。大波乱か、順当決着かにも注目しつつ、見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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