【中山牝馬S】末脚勝負で実力発揮! 「黄金配合」ドリームジャーニーがスルーセブンシーズを送り込む【マイナー種牡馬応援団】

緒方きしん

ドリームジャーニー産駒の成績,ⒸSPAIA

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父ステイゴールド×母父メジロマックイーンの黄金配合

先週の土曜日は、チューリップ賞でリアルインパクト産駒のモズメイメイが勝利し、オーシャンSでタートルボウル産駒のヴェントヴォーチェが勝利。マイナー種牡馬の活躍が目立つ1日となった。

さて、今週は土曜の中山メインで中山牝馬ステークスが開催される。過去にはマイネサマンサ(父ディアブロ)やマイネイサベル(父テレグノシス)、ヤマニンメルベイユ(父メジロマックイーン)といった魅力的な牝馬たちが勝ってきたレースで、マイナー種牡馬たちが輝く年も多い。昨年はオルフェーヴル産駒のクリノプレミアムが制したが、今回は今年1月に3勝目をあげた5歳馬スルーセブンシーズに注目。父はドリームジャーニーである。

ドリームジャーニーは、父ステイゴールド、母オリエンタルアート、母父メジロマックイーンという血統。ステイゴールドは中長距離のトップクラスに君臨しながらも取りこぼしが多かったことで知られる。菊花賞の2走前に挑戦した条件戦・阿寒湖特別での勝利から約3年後の目黒記念での勝利まで、春秋の天皇賞、宝塚記念などで数々の名勝負を繰り広げた。そしてラストランとなった香港ヴァーズで感動のGⅠ制覇を成し遂げ、種牡馬となったのである。

初年度から中山GJ勝ち馬マイネルネオスや重賞馬ソリッドプラチナム、コスモプラチナなどを輩出するステイゴールドだったが、運命の牝馬との出会いは、種牡馬2年目にあった。

その運命の牝馬がオリエンタルアート。1997年生まれの牝馬で、現役時は23戦3勝という戦績を残した。あげた勝ち星は全てダートというパワフルなタイプであると同時に、芝の準オープン・タイランドCで2着に食い込むなど、芝の適性も示した。また、彼女のあげた3勝は全て池添謙一騎手とのコンビによるもの。そんな彼女は、初仔のドリームジャーニーによって種牡馬ステイゴールドの評価を高めただけでなく、三冠馬オルフェーヴルを輩出して、「ステイゴールド×メジロマックイーン」のいわゆる“黄金配合”に注目を集めるきっかけを作った。

長距離馬から短距離馬まで様々な産駒を輩出

ドリームジャーニーの種牡馬成績,ⒸSPAIA
ドリームジャーニー産駒の通算成績,ⒸSPAIA


2006年の9月にデビューしたドリームジャーニーは、新馬戦と続く芙蓉Sを連勝。東スポ杯2歳Sでの3着を挟み、暮れの朝日杯FSで勝利し、2歳王者に輝いた。ただ、3歳以降はダービー、菊花賞で5着など善戦しつつも、なかなか2つ目のGⅠタイトルには手が届かない日々が続く。

小倉記念、朝日チャレンジCと連勝させた池添騎手とともに試行錯誤を積み重ね、2度目となるGⅠ制覇の時を待った。その瞬間が訪れたのは、2009年の宝塚記念。ドリームジャーニーは5歳となっていた。ディープスカイやスクリーンヒーロー、カンパニーやマイネルキッツらが揃った一戦を上がり最速で快勝すると、同年の有馬記念でもブエナビスタ、マツリダゴッホらを退けてグランプリを連覇。そして最優秀4歳以上牡馬に選出されたのだった。

ドリームジャーニーは引退後、社台スタリオンステーションで種牡馬入り。初年度である2013年生まれの生産馬は36頭で、その翌年以降は31→31→40→3→14→10→4頭と推移。ポテンシャルは認められつつも、受胎率が悪かったこともあり多くの産駒を送り出すことは叶わなかった。しかしデビューした馬たちは実力派が多く、しかも様々なタイプが見られる。

産駒のJRA重賞初勝利をあげたミライヘノツバサは3400m戦のダイヤモンドSを勝利。片やスピードで勝負する産駒もおり、トゥラヴェスーラは淀短距離S、福島テレビOPと1200m戦のオープン競走で勝利をあげ、阪急杯、京王杯SCと1400m戦の重賞で2着に食い込んでいるほか、牝馬のエスティタートも1200m戦シルクロードSで2着と好走した。

データを見ると芝1900m以上の成績が比較的よく、通算【40-47-54-334】で勝率は8.4%。ただ、勝率の上ではダート1900m以上が【4-4-4-34】で8.7%とわずかに上回る。全弟のオルフェーヴルがマルシュロレーヌやウシュバテソーロ、ショウナンナデシコやジャスティンといったダートの活躍馬を輩出しているのと同様に、その母オリエンタルアートの影響が感じられる。

また、これまで平地であげた93勝のうち、実に47勝が上がり最速での勝利。特に直近20勝は12勝が上がり最速、3勝が同2位と、末脚勝負で実力を発揮する傾向が強まっている。

中山牝馬Sは、多くの名繁殖を送り出したレースでもある。1992年の勝ち馬スカーレットブーケはダイワスカーレットやダイワメジャーを輩出、2009年の勝ち馬キストゥヘヴンはタイムトゥヘヴンを輩出、さらに1986年の勝ち馬ユキノローズは孫世代にレインボーペガサスがいる。今年の出走馬からもそうした名繁殖が誕生するかもしれない。そんな夢に思いを馳せつつ、レースを見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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