【天皇賞(春)】タイトルホルダー連覇濃厚! ジャスティンパレス、ボルドグフーシュら4歳勢が待ったをかけるか
勝木淳
ⒸSPAIA
温故知新は競馬ファン、普遍の真理
新緑の淀に春の盾が帰ってきた。外回りから内回りへ、急坂を2回通過する阪神の天皇賞(春)も非常にタフな競馬で見応えはたっぷりあったが、やはり情緒的にはこちらの方がしっくりくる。
競馬ファンはちょっとおセンチなもので、理詰めで予想したい反面、夢や希望、そして情緒を大切にしたかったりもする。新しいことを受け入れながらも、どこかノスタルジーに浸りたい。温故知新は競馬ファン、普遍の真理でもある。ここでは各馬の臨戦過程を振り返りつつ、阪神だった直近2年を含め、過去10年間のデータを紹介する。
1番人気【3-3-0-4】勝率30.0%、複勝率60.0%、2番人気【5-0-1-4】勝率50.0%、複勝率60.0%と1着候補は人気馬から選びたい。勝ち馬は10頭とも4番人気以内で、5番人気【0-0-0-10】、6番人気以下は複穴候補まで。ただし、10番人気以下【0-2-2-73】複勝率5.2%の3着以内好走はすべて京都だった。馬券妙味はタフな阪神より京都の方がある。
年齢の傾向は4歳【4-2-4-28】勝率10.5%、複勝率26.3%、5歳【5-4-1-41】勝率9.8%、複勝率19.6%。この10年、4歳で天皇賞(春)を勝った4頭のうち、昨年のタイトルホルダーを除く3頭は5歳時に連覇を決めている(フェノーメノ、キタサンブラック、フィエールマン)。タイトルホルダーもこの流れに続けるか。
昨年の菊花賞3着以内の4歳勢アスクビクターモア、ジャスティンパレス、ボルドグフーシュらはこれに待ったをかけられるか。これが最大の焦点だろう。
前走重賞が全勝
上位人気、4、5歳中心、4歳で勝った馬は連覇濃厚といった傾向が浮かび上がったところで、ここからは前走戦歴を少し細かくみていこう。
前走クラス別成績では前走重賞が【10-10-9-125】と断然。前走海外【0-0-1-1】はいずれもレッドカドーの記録なので、サウジから転戦してくるシルヴァーソニックに当てはめづらい。さすがは天皇盾、重賞転戦は最低条件といえる。
マテンロウレオが4着だった前走大阪杯(GⅠ昇格後)は【1-1-0-2】。好走は17年キタサンブラックの連勝と18年大阪杯13着大敗だったシュヴァルグランの2着がある。今年の大阪杯はジャックドールが前後半1000m58.9-58.5の精緻なラップで逃げ切り勝ちを飾った。
マテンロウレオは残り1200mから11秒台が刻まれる競馬で好位から流れ込んだ。スタミナを感じさせる内容ではあるが、ハーツクライ産駒はこの10年でも天皇賞(春)【0-5-2-16】。どうもイメージほど走れない。
馬場不問! タイトルホルダー連覇濃厚
次に前哨戦のGⅡ日経賞【4-2-3-43】勝率7.7%、複勝率17.3%、阪神大賞典【2-4-4-47】勝率3.5%、複勝率17.5%についてそれぞれ傾向とレース内容を掘り下げていく。
日経賞の着順別成績は1着【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%、3着【1-1-0-5】勝率14.3%、複勝率28.6%など。6着以下だと【0-0-0-17】で、掲示板以内が好走条件になる。今年の1着タイトルホルダー、3着ディアスティマはいいが、9着アスクビクターモアは消去データに入ってしまう。
今年の日経賞は不良馬場で行われた。国内の道悪ならば凡走なしのタイトルホルダーが逃げて8馬身差の圧勝だった。路床から徹底的に作り直した京都の芝が道悪になるかどうか微妙だが、雨が降ったら逆らえまい。それでなくても昨年4歳でこのレースを勝ったタイトルホルダーは連覇濃厚。凡走は想像しがたい。
一方、アスクビクターモアは休み明けが響き、スタートで遅れ、見せ場を作れなかった。道悪がマイナスに働いた面はあるものの、昨年の菊花賞でも最後の200m12.9と時計を要した。2マイルどんとこいというタイプでない可能性は残る。反面、好調横山武史騎手への手替わりがプラスに作用する可能性もある。タイトルホルダーの最初のタイトルは横山武史騎手と挑んだ菊花賞だった。
日経賞より1週早い前哨戦・阪神大賞典はさらにシビアで、1着【2-2-2-3】勝率22.2%、複勝率66.7%に対し、2着以下【0-2-2-43】。勝ち馬ジャスティンパレスと、2着ボルドグフーシュ、3着ブレークアップなどとはデータ上の差が大きい。
今年の阪神大賞典はアフリカンゴールドがペースを握り、1000mごとのラップは1.04.9-1.03.3-57.9で典型的な上がり勝負だった。2番手で流れに乗り、上がり最速34.2で完封したジャスティンパレスのセンスある走りは本番でも通用する。タイトルホルダーやアスクビクターモアをマークしながら競馬を進め、最後に競り落とす場面まで想像できる。
2着ボルドグフーシュは中団前で流れに乗る、勝ちに行く競馬を選択した。4コーナーで並びながら離された内容は外を回った分も頭に入れておきたい。昨年の有馬記念で2着だったように本来はスタミナと底力を問う競馬向き。阪神大賞典は強みを生かせる競馬ではなかった。
タイトルホルダーと阪神大賞典1、2着ジャスティンパレス、ボルドグフーシュを中心にアスクビクターモアがどこまで迫れるか。基本的には今年も上位勢が強力だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・3連単の最高額は1460万40円 2022年中央競馬の高額配当ランキング
・武豊騎手、JRA重賞350勝までの道のり 節目の重賞勝利を振り返る
・2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待
おすすめ記事