【カペラS回顧】父アポロキングダムに初の平地重賞勝利をプレゼント 3歳牝馬ガビーズシスターが得意舞台で輝く
勝木淳
ⒸSPAIA
アポロキングダム産駒の平地重賞初V
昨年はテイエムトッキュウが前後半600m33.5-35.8で逃げ切り、中山ダート1200mの重賞としてはスローに近いと評した。
今年もテイエムトッキュウが連覇を目指し出走。昨年2着に下したチェイスザドリームが今度こそはハナを譲らないと競りかけ、前半600mは雁行状態の32.5で昨年より1秒も速く、今年はハイペースとなった。
後半600m37.6と時計を要し、差し馬台頭の競馬に変貌。顔ぶれは同じでも、流れは真逆。13、14着と共倒れになったが、チェイスザドリームは昨年を踏まえれば、簡単には譲れないという、意地をみせた。
この流れを制したのは3歳牝馬のガビーズシスター。17回目で3歳牝馬が優勝するのは初。スピードだけではなく、耐久力もないと厳しい重賞だけに、ガビーズシスターは今後に向けて大きな1勝となった。
父アポロキングダムはレモンポップと同じレモンドロップキッド産駒で、同産駒JRA初勝利をあげた。JRA2勝止まりも父の血統背景から種牡馬に。キングマンボ系キングカメハメハの成功もあと押しした。
日高軽種馬農協門別種馬場からレックススタッドへ移動。初年度から勝ち馬を出し、アポロマーベリックが障害GⅠ・2勝をあげた。平地重賞は今回が初勝利。最多勝は中山ダート1200mの19勝でこのコース4勝ガビーズシスターの重賞制覇は納得だ。
アポロキングダムは芝13勝、ダート64勝のダート種牡馬。芝はサンデーサイレンス系ディープインパクトとキングカメハメハ系統が強い。ダートも似たような状況にあるが、それでもレガーロ産駒アウトレンジなど、マイナー種牡馬にもチャンスがあるから面白い。
アポロキングダムは2022年を最後に種牡馬引退。ガビーズシスターの2021年世代のJRA在籍はガビーズシスターとシグムンドだけ。2頭ですでに7勝もあげており優秀だ。
シグムンドの2勝はダート1800、2100m。距離適性の幅広さはいかにもキングマンボ系らしい。レモンポップの活躍も相まって、アポロキングダムの血統的価値も上昇するだろう。
ガビーズシスターのその名にピンとくるオールドファンがいるだろうか。母の母はエンゼルカロ。そう、その母の母テスコエンゼルはテスコガビーの5歳下の全妹になる。
ガビーズシスターはテスコガビーと同じ一族に属し、母父スペシャルウィークでマルゼンスキーの血が同居している。70年代に快足で鳴らした牡牝にたどり着く血統は熱い。
ガビーズシスターは中山ダート1200mを得意としており、ハイペースへの対応力が高い。血統表を眺めればそれも納得。3歳と若く、連覇だけではなく世界へ出るなどロマンが広がる。なによりこの血を後世に残してほしい。
適性の差と斤量が大きく影響
レースは中山ダート1200mらしく前後半32.5-37.6の超前傾ラップになり、最後は差し馬が一気に台頭した。2着クロジシジョーは父フリオーソで当地OP勝ちがあり、12~3月【2-3-3-3】の冬馬。冬場特有のダートやハイペースを得意としている。
こちらもガビーズシスターと同じ母父スペシャルウィーク。同馬はサンデーサイレンス産駒だが、母系は小岩井農場で生まれたシラオキの一族であり、特有の我慢強さを伝える。
3着ジレトールは春に同コースの京葉S3着。今回は馬群を縫うように猛然と追い込んできた。こちらは母サンビスタ。2015年チャンピオンズCを12番人気で勝った。この母系をたどるとトウショウボーイの名がある。日本に代々受け継がれる血統が上位3頭に来たのは偶然ではないだろう。スピード勝負は厳しいが、耐久力勝負なら強い。そんな特徴が如実に出たレースでもあった。
2番人気チカッパは6着も3歳で58kgなら敗戦も納得。3歳が古馬とのレースで58kgを背負ったのは1986年以降で5頭。ヤエノムテキ、ダイタクヘリオス、エイシンキャメロン、テスタマッタ、ノンコノユメ。勝利は2015年武蔵野Sノンコノユメと1988年鳴尾記念ヤエノムテキだけ。
ダートはノンコノユメと同じく武蔵野Sテスタマッタ(11着)。短距離は90年シリウスSダイタクヘリオス4着のみ。スピード勝負で58kgはしんどい。チカッパも最後に脚を使っており、斤量が前半の追走に影響した。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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