【天皇賞(春)】和田竜二騎手に21年ぶり盾奪取のチャンス 東大HCはディープボンド戴冠に期待

東大ホースメンクラブ

天皇賞(春)インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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古馬最高峰の栄誉

今週は阪神芝3200mを舞台に、GⅠ・天皇賞(春)が行われる。阪神大賞典を連覇し、昨年2着の悔しさを晴らしたいディープボンド、昨年の菊花賞馬タイトルホルダー、ダイヤモンドSを4連勝で制した新鋭テーオーロイヤルなど、長距離王を決める舞台にふさわしいメンバーが出揃った。

京都競馬場改修工事に伴う番組変更の関係で、2年連続で阪神競馬場が舞台となる一戦。、阪神芝3200mは外回りから内回りというトリッキーなコース形態で、サンプル数が極端に少ない。それ故に今回は様々なデータを参考に的中へのヒントを探っていく。


阪神芝3000mを紐解く

サンプルが少ない阪神芝3200mを考えるとき、ひとつの参考データとして扱えるのが阪神芝3000mである。スタート地点と1周目の外回り使用という違いはあるものの、ポジション争いへの影響は小さく、勝負どころとなる2周目の内回りコース使用は同じ。1ハロン距離が延びてよりタフさが問われる今年の天皇賞(春)を、阪神芝3000mのデータから紐解いていく。

以上の前提を踏まえ、まず1986年以降の阪神芝3000mにおける脚質別成績を確認する。

1986年以降阪神芝3000m脚質別成績,ⒸSPAIA


<1986年以降の阪神芝3000m・脚質別成績>
逃げ【4-3-4-27】勝率10.5%/連対率18.4%/複勝率28.9%
先行【22-22-17-69】勝率16.9%/連対率33.8%/複勝率46.9%
差し【4-9-8-78】勝率4.0%/連対率13.1%/複勝率21.2%
追込【0-2-7-103】勝率0.0%/連対率1.8%/複勝率8.0%
マクリ【9-1-2-5】勝率52.9%/連対率58.8%/複勝率70.6%

日本競馬屈指のタフな設定で、直線を向いての後方一気はほぼ不可能。先行勢の5割に迫る複勝率と、マクって位置を確保した馬の好成績は「4角前目」が戴冠への絶対条件であることを裏付ける。全39頭の勝ち馬のうち、37頭が4角5番手以内、例外2頭もそれぞれ同6番手、8番手での勝利だった。

阪神芝3200mを舞台に行われた近2年の3レースも、馬券圏内の9頭中8頭が4角5番手以内。例外だった2021年松籟S3着のシルヴァーソニックも4角7番手と傾向はほぼ同様だ。

また先行した馬のうち上がり3位以内だった馬の成績は【20-14-6-1】複勝率97.6%。1998年阪神大賞典以降、該当馬は20年以上馬券圏内を外していない。

ディープボンドは本格化した昨年の阪神大賞典以降、国内4レース全てで「先行×上がり3位以内」をクリア。内訳も阪神大賞典2回、昨年の天皇賞(春)、有馬記念とレースレベルも文句のつけようがない。「2強」のうちまず同馬が軸としての信頼度を得る。


タイトルホルダーの取捨は?

1986年以降阪神芝3000m逃げ馬中盤5F別成績,ⒸSPAIA


<1986年以降の阪神芝3000m・逃げ馬・中5F別成績>
63秒8以下【0-0-3-11】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率21.4%
63秒9~65秒4【4-3-1-10】勝率22.2%/連対率38.9%/複勝率44.4%
65秒5以上【0-0-0-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%

ではディープボンドと「2強」形成するタイトルホルダーはどうだろうか。ここでは同馬の逃げのスタイルと「中盤5ハロン」という切り口で考えていく。

今回も阪神芝3000mのサンプルを使い、中盤5ハロンタイム別に成績を確認すると、全ての連対例が63秒9~65秒4に集中していることが分かる。これより速ければスタミナ切れを起こし、遅ければ手応えに余裕のある先行勢にキレ負けする傾向にある。逃げ馬には絶妙なペース配分が求められる。

