【フェアリーS】速い流れも〇、末脚に期待大のスティールブルー 穴はイフェイオン

山崎エリカ

2024年フェアリーステークスのPP指数,ⒸSPAIA

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クラシック戦線へ向け脚質を決めていく時期

2歳馬のレースはスローペースが定番だが、年が明けてからはペースが上がることが大半。3歳になると体力もついてくるので、2歳時は脚をタメて逃げていた馬をもっと行かせたり、それまで逃げたことがなかった馬が壁に当たって突然、逃げてクラシック路線への活路を見出したりするのがこの時期だ。年明けから春にかけてのこの時期は、クラシック戦線へ向けて脚質を決めていく時期と言っていい。

このため、このレースは2015年のノットフォーマルのように11番人気で逃げ切りが決まることがあれば、昨年のキタウイングのように、11番人気で追い込みが決まることもある。ノットフォーマルは前走時が追い込み、キタウイングは前走時が先行と、ともに脚質チェンジしていた。脚質転換での一発には注意したい。


能力値1~5位の紹介

2024年フェアリーSのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 マスクオールウィン】
ボンドガールが勝利した6月東京の芝1600mの新馬戦では2番手からレースを進めたが、ラスト1Fで逃げたチェルヴィニアに離され、ボンドガール、コラソンビートに差されて4着に敗れた。次走で芝1200m戦を使われると、3着以下に3馬身半以上の差をつけてなかなかの好指数で勝利し、前々走のOP・カンナSではクビ差の2着。前走では1勝クラスの黒松賞を完勝した。

前走は9番枠から好スタートを決めて、行きっぷりも良かったが、内からハナを主張したザブルースを行かせてその2番手を追走した。外から同馬をぴったりとマークし、4角で並びかけて直線へ。序盤で追い出され早々と先頭に立った。ラスト1Fで内からアララララが迫って来たが、振り切って3/4差で勝利した。

デビューから着実な成長を見せ、ここでは能力値1位。ただし、今回は前走から2Fの距離延長。芝1400mのダリア賞でもラスト1Fで甘くなって、外からコラソンビートに差し切られ、2列目の内(本馬は2列目の外を追走)から最後の直線で早め先頭に立ったアトロルーベンスにもやや差を広げられてしまっている。

今回は幸いにもA→Cコース替わりかつ内有利の中山芝。内枠を引いたのは好材料だ。レースが流れて、外差し馬が3~4角で外を回るロスが生じる中、上手く最短距離を立ち回れるならチャンスありと言ったところ。芝1600mだと好走パターンが限定的なので過信は禁物だが、軽視もできない。

【能力値2位 キャットファイト】
前々走のアスター賞をレコードタイムで圧勝した馬。アスター賞は6番枠からまずまずのスタートを切って、すっと内に入れて3番手を追走した。3~4角で2番手のバスターコールに内から並んで2列目。先頭のフェンダーとのスペースは維持して4角でじわっと詰めて、1馬身半差で直線へ向いた。序盤でひとつ外に出されると、すっと伸びて先頭。ラスト1F地点では半馬身差のリードだったが、そこから突き抜けて5馬身差で圧勝した。

3~4角で最短距離を通ったことが好走要因のひとつであるが、3~4角からスパートしながらも、ラスト1Fで11秒3と加速して、ゴール板を過ぎてもまだ伸びていくような走り。エンジンが掛かってからが強いタイプで、相当なスタミナがある。

このスタミナの豊富さを生かして、前走の阪神JFでは先行してほしかったが、3番枠から好スタートを決めながらも、まさかの中団まで位置を下げた。道中も中団の最内で脚を温存。3角でペースが緩んでも我慢し、4列目付近で直線へ。序盤で外に誘導して追われたが、反応が甘く、ラスト1Fで中団まで下がって10着と完敗した。

本馬はボンドガールが勝利した6月東京の芝1600mの新馬戦では、最後の直線でキレ負けして6着に惨敗。一方で、アスター賞のように追われてもすぐに反応しないが、エンジンが掛かるとどこまでも伸びていく強さがある。前走は先行させていれば、また違う結果になっていたのではないかと考えているが、都合良く解釈するなら、前走で走らせていないぶん、まだ余力が残っているはず。

今回は坂井瑠星騎手に乗り替わり。本質的に芝1600mは距離が短いだけに、先行策でスタミナを生かす競馬ならチャンスがある。フェアリーSは前走からの脚質転換がキーワード。他馬がハナへ行かないようであれば、逃げてみるのも面白い。対抗候補だ。

【能力値3位 スティールブルー】
8月の新潟芝1600mの新馬戦では、17番枠からまずまずのスタートだったが、外枠だったこともあり、自然とポジションが下がって中団外目を追走。道中は前の馬を壁にしてうまく折り合いがついていた。3~4角でも外目を回って直線序盤では4列目。そこから徐々に差を詰め、ラスト2Fで右ムチが飛ぶとフットワークの回転が上がり、前を捉えて残り100m付近で先頭。2着に2馬身半差をつけて完勝した。

新馬戦は4F通過50秒4。新馬戦としてもペースが遅かったが、最後の直線勝負となった中で、ラスト2Fでグンと伸び、メンバー最速の上がり3F32秒9を記録。この上がり3Fは同日の芝では古馬も含めてNo.1で、相当な瞬発力を見せている。

