【ローズS】ブレイディヴェーグとコンクシェルに複数の不安要素あり データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2023年ローズステークスの過信禁物の注目馬像,ⒸSPAIA

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春の実績馬と夏の上がり馬が激突

9月17日、阪神競馬場ではローズS(GⅡ)が行われる。牝馬三冠の最終戦である秋華賞への優先出走権が懸かった一戦であり、今年も秋の飛躍を狙う期待馬が多く出走予定だ。

当レースはトライアルの性質上、春の実績馬と夏の上がり馬が激突する構図となり、出走各馬の能力比較が困難である。加えて、これまで戦ってきたレースのクラス・レベルも様々であり、特に人気馬の取捨選択は悩ましい。今回は阪神競馬場で行われた過去10年(10~19年)のデータを基に「過信禁物の注目馬」を導いていく。


キャリア10戦以上は劣勢

キャリア別成績,ⒸSPAIA


最初に注目するのは各馬のキャリア別成績である。当レース出走前のキャリアが9戦以下だった馬は【10-9-10-99】勝率7.8%、連対率14.8%、複勝率22.7%と成績良好で、馬券に絡んだ馬のほとんどがこの組に属している。一方でキャリアが10戦以上だと【0-1-0-19】勝率0.0%、連対率5.0%、複勝率5.0%と、好走率が大きく落ち込む。

この組で唯一好走を果たしたのはクロコスミア(16年2着)だが、札幌2歳SとアルテミスSで3着に好走した実績があった。また、10戦のキャリアを重ねていたが、その内8戦は2歳時のものであった。3歳になってからはチューリップ賞とフローラSの2戦しか経験しておらず、ゆとりのあるローテーションで当レースに臨んでいた。

キャリアを重ねている例の多くは勝ち上がりや賞金加算がスムーズにいかなかった馬であり、突出した能力を持ち合わせていないケースが多い。仮に夏場の急成長で当レースに駒を進めていたとしても、レースを重ねたことによる消耗もあるはずだ。クロコスミアのように能力、出走間隔ともに不安が払拭されたケースではない限り、キャリア数の多い馬は軽視した方が良い。


生まれの早い馬が優勢

生月別成績,ⒸSPAIA


次に取り上げたいのが、生月別の成績だ。1~3月に生まれた馬の成績は【9-6-9-79】勝率8.7%、連対率14.6%、複勝率23.3%と優秀であるのに対して、4月以降に生まれた馬は【1-4-1-39】勝率2.2%、連対率11.1%、複勝率13.3%と低調だ。回収率を見ても1~3月生まれの単70%/複115%に対して、4月以降に生まれた馬は単3%、複62%と見劣りする数字だ。

秋を迎えたとはいえ3歳馬はまだ成長途上であり、世代戦らしく生まれの早さは大きなアドバンテージとなっていることがデータから読み取れる。普段の予想ではあまり目にしない部分かもしれないが、当レースの予想では各馬の誕生月もチェックすべきだろう。特に4月以降の、生まれが遅い馬は評価を下げた方が良い。


前走非JRA重賞組は重賞経験の有無が重要

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


冒頭でも触れたように、当レースでは春にクラシックロードを歩んだ馬と夏の上がり馬が混在するメンバー構成となる。そこで前走のクラス別成績(前走地方を除く)をみると、JRA重賞からの転戦馬が【8-5-3-52】勝率11.8%、連対率19.1%、複勝率23.5%であるのに対して、前走非JRA重賞組は【2-5-7-59】勝率2.7%、連対率9.6%、複勝率19.2%となっている。

勝率や連対率を見ると非JRA重賞組の成績が見劣りするが、複勝率では両者に大差はない。前走JRA重賞組には世代のトップクラスともいえるオークス組が数多く含まれることを考えれば、非JRA重賞組も健闘していると判断できる。回収率に関してはJRA重賞組が単51%/複67%であるのに対して、非JRA重賞組は単52%/複137%となっており、馬券的な妙味はむしろ後者にある。

前走非JRA重賞組の重賞出走経験別成績,ⒸSPAIA


この前走非JRA重賞組の取捨選択を助けるデータとして、重賞出走経験の有無による成績を取り上げる。この組の73頭のうち、重賞を経験していた馬の成績は【1-3-6-23】勝率3.0%、連対率12.1%、複勝率30.3%となっている。これに対して経験がなかった馬は【1-2-1-36】勝率2.5%、連対率7.5%、複勝率10.0%と成績が落ち込んでおり、特に複勝率は約3倍の差がついていた。

前走非JRA重賞組は馬券妙味の観点から積極的に買い目に入れていきたいが、重賞経験の有無はしっかりと確認しておきたい。今回が重賞初出走の馬には、過度な期待を抱かない方が良いだろう。


データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまでに紹介したデータを総括すると、当レースにおける不安要素は以下の3点となる。

・キャリア10戦以上
・生まれが4月以降
・重賞未経験

これらを踏まえて、今回はブレイディヴェーグ、コンクシェルの2頭を「過信禁物の注目馬」として挙げる。

ブレイディヴェーグは3戦2勝の素質馬で、前走の1勝クラス(東京・芝2000m)では牡馬を相手に3馬身半差をつける鮮烈な勝利を収めている。2度の骨折によりクラシックの舞台には立てなかったが、今回は「遅れてきた怪物」として注目を集める一頭だ。しかしながら誕生日が4月11日で、かつ重賞経験もなく2つの不安データに該当している。右回りコース、重賞、関西輸送と初物づくしで挑む一戦であり、故障による育成の遅れも含めて経験値では分が悪い。能力を発揮できるか未知数な部分が多く、過度な信頼はできない。

コンクシェルも前走の不知火特別を逃げて後続に5馬身差をつける派手な勝ち方をしており、今回は上位人気が想定される。だが、こちらも4月25日と比較的生まれが遅く、これまでに11戦とキャリアを重ねている点でも不安データに該当。また、前走で下したメンバーは、現時点では次走で掲示板にすら載れておらず、レースレベルにも疑問が残る。近2走は少頭数のレースを逃げて連勝しているが、フルゲートの重賞で同様のレース運びができるかも未知数。積極的に買い目には入れられないと見る。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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