【エルムS】カギはマリーンS組の取捨! 函館と札幌のダート1700mの違いを分析し見えた傾向とは

勝木淳

エルムSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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ダート1700m、函館と札幌の違い

北海道のダート戦線は今年も函館の大沼S(6/26)、マリーンS(7/9)と戦い、札幌で重賞のエルムSへと進む。重賞なので別路線からいきなりここに挑む馬もいるが、基本的に北海道のダート1700mでしのぎを削ってきた馬たちが強い。だが、北海道のダート1700mとひと括りにするのは早計で、函館と札幌では同じ直線の短いコースでも問われる適性が異なる。先にこれを踏まえておきたい。

過去10年エルムS参考データ1,ⒸSPAIA


過去10年エルムS参考データ2,ⒸSPAIA


17~21年の函館、札幌ダート1700m、1勝クラス以上の位置取り別成績を出すと、函館は逃げ【29-23-7-51】勝率26.4%、複勝率53.6%に対し、札幌は逃げ【13-11-7-89】勝率10.8%、複勝率25.8%と大きく下がる。その分、札幌は先行が【73-58-47-205】勝率19.1%、複勝率46.5%と好成績。まくりは函館【5-4-2-12】勝率21.7%、複勝率47.8%、札幌【5-5-2-9】勝率23.8%、複勝率57.1%とわずかだが札幌が上回る。

コース図を確認してほしい。函館はコーナーがきつく、いわゆる小回りコースのレイアウト。たとえ目標にされても主導権を握る逃げに利があるが、札幌はコーナーが緩く、曲線部分がコース全体に占める割合が高く、函館に比べると円に近い。緩いコーナーを利用して3、4コーナーで動ける組の追いあげがスムーズ。さすがに札幌も直線が短いので、追い込みが決まるわけではないが、ある程度前につけられ、逃げ馬を目標に早めに機動力を使って追いあげる競馬が有効。函館から札幌への舞台替わりの際は参考にしたい。ここでは函館で行われた13、21年も含め過去10年間のデータを使用しつつ、傾向の違いについても考える。

4番人気以内9勝

まずは人気、年齢といったエルムSの全体的なデータ傾向をざっくりとみていこう。

過去10年エルムS人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-1-3-4】勝率20.0%、複勝率60.0%とやや勝ち切れていないが、2番人気【3-2-0-5】勝率30.0%、複勝率50.0%、3番人気【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%、4番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%と勝ち馬は7番人気1勝を除き、ほぼ4番人気以内。10番人気以下は【0-1-2-39】複勝率7.1%と少ないが、そもそも札幌ダート1700mのフルゲートは14頭。この10年でフルゲートは5回、うち1回は函館、札幌は4回と少ないので、それは考慮しておきたい。

過去10年エルムS年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別は4歳が【4-1-2-10】勝率23.5%、複勝率41.2%でトップ。ついで5歳【4-3-4-21】勝率12.5%、複勝率34.4%。若い世代が優勢。重賞1着馬は古馬の基準56キロから斤量を課されるため、重賞勝ちがあるベテランが出走を控え、そのため苦戦するといった側面がある。それでも7歳以上【0-4-1-36】複勝率12.2%、連下にはきっちり入れたい。4歳勢は今年、兵庫、JRAで8連勝中のブラッティーキッドがいる。

スピードの持続力が問われたマリーンS

上位人気堅実、4、5歳の好走確率が高いといった点を踏まえつつ、ここからは前走成績に注目していこう。

過去10年エルムS前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走地方出走のうち、スワーヴアラミスが該当する帝王賞は【0-1-0-3】複勝率25.0%。12年帝王賞2着エスポワールシチーの2着がある。JRAの重賞に目を転じると、前走GⅢは【1-5-3-26】勝率2.9%、複勝率25.7%。今年ではヒストリーメイカー、ロードレガリスのプロキオンS【0-2-0-7】複勝率22.2%。ただ好走は中京ダート1400mでのもの。小倉ダート1700mで開催された昨年は4、12着だった。

過去10年エルムS前走マリーンS着順別成績,ⒸSPAIA


となると注目は前走オープン・リステッド【6-3-2-45】勝率10.7%、複勝率19.6%。主要はマリーンS【5-2-1-32】勝率12.5%、複勝率20.0%。今年も1~6着馬など多数参戦予定。その着順別成績は1着【2-1-1-3】勝率28.6%、複勝率57.1%、2着【2-1-0-2】勝率40.0%、複勝率60.0%、3着【1-0-0-4】勝率、複勝率20.0%まで。4着以下は【0-0-0-23】と極端。となると、今年はフルデプスリーダー、ウェルドーン、ロードエクレールまで。

函館から札幌へ変わるので、気になる前走位置取り別成績は逃げ【1-1-1-2】勝率20.0%、複勝率60.0%で札幌開催なら【1-1-0-2】。先行【1-1-0-8】勝率10.0%、複勝率20.0%で札幌開催なら【0-0-0-6】。中団【2-0-0-17】勝率、複勝率10.5%で札幌開催なら【2-0-0-13】。やはり札幌だと差しもいい。

当然逃げたロードエクレールはマークしたいが、先行したフルデプスリーダーやウェルドーンはどうだろうか。4着以下のデータには引っ掛かるが、オメガレインボー、ダンツキャッスルも視野に入れたい。特にオメガレインボーは昨年2着、ダンツキャッスルは昨年札幌の大沼S差し切り勝ちと札幌と相性がいい差し馬だ。

今年のマリーンS自体は小雨のなか良馬場で行われ、最後200m12.9以外は6ハロン連続12.2以内という緩みのない締まった競馬。レベルの高い持久戦だったので、今年も有力だ。大沼Sは【0-1-1-3】複勝率40.0%。その大沼Sで1着だった馬は【0-0-1-0】。16年モンドクラッセが3着だった。これに当てはまるアイオライトも候補に加えたい。

最後にブラッティーキッドの前走3勝クラス【2-0-0-5】勝率、複勝率28.6%をジャッジ。勝利した2頭フリートストリート、リッカルドはいずれも前走は7月福島の安達太良S。間隔を詰めながらも、昇級初戦で重賞を勝った。ブラッティーキッドの中1週は心配なさそうだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


エルムSインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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