前走のアルテミスSでは、9番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速く、じわっと先行して2列目の外を追走。ここでもペースが上がらない中、折り合いがついてレースの流れに乗れていた。3~4角でも外を回って直線序盤ではすっと反応して2番手。ラスト2Fで逃げたショウナンマヌエラを捉えきったが、ラスト1Fで外からチェルヴィニアに差され、その外のサフィラにもかわされての3着だった。

前走は新馬戦から一転して先行策。勝ちにいったことでラスト1Fが甘くなってしまったが、前目で流れに乗れたのは、今後へ向けての大きな収穫。ペースが速くなっても置かれることなく、楽に追走できるはずだ。新馬戦のように末脚を生かす競馬ならかなり期待できる。今回の本命候補だ。

【能力値3位 テリオスサラ】
9月新潟芝2000mの新馬戦では3着。次走、中山芝1800mの未勝利戦では、当時未勝利クラス最強とも言えるスパークリシャールが逃げる中、序盤で2番手外から競り掛け、道中はマークする形でレースを進めた。残り100mで競り落とし、1馬身1/4差で完勝。内容も指数も優秀で、当時はそれなりに高い評価をした。

前走は強敵が揃った赤松賞。8番枠から五分のスタートだったが、行きっぷり良く、3番手外を追走した。道中はコントロールし、3~4角で前との差を詰めて直線へ。序盤で早々と先頭に立ったが、残り300mでステレンボッシュに差されて、3/4差の2着に敗れた。

前走は期待に応える好内容だったが、勝ち馬ステレンボッシュは道中掛かり気味になり、コントロールが難しい状態で、3~4角でも外を回るロスがあった。この馬に差されてしまったことから、トップクラスに入るとやや物足りない面がある。重賞のここで通用するには自身の成長が求められる。

【能力値5位 ティンク】
7月福島芝1800mの新馬戦では4番枠から好スタートを決めて、2番手の外を追走した。最後の直線では、早めに抜け出しにかかったが、本馬の後ろからトレミニョンが進路を内に切り替え、この馬と併せて伸びる形になった。結果、ハナ差2着と善戦。折り合いもスムーズで、レースセンスの良さを感じさせていた。

次走、未勝利戦を順当に勝利すると、続く芙蓉Sでは4着。芙蓉Sでは大外9番枠からのスタートで少しアオって後手を踏んだが、それを挽回してじわっと先行。道中は、押し出されてハナに立ったドゥレイクパセージ、2番手マテンロウゴールドの外につけた。3~4角では3頭が並走。本馬は一番外を回り、直線序盤でペースを上げて振り切りにかかったドゥレイクパセージにしぶとく食らいつき、4着と好走した。レースが緩みなく流れた中で、先頭列の外を回り、勝ち馬シリウスコルトから2馬身差におさめた内容は、一戦ごとの上昇と豊富なスタミナを感じさせた。

前走の赤松賞では、2列目の最内をロスなく立ち回っていたが、最後の直線で伸び負ける形で6着。瞬発力がやや足りない面を見せてしまった。今回、スタミナが求められるような流れになればチャンスはあるが、本領発揮はもう少し先の中距離の舞台のように感じる。

【能力値5位 キャプテンネキ】
芝1400mの新馬戦とりんどう賞を連勝した。前々走のリんどう賞は重馬場。4番枠から好スタートを決めて一旦はハナに立ったが、2番枠から出遅れたベネメレンティが主張してくるので、同馬を行かせて2番手を追走した。4角でやや置かれたが、直線入り口で先頭。ラスト1F地点で半馬身差リードしていたが、残り100mで外の3頭に迫られた。これを何とか凌ぎ切ってハナ差で勝利した。

この時の3着馬バウンシーステップは次走のつわぶき賞を好指数で完勝したように、決して楽な相手ではなかった。ただ、本馬は前走のファンタジーSでは6着だったように、重賞となるとやや物足りなさを感じる。前走は超高速馬場のハイペースで、追走に忙しかった面はある。距離が長くなることは好材料だが、もう少し成長もほしい。


穴馬は幅広いレースに対応できるイフェイオン

京都芝1600mの新馬戦は、9番枠からやや出遅れ、そこからすぐに最内に入れて中団やや後方を追走。3~4角で最短距離を立ち回り、直線でもインを突いた。直線序盤の伸びはそこまで目立つものではなく、ラスト1F地点では早め先頭に立った勝ち馬プシプシーナに大きく離されていたが、そこから急追して同馬と3/4馬身差。2着馬シルヴァリームーンにアタマ差まで迫って3着でゴールした。

前走は10番枠から好スタートを決めて、好位直後の外を追走。新馬戦よりも前目で先団を見ながらレースを進めた。3~4角では早めに動いた前のミヤジテンを追いかけ、4角ではその外から手応え良く上がって2列目で直線へ向いた。ラスト1F地点では3番手だったが、そこからスムーズに脚を伸ばし、堂々の2馬身差の完勝だった。

前走の走破タイムの1分33秒3はかなり優秀で、ここでは1クラス上でも通用する指数を記録。ラスト2Fは11秒3-11秒5。緩みないペースで流れて走破タイムが速くなったわりに、ラスト1Fの減速が少ない点は評価できる。新馬戦はあまり行きっぷりが良くなく、前残りの展開に泣く形となったが、前走は一転して行きっぷりが良く、前の馬を壁にして追走していたほど。新馬戦とは全く違う形で好走したことも評価できる。近2走とも展開が噛み合ってないが、噛み合えば大幅な前進が見込める。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)マスクオールウィンの前走指数「-11」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.1秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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