タイトルホルダーが勝った2021年菊花賞は横山武史騎手がスタートから押していき、前半5Fは60.0秒とやや速いペースだったものの、ここから中盤5F65秒4と息を入れ、後半5F59秒2でまとめ後続を封じた。非の打ち所がない完璧なレースだったが、2枠3番という好枠と前走セントライト記念での大敗がマークを薄くした面は否めない。

前走の日経賞も500m~1500mの5Fは64秒9に落としながらも、2着ボッケリーニにクビ差まで迫られる辛勝。タメ逃げで危ういシーンがあったことを横山和生騎手がどう考えるか。また後続勢も菊の再現は許さぬとばかりに早めに仕掛けてくることは間違いない。

残り1200m地点付近から緩やかな下りが続く阪神内回りコースではその手前からスパートをかけるケースが多々見られ、実際に昨年の天皇賞(春)はラスト8Fから「13.1-12.6-12.1」と加速。このペースアップで中盤5F61秒5を刻んでしまったディアスティマは勝ち馬から1秒近く離された6着に敗れた。今回も同様の流れは十分想定でき、タイトルホルダーに付け入る隙がないとはいえない。


和田竜二騎手に盾を

◎ディープボンド
以上の条件を踏まえると本命は同馬しかいない。昨年の天皇賞(春)はワールドプレミアに3/4馬身届かずの銀メダルだったが、昨年の勝ち馬を含めしのぎを削ってきたステイヤーたちの大半が引退し、今年は大チャンスといえるメンバー構成となった。

8枠18番はポジション取りに脚を使うが、抜群のスタートセンスと無尽蔵のスタミナを誇る同馬には試練にならない。辛酸をなめ続けたクラシックシーズンやフランス遠征、長らく手綱をとってきた和田竜二騎手との絆、よりスタミナが問われる週中の雨など、全てがこの馬の背を押すだろう。あのテイエムオペラオーでつかんだ2001年以来となる同騎手21年ぶりの盾獲りを、悲願のGⅠ初制覇で飾ってほしい。

〇アイアンバローズ
2番手は近走めきめきと力をつけてきた新星。2走前のステイヤーズS、前走の阪神大賞典と続けて3000m以上のレースを使い、ともに2着に健闘。特に前走はスタート直後の1ハロンを除いて13秒台が一度もない厳しいラップで先行し、ディープボンドに0秒1差と濃い内容のレースぶりだった。

枠番1枠1番もこの馬には追い風。1986年以降の阪神芝3000mにおける1、2枠の先行勢は【7-5-4-9】複勝率64%で、6番人気以内に限ると【7-5-4-4】で複勝率8割、該当馬は2005年阪神大賞典2着アイポッパー以降10戦連続で馬券に絡んでいる。昨年のアルゼンチン共和国杯以降、先行にシフトしてきた同馬がディープボンド逆転の最右翼だ。

▲タガノディアマンテ
3番手は伏兵から。3年前の菊花賞は8枠17番という受難の枠を引き、一度も13秒台がない厳しいラップを3角からマクりながら、勝ち馬ワールドプレミアから0.6差の7着に踏ん張った。ステイヤーの資質は万葉S圧勝とステイヤーズS2着で証明し、今回のメンバーなら何ら見劣ることはない。

左回りでは右にモタれる悪癖があり、大敗した2年前のダイヤモンドSを最後に徹底して右回りを使ってきた。不良馬場だった昨年のAJCC以外は崩れておらず、6歳シーズンを迎えて久しぶりに挑むGⅠで激走があってもおかしくない。

以下、日経賞大敗でステイヤーズS勝ちがカモフラージュされている感のあるディバインフォース、長距離で堅実なシルヴァーソニックまで印を回す。買い目はディープボンドから印への馬単。タイトルホルダーは前述の理由、テーオーロイヤルは上がり勝負になりやすいダイヤモンドSとの性格の違いを見て消しとした。

▽天皇賞(春)予想▽
◎ディープボンド
〇アイアンバローズ
▲タガノディアマンテ
△ディバインフォース
×シルヴァーソニック

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開、新入部員は随時募集中。



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