【函館スプリントS】最年長勝利は7歳のガルボ、レコードタイムは2017年の1:06.8 「最高記録」を振り返る

緒方きしん

2023年函館スプリントステークス、思い出の「最高記録」,ⒸSPAIA

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長く"穴馬"として愛されたガルボ

2002年にサニングデールが制して以降、3歳馬の活躍が目立つ函館スプリントS。特に2016年以降は2016年ソルヴェイグ、2017年ジューヌエコール、2022年ナムラクレアと3歳牝馬が3勝をあげている。斤量50キロ(今年から3歳牝馬は52キロ)という優位性は大きく、今後も3歳牝馬の活躍は続くだろう。3歳牡馬も軽斤量の恩恵があり、同様に好走は多い。筆者の印象に残っているのは2016年。レッツゴードンキやアクティブミノルといった実力馬を1馬身以上突き放し、3歳馬のシュウジとソルヴェイグがハナ差のデッドヒートを繰り広げた。

そんな函館スプリントSの最年長制覇は、2014年ガルボの7歳である。ヴィクトワールピサやエイシンフラッシュ、ローズキングダムらが激突した2010年クラシック世代。ガルボ自身も朝日杯FS4着、シンザン記念1着と頭角を現していた。しかし皐月賞では13着。それ以降は父マンハッタンカフェとは異なり、2000m以上のレースに出走することはなかった。

古馬との初対決となった富士Sでは13番人気3着と激走し、2着ライブコンサートとのワイド馬券は282.4倍の波乱となった。その後、京都金杯や阪急杯で2着、5歳時に東京新聞杯、ダービー卿CTを制した。5歳秋のマイルCSで大敗してからは、たびたび低人気から穴を開ける馬としても愛された。阪神Cで14番人気2着、翌年の阪神Cでも10番人気2着など、穴党には心強い馬だった。

そんなガルボが最後に馬券圏内に入ったのが、2014年函館スプリントSだった。7歳となったガルボは出走メンバー最年長タイ。皐月賞で激突したヴィクトワールピサやエイシンフラッシュはすでに引退していた。斤量はメンバー最重量の58キロ。なかなか酷な条件かと思いきや、津村明秀騎手の早めの仕掛けに応え、力強く押し切って勝利した。2着は斤量54キロの4歳牝馬ローブティサージュ、3着は斤量50キロの3歳牝馬クリスマス。若き牝馬らを抑え、しかも単勝オッズ35.9倍、8番人気での勝利だった。


クロフネ産駒の牝馬、カレンチャンとジューヌエコール

函館スプリントSの勝ち馬たちは、いわゆるマイナー系の種牡馬の産駒や、外国産馬、持ち込み馬など、血統がバラエティ豊かである。1998年の勝ち馬ケイワンバイキングは、 父のアイシーグルームが送り出した2頭の重賞馬のうちの1頭。年明けに準オープンから3連勝、ダービー卿CTで2着、 高松宮記念で5着と実力を見せたうえで、 函館スプリントSで重賞初勝利を達成した。

2007年1着の牝馬アグネスラズベリは、内国産馬エアジハードを父に持つ。エアジハードはショウワモダンで安田記念の親子制覇を達成している種牡馬だが、牝馬でも快速馬を輩出したことになる。さらにストーミングホーム産駒のティーハーフやロージズインメイ産駒のドリームバレンチノ、サクラオリオン産駒のカイザーメランジェなども、ここの勝ち馬である。また、ウォーニング産駒のサニングデールは、1:10.3と最も遅い勝ちタイムだった。

多彩な血統馬たちに囲まれながら快速ぶりを披露したのが、2011年の勝ち馬でクロフネ産駒のカレンチャンである。前走の阪神牝馬Sで1番人気に支持され重賞初制覇。3ヶ月ぶりの実戦で函館スプリントSに挑み、ここでも1番人気に支持された。ホワイトマズル産駒のテイエムオオタカが逃げ粘るも、上がり34.5の末脚を使って差し切り勝ち。この時の勝ちタイム1:08.0は、函館スプリントSのレースレコードを塗り替えるものだった。

5年後、ソルヴェイグによってレースレコードが更新されたが、翌年にはさらに1秒も更新される。1:06.8を叩き出して勝ったのは、またしてもクロフネ産駒のジューヌエコールだった。

ジューヌエコールはデイリー杯2歳Sを制するなど早いうちから活躍を見せたが、GⅠでは阪神JF11着、桜花賞9着と悔しい結果に終わっていた。その桜花賞の次走に選んだ函館スプリントSで、セイウンコウセイやシュウジといった牡馬を相手に差し切り勝ち。その後は怪我などに悩まされ、思うように活躍できなかったものの、今もなおレコードホルダーとして名を残している。姪には安田記念を連覇したソングラインがいる血統で、繁殖としても期待が集まる。きっと、自身の果たせなかった偉業を成し遂げる快速馬を送り出してくれるだろう。

今年も若き牝馬が斤量を味方に快速ぶりを披露するのか。函館のスプリント競走から目が離せない。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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