東大HCが東京芝1600mを徹底検証
東大ホースメンクラブ
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コース紹介
東京芝1600mが舞台の重賞は8レースを数える。グレード順に、GⅠはNHKマイルC、古馬のマイル女王決定戦ヴィクトリアマイル、春の府中GⅠのラストを飾る安田記念の3レース。GⅡはマイルCSの前哨戦である富士S、GⅢは初春の伝統重賞・東京新聞杯、牝馬クラシック路線において重要なクイーンC、2歳GⅢにおいては屈指の出世レース・サウジアラビアロイヤルC、同じく2歳戦で牝馬限定のアルテミスSが行われる。このコースの特徴をデータで分析していく(使用するデータは2017年5月6日〜2022年5月1日)。
まずはコース紹介。大箱を生かした綺麗なU字型のコースで、2コーナーをスタートしてしばらくゆるやかに下り、向正面半ばで坂を上る。3〜4コーナーの下りを出て500m超の直線に差しかかり、直線半ばから傾斜のなだらかな高低差2mの坂が待ち受ける。最後の平坦な300mを走り切ってゴールを迎える。
わずかな踏み遅れが致命傷となる1枠
<東京芝1600m・過去5年の枠別成績>
1枠【35-34-42-404】勝率6.8%/連対率13.4%/複勝率21.6%
2枠【36-35-36-439】勝率6.6%/連対率13.0%/複勝率19.6%
3枠【46-38-32-451】勝率8.1%/連対率14.8%/複勝率20.5%
4枠【32-39-35-479】勝率5.5%/連対率12.1%/複勝率18.1%
5枠【43-47-43-482】勝率7.0%/連対率14.6%/複勝率21.6%
6枠【46-58-32-507】勝率7.2%/連対率16.2%/複勝率21.2%
7枠【59-41-63-584】勝率7.9%/連対率13.4%/複勝率21.8%
8枠【56-59-71-598】勝率7.1%/連対率14.7%/複勝率23.7%
枠別成績はほぼ横一線で、勝率トップは3枠、連対率トップが6枠、複勝率トップは8枠となっている。平場のレースではほとんどフラットに考えていいが、GⅠになると評価を下げたいのが1枠で、過去5年では【0-1-2-25】(馬券内は2018年安田記念スワーヴリチャード3着、2019年安田記念アエロリット2着、21年ヴィクトリアマイルマジックキャッスル3着)。スタートでのわずかな踏み遅れでレース運びが難しくなり、ごちゃつくリスクも高い内枠は高速マイル戦にとって決してプラスではないようだ。NHKマイルC史上でも1枠から勝った馬は2002年のテレグノシスしかいない。
なおNHKマイルCで買っておきたいのは外枠。特に7・8枠の馬がまとめて凡走するケースは少なく、例えば雨が大波乱を呼んだ2007年のレースでは、17番人気1着ピンクカメオと18番人気3着ムラマサノヨートーはそれぞれ7枠14番、8枠18番だった。ただでさえ難解なレースだけに、外枠の大穴からホームランを狙うのも一興だろう。また安田記念はCコースでの施行となるが該当例でも7・8枠が熱く、過去5年の安田記念では【3-1-2-16】と好走馬を多く輩出している。
<東京芝1600m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【39-41-48-224】勝率11.1%/連対率22.7%/複勝率36.4%
先行【154-127-113-873】勝率12.2%/連対率22.2%/複勝率31.1%
差し【120-134-135-1527】勝率6.3%/連対率13.3%/複勝率20.3%
追込【40-48-57-1316】勝率2.7%/連対率6.0%/複勝率9.9%
脚質別成績ではセオリー通り逃げ・先行が有利。ただ逃げよりも先行勢の勝率が高い点には注意が必要で、差しの複勝率も2割超えと悪くない。クセのないワンターンのマイルとあって力量に劣る馬が逃げ切ることは少なく、馬場の偏りがなければ力がストレートに反映されやすいコースといっていい。
NHKマイルCに目を移すと、特徴がないのが特徴と言いたいほど脚質による好走例の偏りがない。2003年以降の同レースでは逃げ:3勝、先行:5勝、差し:7勝、追込:4勝。複勝率ベースで見ても若干前有利という程度だ。ちなみにヴィクトリアマイルは全16回中11勝が差し馬という典型的なキレ勝負の一戦で、違いを頭に入れておきたい。
ダミアン・レーンに食指が動く
<東京芝1600m・過去5年の種牡馬別成績>
ロードカナロア【21-23-20-158】勝率9.5%/連対率19.8%/複勝率28.8%
ダイワメジャー【13-9-6-115】勝率9.1%/連対率15.4%/複勝率19.6%
リオンディーズ【1-2-2-32】勝率2.7%/連対率8.1%/複勝率13.5%
種牡馬ではロードカナロアが好成績。前走同騎手組が【9-8-8-47】複勝率34.7%、単勝回収率146%・複勝回収率106%と上々の数字をマークしている。
名マイラーを多く輩出してきたダイワメジャーは意外にも走っておらず、3勝クラス以上だと【1-1-3-44】複勝率10.2%。このうち中4週以上に限ると【0-0-2-31】と連対がない。
さらに厳しいのはリオンディーズ産駒で、単勝回収率9%・複勝回収率36%の低水準が物語るように相性はよくない。
<東京芝1600m・過去5年の騎手別成績>
レーン【12-6-4-17】勝率30.8%/連対率46.2%/複勝率56.4%
川田将雅【12-9-10-33】勝率18.8%/連対率32.8%/複勝率48.4%
横山武史【10-8-7-62】勝率11.5%/連対率20.7%/複勝率28.7%
騎手別成績では短期免許で来日中のレーン騎手が素晴らしい成績。単複回収率ともに116%と妙味の面でも文句のつけようがない。関東の3歳馬に騎乗する際は【8-3-1-5】で複勝率7割超えだ。
レーン騎手と同数の勝利かつ単勝回収率146%を記録している川田将雅騎手もさすがの数字。重賞では【4-1-1-13】、ダノンキングリーにGⅠタイトルを届けた昨年の安田記念が記憶に新しいところ。
春GⅠでは苦戦が続いている横山武史騎手は単複回収率100%超えを達成している数少ない騎手の一人。すっかりおなじみとなったキャロットファームの勝負服で一発があってもおかしくない。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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