【大阪杯】大事なのは先行力 アラタ、マテンロウレオ、あるいはダノンザキッドの巻き返しも

勝木淳

大阪杯インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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問われるのは器用さ

2017年にGⅠ昇格、直後の2年はキタサンブラック、スワーヴリチャードと1番人気が連勝したあと、大阪杯は波乱決着が目立つようになった。一昨年はコントレイル3着、グランアレグリア4着でレイパパレが逃げ切り、モズベッロが2着に入った。昨年も断然人気エフフォーリアが9着に敗れ、ポタジェ、レイパパレ、アリーヴォで決着し、単勝5870円、3連単は50万円を超えた。

春特有の不安定な天候に加え、阪神芝内回り2000mという紛れやすい舞台設定も要因だろう。最後の直線はAコースで356.5mと短く、急坂がある。コーナーで動ける器用さと坂を跳ね返す力強さが問われる。今年は昨秋の中距離GⅠを制したヴェラアズール、イクイノックスがドバイへ行ったが、GⅠ馬はエリザベス女王杯を勝ったジェラルディーナに昨年覇者ポタジェ、昨年の二冠牝馬スターズオンアースに2歳GⅠ馬キラーアビリティ、ダノンザキッドの5頭。前走重賞Vはヴェルトライゼンデ、ノースブリッジ、ヒシイグアスなど多彩。それでも大阪杯はひと波乱あるだろうか。データはGⅠ昇格後の6年分を使用する。

過去6年大阪杯人気別成績,ⒸSPAIA


上記の通り1番人気は【2-0-2-2】勝率33.3%、複勝率66.7%で崩れてはいないが、現在4連敗中で単勝はほかを狙いたくなるところだ。以下、4番人気【1-1-2-2】勝率16.7%、複勝率66.7%までが圏内で、6~9番人気の伏兵陣まで注意が必要だ。10番人気以下は【0-0-0-31】なので、大波乱はないものの、すんなり上位人気で決まる可能性も低い。

過去6年大阪杯年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別では4歳【2-2-5-19】勝率7.1%、複勝率32.1%に対し、5歳【4-3-1-23】勝率12.9%、複勝率25.8%で単勝は5歳中心、連勝式なら4歳といった感じ。昨年も5、5、4歳で決着したようにコースも馬場も難しい競馬になりやすく、経験が勢いを上回る。

過去6年大阪杯位置取り別成績,ⒸSPAIA


内回り2000mという舞台の傾向として位置取り別成績をあげる。逃げ【1-0-1-4】勝率16.7%、複勝率33.3%、先行【3-4-0-11】勝率16.7%、複勝率38.9%に対し、差し馬は中団【1-2-4-32】勝率2.6%、複勝率17.9%、後方【0-0-0-18】で劣勢。先行力という武器が最大限活きる舞台だ。後ろからなら、まくり【1-0-1-2】勝率25.0%、複勝率50.0%と機動力がほしい。


差すジェラルディーナより気になる先行馬は

5歳、逃げ、先行勢優勢といったデータからはジャックドール、ノースブリッジといったところが浮上するが、では戦歴からどの馬が好走ゾーンに入ってくるだろうか。

過去6年大阪杯前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず前走クラス別成績から。前走海外【0-0-0-3】はすべて香港Cでジャックドールには気になるデータだ。昨年は2番人気で逃げて5着と連勝が止まった。控える競馬を会得した今年は前進があるだろうか。

前走GⅠ【1-1-1-9】勝率8.3%、複勝率25.0%は有馬記念【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%。17年キタサンブラックは有馬記念2着から勝利、19年キセキは有馬記念5着から2着と巻き返した。今年は3着ジェラルディーナが当てはまる。好走2頭はいずれも有馬記念で逃げ・先行だった先行型であり、ジェラルディーナはそこに該当しない。母ジェンティルドンナは先行力もあったが、こちらはやや差しに回るレースが多いので、内回り2000mは気になるところだ。なお、スターズオンアースの秋華賞はデータなし。こちらも直線の長いコースでの成績が目立つので、どこまで立ち回れるかがカギになる。

過去6年大阪杯前走GⅡレース別成績,ⒸSPAIA


次に前走GⅡ【4-5-4-45】勝率6.9%、複勝率22.4%について内訳をみる。前哨戦の金鯱賞【3-2-1-18】勝率12.5%、複勝率25.0%は5着以内【3-1-1-10】、6着以下【0-1-0-8】で、3着アラタが圏内に入る。 金鯱賞は前後半1000m1:00.9-58.9のスローペースをプログノーシスが上がり33.9で差し切った。展開を味方につけたアラタは完敗の形だが、こちらも直線で進路を失う場面もあり、もう少しやれた。同馬も内回り向きの器用さがある。

東の前哨戦中山記念は【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%で20年ラッキーライラックが勝利した。こちらは着順の目立つ傾向はなく、1、2着ヒシイグアス、ラーグルフのほかに10、11着モズベッロ、ダノンザキッドも注意。というのも人気別だと中山記念3番人気以内【1-1-1-4】、5番人気以下【0-0-0-2】なので、ヒシイグアス、ラーグルフよりダノンザキッドになる。

中山記念は前半1000m1:00.0だったが、序盤600m通過後から残り200mまですべて11秒台が続くタイトな競馬で、最後200m12.4でヒシイグアスとラーグルフに逆転を許した。この流れを差してきた1、2着も評価できるが、先行して11着のダノンザキッドは休み明けだと割り切れる。3歳時に富士S4着からマイルCS3着、昨秋も関屋記念、毎日王冠、マイルCS、香港Cと使いながらパフォーマンスを上げた。切れ味勝負にならない内回りもこなせる。

マテンロウレオ、キラーアビリティの京都記念は【0-2-1-12】複勝率20.0%。ここは2着以内【0-1-1-4】、3着以下【0-1-0-8】で、素直に2着マテンロウレオを上にとりたい。今年の京都記念はドウデュースが快勝した。前半で正面直線を目一杯使う阪神芝2200mらしく前半600m通過34.6、1000m59.5の締まった流れになり、最後は11.6-11.3-11.6。勝負所で一旦下がりながらしぶとかったマテンロウレオも有力だ。

ほかではノースブリッジのAJCC【0-0-0-5】、ヴェルトライゼンデの日経新春杯【0-0-0-3】。先行力があるノースブリッジ、阪神内回りに強いドリームジャーニー産駒ヴェルトライゼンデはジャパンC3着の実績馬。どちらもデータの壁を越える可能性はある。

最後は昨年アリーヴォが3着に入った小倉大賞典から勝ったヒンドゥタイムズ。小倉大賞典は重馬場で行われ、1:49.7と時計を要した。レッドベルオーブが大逃げを打ち、前半1000m1:00.3で最後600mは37.0とスタミナ比べになった。これで重馬場2勝のヒンドゥタイムズは馬場状態次第で伏兵になる。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

大阪杯インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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