【函館スプリントS】Cアナライズは牝系から適性が高い2頭を推奨 良馬場ならトウシンマカオ、重馬場ならブトンドール

貴シンジ

2023年函館スプリントステークス、前走クラス別成績,ⒸSPAIA

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3つのファクターから本命馬を見つけ出す

鳴尾記念はソーヴァリアントを推奨し1番人気12着。内が良い馬場で外々を回ったのが敗因と見ることはできそうだが、それにしても負け過ぎの印象を受ける。さて、今回は6月11日(日)に函館競馬場で行われる函館スプリントSについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった19頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。


重要データ:前走GⅠ大敗組の巻き返しに警戒

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


函館スプリントSは様々なクラスで戦ってきた馬たちが入り乱れる。3勝クラスやOPで走っていて秋への飛躍を誓う馬や、春のGⅠ戦線で苦汁をなめ、夏に復活を誓う馬など。

どの馬にとっても重要な一戦となるが、前走クラス別成績にははっきりとした傾向が出ている。3勝クラス【1-1-1-8】、OP【1-5-3-58】、GⅢ【1-2-0-10】、GⅡ【2-0-2-9】、GⅠ【5-2-4-30】となっていて、前走がGⅢ以下だった馬は勝率3.3%、複勝率16.5%。回収率は単複ともに80%を下回っている。

しかし、GⅡ組は単勝回収率183%、複勝回収率76%。GⅠ組は単勝回収率212%、複勝回収率158%となっていて、優秀な数字だ。このレースに出走してくる前走GⅡ、GⅠ組というのは少なくとも勝ち馬ではないし、大敗している馬も多い。しかしこれだけ回収率が高いということは、馬柱の汚さから嫌われているものの、実力は一流ということだろう。

【前走GⅠorGⅡの出走予定馬】
・ウォーターナビレラ
・ディヴィナシオン
・トウシンマカオ
・ブトンドール
・ムーンプローブ
・リバーラ


前走不利データ:高松宮記念のトウシンマカオ

トウシンマカオの前走は高松宮記念15着。同レースは馬体重が重要なファクターとなっていた。同馬の高松宮記念当日の馬体重は462キロ。462キロ以下で同レースに出走した馬の成績は【0-0-1-28】となっていて、ほとんど好走馬を出すことができていない。

加えて今年の同レースは稀に見るほどの不良馬場だった。パワーのいる馬場はこの馬にとって苦しいものがあり、洋芝でも開幕週の函館なら前走からの上積みを見込めるだろう。


血統解説:ブトンドール、キミワクイーン、トウシンマカオ

・ブトンドール
日本での牝祖は6代母インズキー。本馬の5代母ビーナスヤシマの半兄には、安田記念勝ちのシェスキイがいるという血統だ。ビーナスヤシマからはオカノシスターとユキノサクラという2頭から枝が広がっているが、活力があるのは14年JDD勝ちのカゼノコなどを輩出しているユキノサクラの枝。本馬はもう一方のオカノシスターが4代母で、本馬以外に重賞級の馬は出ていない。

母プリンセスロックはJRAダートスプリント戦で3勝。本馬も母のパワー、または祖母の父であるジェネラスのタフさと父ビッグアーサー、母父スウィフトカレントのスピード、機動力を受け継いだ器用なタイプのスプリンターに出た。函館は実績のある舞台で洋芝もこなせるタイプだけに、この舞台は合うだろう。

ブトンドールの血統表,ⒸSPAIA


・キミワクイーン
日本での牝祖は3代母フォレストゾーン。この牝系は日本に入ってきてからあまり実績を残せておらず、代表馬は本馬かフォレストゾーンの直仔で10年スイートピーS2着のニーマルオトメくらいだ。

母チェリーペトルズは父ダイワメジャー×母父サクラバクシンオーという組み合わせで、父らしいトモと母父の持つスピードを武器に、JRA芝スプリント戦で2勝。本馬は父がロードカナロアだが母を強く引き出していて、母に柔らかさを足したような馬に出た。母と違って本馬は馬格はないが、前走重馬場の春雷Sで好走できたように、パワーはしっかり受け継いでいて洋芝への不安はない。先行力もあり、開幕週の函館で上手くスタートを決めれば上位争いも可能だろう。

キミワクイーンの血統表,ⒸSPAIA


・トウシンマカオ
日本での牝祖は祖母サスペンスクイーン。ただこの一族は4代母Rose Bowlを牝祖とした別の枝も日本で走っていて、17年小倉記念、新潟記念勝ちのタツゴウゲキなども近親にあたる。

母ユキノマーメイドは現役時に芝中距離で4勝を挙げた実績馬。繁殖としても20年マイラーズC2着のベステンダンクを輩出するなど、中央で8頭が勝ち上がっており優秀だ。今回取り上げた馬の中では、最も活力のある牝系だと言えるだろう。

トウシンマカオ自身はビッグアーサー×スペシャルウィークという組み合わせだが、古馬になるにつれビッグアーサーらしい硬さとスピードが出てきた印象。なので良馬場の洋芝なら適応可能とみる。開幕週とはいえ強力な先行勢が揃いそうなメンバー構成を考えれば、中団から差しを決められそうなこの馬には注目したい。

トウシンマカオの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズはトウシンマカオを推奨

今回のCアナライズではトウシンマカオを推奨する。前走は重馬場が堪えて大敗してしまったが、実力で言えばこのメンバーなら最上位だ。力のいる洋芝となるとさすがに適性外になってしまいそうだが、開幕週で良馬場なら好勝負可能だろう。

もし雨が降り重たい馬場になるようであれば、浮上するのはブトンドールだ。こちらはジェネラスの影響を受けていて、3歳牝馬ながらタフな馬場もこなしてくるだろう。キミワクイーンはどんな展開でも上位争いはできそうだが、鋭い脚も押し切るだけの先行力も持ち合わせておらず、前走OP組なので複軸で一考といったところだ。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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