【函館記念】実績上位勢は函館適性に不安アリ! 北の名物重賞は今年も波乱が待っている

勝木淳

函館記念インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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7番人気以下の2、3着は18回

夏競馬の重賞は波乱傾向にあるレースが多い。サラブレッドは暑さに弱く、調整が難しいこともその要因のひとつ。だからこそ夏に競馬開催がない国は案外多い。日本の競馬も年々、暑熱対策は進んでいる。辛い季節だからこそ、せめて、できるだけ馬の負担にならないようにしてほしい。

だが、酷暑になりにくい函館記念も毎年上位人気ですんなり決まらない。むしろ夏競馬屈指の波乱重賞。涼しい北海道とは最近は言えなくなりつつあるが、波乱の理由は暑さだけではない。我々も暑さに負けず、根気よく検討し、的中に近づきたい。ここでは過去10年間のデータを使用して傾向をつかんでいく。


過去10年函館記念人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績。1番人気【1-0-0-9】勝率、複勝率たった10.0%。19年マイスタイル1勝、馬券圏内もその1回。9回は消しで正解というから恐ろしい。ただ5番人気以内が9勝なので、アタマから荒れるというケースは少ない。その反面、5番人気以内の2、3着はわずか2頭と極端。7番人気【0-2-4-4】複勝率60.0%をはじめ、2、3着は7番人気以下が18頭。10番人気以下は【1-5-2-61】で2着が5回。馬連万馬券は3回出現した。


過去10年函館記念年齢別成績,ⒸSPAIA


4歳【2-3-1-16】勝率9.1%、複勝率27.3%は年齢別でトップだが、5歳【3-0-5-34】勝率7.1%、複勝率19.0%、6歳【3-2-3-40】勝率6.3%、複勝率16.7%、7歳以上【2-5-0-37】勝率4.5%、複勝率15.9%とベテラン勢も元気。今年の中心は実績最上位サンレイポケット、マイネルウィルトスなど6、7歳。年齢を理由に人気に応えられないことはなさそうだ。


巴賞の狙いどころ

ベテラン勢中心の今年はいささか例年とは異なる図式。しっかり前走成績を分析し、ヒントをつかみたい。


過去10年函館記念前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別成績では前走GⅠ【0-1-2-12】複勝率20.0%。10着以下【0-1-2-9】複勝率25.0%で大敗からの巻き返しがいい。ギベオンとハヤヤッコが該当する。また前走GⅡ【3-2-0-14】勝率15.8%、複勝率26.3%は目黒記念が【2-1-0-10】勝率15.4%、複勝率23.1%。昨年8着だったマイネルウィルトスは前走目黒記念2着。目黒記念2着馬は函館記念【1-0-0-0】、14年ラブイズブーシェ2番人気1着と同じだ。

しかしマイネルウィルトスは小倉で3勝クラス勝ちこそあるが、オープン入り後は新潟や東京での好走が目立ち、同じ北海道でもコーナーが緩い札幌記念4着。やや函館向きではない点には注意したい。


過去10年函館記念前走GⅢ組レース別成績,ⒸSPAIA


前走GⅢ【5-2-4-31】勝率11.9%、複勝率26.2%の内訳を見ると、エプソムC【2-1-0-9】勝率16.7%、複勝率25.0%、鳴尾記念【2-0-1-8】勝率18.2%、複勝率27.3%、マーメイドS【0-0-1-3】複勝率25.0%と6月の重賞が目立つ。ほかでは新潟大賞典【1-1-2-6】勝率10.0%、複勝率40.0%が好成績。鳴尾記念からは3着サンレイポケット、新潟大賞典から10着スマイル、12着プレシャスブルーが出走予定だ。


過去10年函館記念前走GⅢ組着順別成績,ⒸSPAIA


GⅢ組全体の着順別成績を出すと、サンレイポケットの3着は【1-1-1-4】勝率14.3%、複勝率42.9%。まずまずといった感じだが、前走重賞3着という字面ほど信用できないとも読める。それでも10着以下【0-1-1-14】複勝率12.5%よりは信じられる。

問題はサンレイポケットの適性だろう。オープン3着以内の6回中5回は東京、新潟、中京の芝1800~2000mと残る1回は阪神芝2200mの京都記念。函館は初出走で、オープン入り後の内回り、小回りへの出走は前出の京都記念のみ。左回りや直線が長いコースを中心に使われてきたのはそこへの適性が高いからであり、函館出走は不安といえば不安だ。

前走重賞組のなかでデータから推せるサンレイポケット、マイネルウィルトスはともに函館適性に不安がある。今年も波乱を視野に考えたい。そこで函館記念の前哨戦・巴賞【1-5-2-47】勝率1.8%、複勝率14.5%についても考える。中1週の巴賞は前哨戦の割に機能していないのは事実だが、それでも19、20年と連続で穴を開けたローテであり、簡単には見限れない。


過去10年函館記念前走巴賞組着順別成績,ⒸSPAIA


巴賞の印象が悪いのは、1着馬【0-0-0-9】、2着【0-0-0-6】と上位好走馬がさっぱりだから。ステップレースの巴賞好走はすなわち、函館記念凡走のサインなのだから、競馬は難しい。ではどの着順がいいのか。データでは3着【0-0-1-4】複勝率20.0%、5着【0-1-0-5】複勝率16.7%、6~9着【1-3-1-14】勝率5.3%、複勝率26.3%など敗退組に注目。


過去10年函館記念前走巴賞組脚質別成績,ⒸSPAIA


また巴賞が比較的先行勢で決まりやすいからか、函館記念では一転して巴賞で中団だった馬が【1-2-1-16】勝率5.0%、複勝率20.0%、後方が【0-2-0-9】複勝率18.2%と差しに回った馬の成績がいい。今年の巴賞は先行勢同士では決着していない点が気になるが、巴賞で差しに回って不発だった馬のなかに穴馬がいる。サトノクロニクル、ランフォザローゼスや昨年2着アイスバブルがここに当てはまる。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


函館記念インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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