セレクトセール高額取引馬のその後は?取引価格1000万円から凱旋門賞2着に登り詰めた名馬も

高橋楓

セレクトセール2020年までの歴代高額馬ランキング,ⒸSPAIA

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歴代最高額馬はディナシーで「6億円」なり!

1000万単位で競りあがっていく光景はもはや異次元の世界だった。コロナ渦もなんのその。2021年のセレクトセールは史上最高額を大幅に更新する225億円の売り上げを数える大盛況であった。当セールは選りすぐりの期待馬や良血馬が集まる本国最大のサラブレッドセール。引退後の種牡馬運用までを見据えた熱い戦いが繰り広げられた。

そこでふと気になる事ができた。歴代の高額馬の成績はどうだったのだろうか。昨年までの取引馬にスポットをあて、セレクトセール高額馬のその後を調べてみた。また、他会場で行われた過去のセールにも注目し、安価ながら活躍した取引馬も調べていきたい。

セレクトセール2020年までの歴代高額馬ランキング,ⒸSPAIA

歴代最高額は2006年に記録された父キングカメハメハ、母トゥザヴィクトリーの「ディナシー」である。その取引価格6億円。しかも、牝馬だっただけにその衝撃たるや凄まじいものだった。のちにトゥザヴィクトリーからは重賞5勝のトゥザグローリーや弥生賞馬で皐月賞2着のトゥザワールドが誕生するのだが、その段階ではまだまだ未知数。

しかし、誰が見ても惚れ惚れする様なグッドルッキングホースで、父は日本ダービー馬、母はエリザベス女王杯馬でドバイワールドカップ2着。競馬がブラッドスポーツと言われる所以をまざまざと見せつけられた。

しかし、そんなディナシーは不慮の事故で競走馬としてはデビューできず繁殖入り。まだ目立った産駒は誕生していないが、今後血統表に名前を残すような大物の誕生を待ちたい。

歴代高額馬その後の成績,ⒸSPAIA


セールの価格の高騰が起こり始めたのはここ数年で、特に2017年は歴代2位の5億8000万円でアドマイヤビルゴ、歴代8位の3億7000万円でダブルアンコールが落札されている。歴代ベスト10の中でデビュー前の馬は実に4頭。残りの6頭の成績はというと、下に馬名・(取引額)・JRA獲得総賞金の順番で並べてみた。

1位 ディナシー(6億円)未出走引退
2位 アドマイヤビルゴ(5億8000万)7929万
4位 ザサンデーフサイチ(4億9000万)7197万
8位 ダブルアンコール(3億7000万)1367万
9位 ザレストノーウェア(3億6000万)51万
10位 ラストグルーヴ(3億6000万)600万

となっている。現役馬もいるため、まだまだこれから成績を伸ばしていく事も考えられるが、現状種牡馬としてザサンデーフサイチが頑張っているくらいで、非常に厳しい結果と言わざるを得ない。

セレクトセールで2億円以上で購入された活躍馬一覧,ⒸSPAIA


2億円以上の超高額取引をされた馬の中でも結果を出している馬ももちろんいる。代表格はサトノダイヤモンドだろう。2013年のセレクトセールにて2億3000万円で取引され、引退までに獲得した賞金は8億6513万円。その後、種牡馬として推定10億円ともいわれるシンジケートが組まれ社台スタリオンステーションにスタッドイン。現在は一口300万円の種付け料となっている。

牝馬ではアドマイヤグルーヴが筆頭だ。2億3000万円で落札され獲得総賞金は5億5134万円。父サンデーサイレンス、母エアグルーヴの超良血馬。エリザベス女王杯連覇だけでも十分な成功なのだが、繁殖入りしてからは皐月賞・ダービーの二冠馬で種牡馬としても期待されているドゥラメンテを誕生させた。

他には長距離GⅠを2勝しているワールドプレミア、重賞常連のフォゲッタブルがいる。調べてみて2億円を超える取引馬で、自身の価格を超える獲得賞金を稼ぎ出したのが4頭しかいなかった事に驚いた。

超高額取引馬のデビュー戦成績!1番人気ならば「買い」それ以外ならば「切り」

超高額馬のデビュー戦の成績,ⒸSPAIA


次に馬券に目を向けてみよう。過去にセールで2億円を超える金額で取引されたのは63頭。デビュー戦で1番人気に支持されたのは41頭だ。成績は[20-5-5-11]で勝率48.8%、複勝率73.2%となっている。6頭の馬が掲示板に乗る事が出来なかった。

次に2番人気以下になると[4-4-1-13]勝率17.4%、複勝率40.9%とガクッと数字が下がる。2億円を超える金額で取引された馬となると、デビュー前からメディアに取り上げられ人気になるケースが多いが、実際に調教の動きで判断する事が重要となる。

なお、勝ち馬は1番人気の他には2番人気で3頭、3番人気で1頭。4番人気以下で新馬勝ちを果たした馬は過去にはいない。

テイエムオペラオーは1000万円で購入され獲得総賞金18億3519万円!

1000万円以下のセリ取引での活躍馬ランキング,ⒸSPAIA


安い金額で取引されながら活躍した馬も数多くいる。セールによっては高い、安いの感覚も大きく変わるかと思うが本記事内では1000万円以下をボーダーとして考えてみたい。下記、順位・馬名・(セリ取引価格)・JRA獲得総賞金の順にランキング形式で紹介する。

1位 テイエムオペラオー(1000万円)18億3519万
2位 バランスオブゲーム(870万)6億1770万
3位 モーリス(1000万)5億3625万
4位 ヒシミラクル(650万)5億1499万
5位 プリサイスマシーン(800万)4億2691万
6位 ホットシークレット(700万)3億9339万
7位 マイネルラクリマ(800万)3億2955万
8位 ナカヤマナイト(1000万)3億785万
9位 キストゥヘヴン(970万)3億2899万
10位 ナカヤマフェスタ(1000万)2億9325万

全てがセレクトセールの取引というわけではないが、安いから走らないというわけでは決してない事が分かる。やはり特筆すべきは「覇王」テイエムオペラオーの存在だろう。1997年の北海道10月市場(オータムセール)でスタート値の1000万円の一声で、誰も競り合うことなく落札。この馬が後にGⅠを7勝し種牡馬入りするのだから分からないものである。

凱旋門賞2着のナカヤマフェスタはセレクトセールにて1000万円で落札。宝塚記念制覇、ダービー4着。そしてこの馬も種牡馬となりガンコやバビットを輩出した。次はどのセールからどんな原石が現れるのか期待せずにはいられない。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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