【安田記念】1番人気6連敗中、難解マイルGⅠの歴史 条件不問のヒーロー・アグネスデジタル

緒方きしん

安田記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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多彩なメンバーが集結した難解な安田記念

ダービーは武豊騎手・ドウデュースが制覇。53歳の武豊騎手はこれで史上最年長ダービージョッキー、前人未到のダービー6勝目と、記録づくしの歴史的勝利となった。ドウデュースの今後にも注目が集まる。

さて、今週は春のマイル王者決定戦・安田記念。過去にはオグリキャップ、タイキシャトル、ノースフライトやウオッカらが制してきた一戦だ。故・後藤浩輝騎手とアドマイヤコジーンをはじめ、印象的な勝利も多いレースでもある。

昨年の3着馬シュネルマイスター、現在4連勝中のイルーシヴパンサーやソウルラッシュと勢いに乗る4歳世代が集結。さらにはハイレベルなヴィクトリアマイルで上位に入ったファインルージュ、レシステンシア、ソングライン、高松宮記念からも1着ナランフレグ、2着ロータスランドらが参戦する豪華なメンバー構成となった。今回は、安田記念の歴史を振り返る。

1番人気は大苦戦中

安田記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で、1番人気馬は全敗。2015年にモーリスが制して以来、1番人気に応えた馬はいない。2019年、2020年は歴史的名牝アーモンドアイが敗れ、2020年勝ち馬グランアレグリアも2021年には1番人気に推されながら2着に敗れた。過去には、アパパネ(2011年6着)、グラスワンダー(1999年2着)、ニシノフラワー(1993年10着)といった馬たちも敗れてきた。

3番人気馬はやや好調で、2020年グランアレグリアは1着、2019年アエロリットは2着、2017年レッドファルクスは3着だった。それでも昨年のサリオスは8着に敗れているように、決め手になるほどのレベルではない。

馬券の買い方も悩ましい一戦で、昨年は8番人気、単勝オッズ47.6倍のダノンキングリーが勝利したため単勝は荒れたが、2着に圧倒的人気のグランアレグリアが入ったことで馬連は29.5倍とそれほど配当がつかなかった。

一方、単勝オッズ12.4倍のサトノアラジン、単勝オッズ14.6倍のロゴタイプで決着した2017年は馬連104.8倍の万馬券。こちらは単勝よりも馬連やワイドが荒れた年だった。短距離路線、中距離路線からの参戦もあって、荒れ方を読み解くのも難しく、そして面白い一戦と言えるだろう。

条件不問の名馬アグネスデジタル

そんな難解なマイル王決定戦を『前走・かきつばた記念』で制したのが、2003年アグネスデジタルだ。芝ダート、中央、地方、海外問わず勝ち続けた、不世出の名馬である。

アグネスデジタルは2000年クラシック世代。同期のダービー馬には同じ冠名を持つアグネスフライトがいる。年明け2月デビューと遅咲きのアグネスフライトに対し、アグネスデジタルは1999年9月のデビューで、年末には全日本3歳優駿(当時は交流GⅡ)を制していた。

年明けからヒヤシンスSを挟んで、芝重賞のクリスタルC、NZTで連続して3着に入ったものの、本番のNHKマイルCでは7着。再びダートに戻り、名古屋優駿で久々に重賞制覇したが、続く交流GⅠ・ジャパンダートダービーでは14着と惨敗する。なかなかGⅠで結果が出ないなか、9月にユニコーンSで勝利、10月に武蔵野Sで2着と、ダートでは世代上位の力を示していた。

アグネスデジタルの名がより一層轟いたのは、武蔵野Sの後に挑戦した2000年マイルCSだった。芝レースの最高着順が世代重賞の3着というアグネスデジタルは、13番人気の伏兵評価に収まる。しかしそれを跳ね除け、同世代の名マイラー・ダイタクリーヴァを差し切り勝利したのだった。

これで芝に専念かと思いきや、翌年の京都金杯3着、京王杯SC9着、安田記念11着と連敗し、またもやダートにシフト。日本テレビ盃(地方ダート)→南部杯(地方ダート)→天皇賞(秋)(中央芝)→香港C(海外芝)→フェブラリーS(中央ダート)と、条件問わず5連勝を成し遂げたのだった。

その後もドバイや香港、名古屋で走ったアグネスデジタルが挑戦したのが、上述した2003年の安田記念である。長期休養などもあり1年4ヶ月も勝利から離れていたアグネスデジタルだったが、テレグノシスやローエングリン、アドマイヤマックスといった2世代下の新鋭を撃破。見事、GⅠ勝利数を"6"に伸ばしたのだった。

振り返れば、ドバイ輸送のトラブルなどで精彩を欠く時期はあったものの、東京競馬場では天皇賞(秋)、フェブラリーSに続いて3連勝。条件不問のヒーローも、東京はさらに得意だったのかもしれない。

芝GⅠでどのような走りを見せるか、ダート王カフェファラオ

今年の安田記念も、シュネルマイスター、イルーシヴパンサー、ソングラインにファインルージュと強力な4歳世代が揃った。一方でアグネスデジタルが2003年安田記念を制した時と同じ馬齢である6歳馬からも、伏兵評価ながら、高松宮記念勝ち馬ナランフレグやドバイターフ3着のヴァンドギャルド、トゥザグローリー産駒カラテなど、見逃せないメンバーが出走を予定している。

2002年〜2005年にかけて6歳馬が4連勝。その後もダイワメジャーやショウワモダン、ロゴタイプやサトノアラジンといった6歳馬が春のマイル王に輝いている。今年挑戦する6歳馬たちも、彼らに続けるだろうか。また、2011年リアルインパクト以来となる3歳馬での勝利を目指すセリフォスの存在も興味深い。

そしてダート・フェブラリーSを連覇したカフェファラオも参戦。こちらは昨年の函館記念9着以来となる芝レース挑戦となるが、洋芝の函館から現在4戦全勝の東京競馬場に変われば……と、伝説の再来を期待したくなる。ダート王者の果敢なる挑戦にも、ぜひご注目いただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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