【阪急杯】1200m通過は1分7秒6! アグリ、春のスプリントGⅠに名乗りを上げる

勝木淳

2023年阪急杯、レース結果,ⒸSPAIA

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1200m通過は1:07.6

昇級初戦のアグリが4連勝で重賞をもぎとった。阪急杯が1400mになった2006年以降、昇級即勝利をおさめたのは20年ベストアクターに続く2頭目。高松宮記念を目指す実績馬の始動戦でもあり、貴重な1400m重賞で、スペシャリストが狙いにくる阪急杯は混戦になりがち。ただメンバーの層は厚く、なかなか昇級馬は通用しにくい。アグリの勝利はこの時点で価値あるものだ。もちろん今年は例年よりメンバーが若干寂しかった点も含んでおくが、それを上回るだけの内容だった。

スタートを決めたアグリは内からメイショウチタンが先手を主張すると、余裕をもって待ちかまえ2番手に。前半600mは12.0-10.6-11.3で33.9。そこからゴールまでは11.3-11.2-11.2-11.9、後半600m34.3でまとめた。馬場状態のいい阪神とはいえ、残り200mまで11秒台前半と一定のスピードで駆け抜けるあたり、アグリに高いスピード能力があることを示す。前半から終盤までラップを落とさず進みながら、最後の200mを11.9で踏ん張っており、もちろん1400mでも文句なしだが、11秒台前半を2番手で流れに乗れ、1200m通過は1:07.6。スプリントGⅠでも通用していい。

ハイペースだった昨年の高松宮記念は重馬場で前後半600m33.4-34.9、12.1-10.3-11.0-11.0-11.5-12.4で1:08.3。良馬場だった19年は33.2-34.1、12.0-10.1-11.1-11.4-11.2-11.5で1:07.3。3コーナーまでが短い中京芝1200mなら十分戦えるだけの記録をアグリは叩き出した。


1番人気グレナディアガーズは7着

アグリの父カラヴァッジオは現在、日本軽種馬協会静内種馬場に繋養されている。現役時代は10戦7勝、6ハロンのGⅠ・2勝のスプリンターだった。その父スキャットダディといえば、上記19年高松宮記念を福永祐一騎手の手綱で勝ったミスターメロディの父であり、米国三冠馬ジャスティファイの父でもある。ストームバード系は日本のスピード志向の競馬との相性がよく、この点を見込んでのカラヴァッジオの輸入は内国産の産駒デビュー前からアグリが結果を出したことで、早くも大当たりを予感させる。

父カラヴァッジオの戦歴からもアグリのスプリンターとしての資質は高い。母の父ウォーフロントも、産駒のプロトポロスが1200m2勝など、短距離志向だ。同じノーザンダンサー系のストームキャットにダンチヒの組み合わせは緩急を必要としない流れでこそ。高松宮記念も楽しめる。

2着ダディーズビビッドは左回りの中京、新潟で結果を出してきただけに、この好走で幅が広がった。こちらも好位から運んでおり、見所はある。今回のような緩急がない流れでこそのタイプなので、スローだとあっさり負けることも多い。そうなりにくい舞台に出走してきたときは狙っていきたい。

3着ホウオウアマゾンも似たような適性の持ち主だ。昨年後半は大きな着順が増えたが、締まった流れで先行すればしぶとい。わりと好走凡走がはっきりしており、今後は流れが合うか、先行できる組み合わせかどうかを見定めよう。

1番人気グレナディアガーズは好位から運んで7着とちょっと見せ場がなかった。好走した阪神Cは2度ともハイペースであり、今回の流れでの凡走は首をかしげる。阪急杯で前走阪神C組は同舞台なので相性こそ悪くないが、前走1着【0-0-0-4】に象徴されるように不思議と勝った馬は走らない。間隔的な難しさなのか、次への意識があるのか。今回は勝たなければならないレースではなく、敗因は適性より状態面とみるべきで、割り切って考えていい。

2023年阪急杯、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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