【弥生賞】同舞台でも皐月賞とは異なる傾向 血統から「シーザリオ牝系」ヴィンセンシオを最高評価

坂上明大

2025年弥生賞ディープインパクト記念の有力血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

皐月賞と同じ中山芝2000mで行われる重要ステップの弥生賞。ただ、弥生賞勝ち馬の皐月賞制覇は2010年のヴィクトワールピサ以降出ておらず、同コースとはいえ、求められる適性は微妙に異なります。本記事では血統面を中心に、弥生賞のレース傾向を整理していきます。

前述の通り、弥生賞と皐月賞は同じ中山芝2000mで施行されますが、求められる適性は同じではありません。これは、皐月賞がGⅠらしい多頭数のハイペースになりやすいのに対して、弥生賞は前哨戦らしい少頭数のスローペースになりやすいためです。

「機動力が求められる弥生賞」と「底力が求められる皐月賞」と覚えておくといいでしょう。

<良馬場時(過去10年)の前後半1000mラップ>
弥生賞:61.3-59.6(後傾1.7秒)
皐月賞:58.9-59.2(前傾0.3秒)

次に血統面について。中山内回りの芝中距離重賞ではNureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingが中心になることが多く、弥生賞でも皐月賞でも共通する傾向です。

ただ、スローペースになりやすい弥生賞では同血脈よりも俊敏な血統がより走りやすく、その代表例がディープインパクトなどに流れるLyphardの血です。フランスのトップマイラーとして活躍したLyphardは欧州馬の中でもスピードに優れ、日本の小回り、かつ瞬発力勝負になりやすい競馬とも非常に相性のいい血脈といえるでしょう。

特に、近年は同血脈をクロスする馬の好走が目立ちます。DanzigやBlushing Groom、さらにはNureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingなど、主要な血統構成が似ている血と組み合わせるパターンからも多くの好走馬が出ています。

Lyphard内包馬(過去10年),ⒸSPAIA

<Lyphard内包馬(過去10年)>
該当馬【9-7-6-42】
勝率14.1%/連対率25.0%/複勝率34.4%/単回収率158%/複回収率105%

有力馬の血統解説

・ナグルファル
母ランドオーバーシーは2016年ケンタッキーオークス2着馬で、A.P.Indyを中心に北米血統の中では柔軟な血脈を豊富に併せ持つ配合形です。

キタサンブラック産駒の兄には2024年東京ダービーの2着馬サトノエピックがおり、エピファネイア産駒の本馬も長距離戦で持ち味が生きるタイプ。スローペースかつ頭数も少ない弥生賞ならクリアしてしまっても驚けませんが、ハイペースかつ多頭数の皐月賞では能力を発揮しづらいタイプです。

・ミュージアムマイル
4代母ハッピートレイルズに遡る名牝系に属し、母ミュージアムヒルは芝1600mで3勝を挙げています。キングカメハメハ父系×ハッピートレイルズ牝系には、コディーノ=チェッキーノを筆頭に多くの活躍馬が出ており、幅広い舞台で活躍できる優等生タイプが多い点も同配合の特徴です。

本馬は特にFair Trial増幅型の配合形もあって、小回りの中距離戦がベスト条件。中山芝2000mへの条件替わりは間違いなくプラス材料でしょう。

・ヴィンセンシオ
母母シーザリオは日米オークスを制した名牝。母シーリアのきょうだいにはエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアなどがおり、母自身は芝1800mで2勝を挙げています。

リアルスティール産駒の本馬はMonevassia=Kingmamboの3×3が特徴的で、日欧米のバランスの取れた配合形でもあり、幅広い舞台で高いパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。シーザリオ牝系らしい気難しさはありそうですが、血統面からは最上位の評価を与えたい好配合馬です。

25年弥生賞 有力馬の血統評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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