【桜花賞】前哨戦を叩いて前進、ビップデイジーが本命候補 対抗には“伏兵”ナムラクララを抜てき
山崎エリカ

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桜花賞は展開の振れ幅が大きい
桜花賞は、舞台となる芝1600mコースのストレートが長いため、展開の振れ幅が大きいレースだ。2015年に、抑えながら先頭に立ったレッツゴードンキがそのまま逃げ切ってしまうほど極端なスローペースが発生したこともあれば、重馬場のなか、スマイルカナとレシステンシアが競り合った2020年のように、かなりのハイペースが発生することもある。
ただし、直近4年は平均ペースで決着している。今年の展開は主役の一頭、エンブロイダリーがスタートを決めて先行するか、出遅れて後方からになるかによるところもあるが、出遅れてそこまでペースが上がらず、前が残るパターンも視野に入れたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位タイ エンブロイダリー】
デビュー2戦目の未勝利戦では出遅れを挽回して逃げ、7馬身差のレコードで圧勝した素質馬。次走のサフラン賞は疲れが出たようで5着に敗れたが、その後、1勝クラスとクイーンCを連勝と成長力を見せた。
前走のクイーンCは7番枠からまずまずのスタートを切り、促して2番手の外を追走。道中は緩みなく流れたが、2番手の外を維持して3角に入った。3~4角でもコントロールしながら2番手で進めて3/4差ほどで直線へ。
直線序盤は追い出しを待って、ラスト2F手前で肩鞭を入れると、すっと逃げ馬をかわして1馬身ほど前に出る。ラスト1Fで食らいつくマピュースを突き放して2馬身半差で完勝した。
当時は高速馬場で前後半4F45秒7-46秒5のほとんど緩みない流れ。前へ行った馬には不利な展開であり、2番手から押し切った内容にはかなりインパクトがあった。本馬は前走で騎乗したC.ルメール騎手が「キレ味はあまりないが、長くいいペースを維持できる馬。加速してからのスピードもゴールまでキープできる」とコメントしているように、前走はスタートを決めて先行したことが勝因だろう。
今回も前走のようにスタートを決めて先行できれば勝ち負けまであると見ている。しかし、スローペースだったサフラン賞では出遅れて、末脚を生かす競馬となって5着に敗れており、出遅れた場合が不安。重い印は打つが本命にはしにくい。
【能力値1位タイ アルマヴェローチェ】
かなりタフな馬場で行われたデビュー2戦目の札幌2歳Sでは、1番枠を利して中団の最内を立ち回り、最後はマジックサンズとの一騎打ちの結果、ハナ差で2着だった。昨年の札幌2歳Sは例年と比べると指数の低い決着で、その時点でも世代トップの指数ではなかったが、その後の休養中に成長し、12月の阪神JF(京都芝1600m)を優勝した。
阪神JFでは12番枠から五分のスタートを切り、軽く促して内に切れ込み、好位の中目を追走。道中で包まれてやや位置を下げ、中団で3角に。中団外目で我慢し、4角で外に出し切ると仕掛けて押し上げたが、内の馬にやや張られてまだ中団付近。直線序盤で追い出されると、反応良く内のビップデイジーとともに伸びて2列目に上がる。ラスト1Fでビップデイジーを捉えて差を広げ、1馬身1/4差で完勝した。
当時は時計のかかる馬場で前後半4F46秒5-46秒9のややハイペースと、展開に恵まれたもの。馬場の内側がやや荒れており、外から差す馬がやや有利な状況のなか、上手く外に誘導しての勝利だった。
また、本馬はテンがそれほど速くないタイプだったことから、マイル戦への対応にやや疑問を感じていたが、ひとつ内(11番枠)のクリノメイが外枠発走になったこともあり、序盤の段階で良い位置が取れたことが好走要因。本質的にマイル戦はやや距離が短いと見ている。
今回は阪神JFからの直行。昨年桜花賞時のアスコリピチェーノのように休養中に成長していればチャンスがあるが、現状ではあまり強調材料がない。また桜花賞当日は雨予報だが、馬場が悪化すれば、スタミナの観点からレース間隔が詰まっている馬のほうが有利になる。休養明けでスタミナが不足した状態の本馬には不安がある。
