【アルテミスS】チェルヴィニアとサフィラはスケール感、レース内容申し分なし 前走未勝利組は距離短縮が吉
勝木淳
ⒸSPAIA
来春に向けた戦いが加速する
東京のマイルはいつの時代も素質を存分に引き出す舞台だ。アルテミスSも過去3年、ソダシ、サークルオブライフ、リバティアイランドと阪神JF勝ち馬を連続して送る。ソダシは桜花賞を勝ち、リバティアイランドは牝馬三冠を達成した。いわば出世レースのここで好走できるか。暮れ、そして来春に向けた戦いはこのレースをきっかけにさらに加速していく。データは過去10年分を使用する。
好素材がそろう一戦ではあるが、人気別では1番人気【3-3-0-4】勝率30.0%、複勝率60.0%、2番人気【2-4-1-3】勝率20.0%、複勝率70.0%と人気どころは堅実ではありつつも、絶対的とはいえない。3、6、7、9、12番人気が勝っており、波乱と背中合わせだ。キャリアの浅い牝馬同士だけに、能力の優劣は馬券購入側も見定めきれない部分がある。人気の死角はないかと探すのも手だ。5、6番人気の複勝率40.0%はそれを物語る。あくまで横一線、まずは対等に評価していこう。
キーワードは前走未勝利、距離短縮
サウジアラビアRC2着ボンドガールに初戦で敗れたチェルヴィニア、阪神の未勝利戦を快勝したサフィラ、新潟の新馬快勝のエリカリーシャン、スティールブルー、新潟2歳S2着ショウナンマヌエラ、札幌で新馬を勝ったラヴスコールなど今年も能力を秘める女王候補がそろった。このなかで好走ゾーンに入るのはどの馬だろうか。
まずキャリア1戦1勝の前走新馬が【3-3-1-38】勝率6.7%、複勝率15.6%、未勝利【5-3-2-20】勝率16.7%、複勝率33.3%で、未勝利組が優勢な点はひとつ注意しておこう。
その上で、まずは前走新馬から具体的にみていく。コース別では新潟芝1600m【1-2-0-10】勝率7.7%、複勝率23.1%、阪神芝1600m【1-1-1-1】勝率25.0%、複勝率75.0%、小倉芝1800m【1-0-0-0】が好走ゾーンで、これ以外から3着以内は出ていない。新潟芝1800m【0-0-0-2】、札幌芝1500m【0-0-0-3】など、好走がないコースを経験した馬は注意したい。
新潟芝1600mの新馬を勝ったスティールブルーは牝馬限定戦で前後半800m50.4-46.0の超スローペースを上がり32.9で差し切った。この32.9は前半の遅さを考えれば特筆すべきものではないが、着差がつきにくいスローで2着に2馬身半は評価していい。3着馬は2戦目で勝ちあがった。
ニシノコマチムスメも同じく牝馬限定戦を勝った。こちらも前後半800m50.2-46.5、中盤で13.6が記録された超スローペースを3番手から上がり33.5だった。こちらは3、9、10着馬が未勝利を脱出した。数字では判断できない部分もある。
新馬より成績がいい未勝利について距離別成績をみる。注目は1600m超【3-0-1-4】勝率37.5%、複勝率50.0%だ。チェルヴィニアにとって追い風になる。その未勝利戦は前半1000m通過1:01.7と遅い流れだった分、最後600m11.3-10.6-11.3、上がり33.2。チェルヴィニアは2番手から上がり33.0で2着に6馬身差をつけた。
ボンドガールの新馬組はこの馬のほかにもコラソンビート(ダリア賞勝ち)、キャットファイト(アスター賞勝ち)の2勝馬を含め4頭が勝ちあがった。現状、世代屈指のハイレベル戦といっていい。母チェッキーノ、兄ノッキングポイントで血統のスケール感も十分ある。将来性という意味でも一番手だろう。
阪神芝1800mで未勝利を勝ったサフィラもいい。レースのラスト600mは11.3-11.0-11.6、サフィラは上がり1位33.7で逃げた2着馬に3馬身半差をつけた。上がり2位より0秒7も速い決め手はいかにも東京向きだ。母サロミナといえば、サラキア、サリオス、エスコーラ、サリエラと活躍馬が並ぶ。特に牝馬は少し順調に使えない産駒が多い血統だけに、早めに賞金を積み、ゆっくり来春を迎えたいところだ。
前走新潟2歳S2着ショウナンマヌエラがいるので、前走重賞【1-1-1-17】についても確認するが、前走札幌2歳S【1-1-1-5】、新潟2歳S【0-0-0-6】と新潟組はさっぱり。こちらも未勝利組と同じく距離短縮がベターとなる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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