【能力値3位 ビップデイジー】
デビューから2連勝し、続く阪神JFで2着した実績馬。阪神JFでは1番枠からやや出遅れ、押されながら内目のスペースを拾っていったが、最終的には中団列が壁となり、中団のやや後方で我慢。道中では中目に誘導され、3角では上手く中団の内スペースに潜ると押し上げて3列目付近で直線へ入る。
直線序盤では前が壁で外へ誘導にやや苦労したが、それでも外のアルマヴェローチェとともに伸びて2列目へ。ラスト1Fでアルマヴェローチェには突き抜けられたが、本馬も踏ん張って1馬身1/4差の2着と健闘した。
当時は時計のかかる馬場で前後半4F46秒5-46秒9のハイペース。馬場の内側が荒れており、外から差す馬がやや有利だった。1番枠ながら最後の直線では外目に誘導されていたが、外枠ならばもっとスムーズだったはず。ラスト1Fで加速する展開でアルマヴェローチェにキレ負けしてしまったが、同馬に対してリードを奪えていればもっとやれたと見る。
前走のチューリップ賞では阪神JFから指数がダウンしての3着。ここでは9番枠からまずまずのスタートを切って先行策。序盤からペースが遅かったがコントロールして団子状態の2番手から進めた。道中は行きたがるのをなだめられ折り合い重視、3~4角でも仕掛けを待つ。
4角で軽く促されると、逃げ馬と1馬身半差ほどの2番手で直線へ。序盤で内からクリノメイに前に出られてアタマ差。ラスト1Fでも踏ん張っていたが、内からウォーターガーベラにも差されて上位2頭からは半馬身差だった。
チューリップ賞当日は阪神開幕週で極端に最内有利。結果、好位の最内を追走していたクリノメイに敗れただけでなく、中団最内で脚を温存していたウォーターガーベラにも差されてしまった。2番手の外ではなく、クリノメイの位置を取っていればもっと際どいレースになっていたと見るが、ここは本番に向けて積極策を選択したのだろう。
前走で積極的な競馬をしたことで、今回はレースの流れに乗りやすくなる。もともと幅広い展開に対応できている馬であり、阪神JFでキレ負けしたアルマヴェローチェよりも前の位置から展開に応じた走りができれば面白い。今回の本命候補だ。
【能力値4位タイ ナムラクララ】
2走前に紅梅Sを勝利した馬。ここでは8番枠からまずまずのスタートを切り、無理をさせずに中団外目で様子を見ながら進め、道中も我慢して3角に入る。3~4角で好位列の中目のスペースを拾い、4角出口で外に誘導して3列目で直線へ。序盤で追われて先頭列付近まで上がると、ラスト1Fで抜け出して1馬身3/4差で完勝した。
当時は時計のかかる馬場で前後半3F34秒1-35秒2とかなりのハイペース。展開には恵まれているが、Bコース替わり初週でやや内有利の馬場だったことを考えると、外からよく伸びている。また、3着馬には3馬身半と決定的な差をつける強い勝ちっぷりだった。
前走のチューリップ賞は4番枠から好スタートを切ってハナを主張する形。最終的にはコントロールされ好位の中目に控えたが、やや窮屈な競馬を強いられる形で3角に入る。3~4角でも好位の中目で進め、4角出口で仕掛けて外目に誘導して直線へ。序盤で追われたが、前に食らいつくのが精一杯で、ラスト1Fでもじわじわ伸びていたが5着までだった。
チューリップ賞は前後半4F48秒0-46秒0とかなりのスローペース。前が有利な展開だったが、行きたがるのを控えて脚を溜めたことが裏目に出た。また、短距離ばかりを使われていたことで、序盤から掛かって、脚が溜まらなかった面もある。
くわえて、3~4角で最内を追走した馬が1着、2着、4着しているように、阪神の開幕週で極端に最内が有利だった。出たなりで逃げて最内を通していれば勝ち負けまで持ち込めていた可能性もあったが、桜花賞が本番と考えるならば折り合いを学習させたことは悪くない。芝1600mで2戦目となるここは前進に期待し、対抗に推す。
【能力値4位タイ ヴーレヴー】
デビューから長らく芝1200~1400mを使われていたが、芝1600mのエルフィンSで一変して勝利した馬。エルフィンSでは8番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚ですっと先頭に立ったが、コントロールされ内のラージギャラリーを行かせ、2番手の外を追走。道中もペースが遅く、やや掛かっていたが、我慢させながらやや位置を下げて1馬身ほど後ろの2番手外で3角に入った。
3~4角でも持ったまま追走し、4角で軽く促して半馬身差ほどの差で直線へ。序盤で追い出されるとじわっと伸び、先頭に立ってクビ差ほど前に出る。ラスト1Fでそのまましぶとく伸び、外から食らいつくグローリーリンクを振り切って3/4差で勝利した。
前走は雨と雪の影響による代替開催でタフな馬場ではあったが、前後半3F35秒3-34秒8のスローペース。前有利の展開に恵まれる形での勝利だった。しかし、りんどう賞やファンタジーSではテンに置かれていた本馬が、ポンとスタートを切って先頭に立った前進気勢に充実度を感じさせた。
また、本番を前に芝1600mで結果を出せたのは大きく、今回の1番枠なら好位の最内をロスなく立ち回れる優位性もある。休養明けの前走で大幅に指数を上昇させた後になるので疲れが出てしまう可能性もあるが、あっさりと通用しても不思議ない。
【能力値4位タイ エリカエクスプレス】
休養を挟んで新馬戦とフェアリーSを連勝した馬。前走のフェアリーSでは12番枠から躓き気味のスタートだったが、すぐに立て直してじわっと先行策。2角で外の各馬が内に切れ込んで来たので、コントロールされ2列目の最内に収まった。道中のペースは速かったがやや掛かっており、コントロール重視で進む。
逃げ馬の後ろから4角出口で外に誘導され、先頭のティラトーレに並びかけて直線へ。序盤で持ったまま半馬身ほど前に出ると、ラスト1Fで追われてしぶとく抜け出し、3馬身差で圧勝した。当時は高速馬場で、前後半4F45秒5-47秒3とかなりのハイペース。前へ行った馬には不利な展開のなか、先行策から押し切った内容は高評価できる。
新馬戦、前走とも最後の直線では外にモタれていたが、前走ではだいぶマシになっていた。競走馬には苦しくなってモタれるパターンと元々の癖でモタれる2種類あり、大抵は前者。しかし、本馬は直近2走ともモタれていることから癖である可能性が高い。
ただモタれ癖のある馬は「4角の下り坂で勢いに乗せ切れない」など、レースに制約を受けることが多く、減点材料だ。本馬はキャリア2戦と浅く、休養中に気性面を含めて成長するパターンも考えられるが、1番人気には相応しくない馬だと見ている。
大穴候補は逃げ馬のミストレス
ミストレスは新潟芝1600mの新馬戦を逃げて6馬身差で楽勝すると、次走のアルテミスSでは2着だった馬。アルテミスSでは1番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚の速さで楽々とハナを取り切る。前半でしっかりリードを奪うと一気にペースを落として団子状態で3角へ。
3~4角でも顕著にペースを落とし、直線序盤で追われると1馬身ほどリード。勝ち馬ブラウンラチェットにはラスト1Fでかわされたが、2着争いはアタマ差で制した。
このレースは前後半4F47秒7-46秒1とかなりのスローペース。直線勝負に持ち込んだが、伸び負けしてしまう形だった。おそらくここで決め手不足を露呈したことが、後々、ダート路線に矛先を向けるきっかけとなったのだろう。
3走前の阪神JFはややハイペースで逃げて8着に失速したが、1着とは0秒9差と大きくは負けていない。その後のダートで地力をつけて、前走サウジダービーでは4着に善戦。実績のある芝替わりで一発あっても不思議ない。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)エンブロイダリーの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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