【京都記念】エフフォーリア復活なるか? 巷で囁かれる「エピファネイア早熟説」の真偽をデータ検証

東大ホースメンクラブ

エピファネイア産駒の年齢別成績,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

「エピファネイア早熟説」の真偽は

今週日曜、阪神競馬場を舞台にGⅡ京都記念が行われる。なんといっても注目は一昨年の年度代表馬エフフォーリアと昨年のダービー馬ドウデュースの直接対決。長く苦しいトンネルをさまよい続けた王者が、昨年暮れの中山で見えた一筋の光明を本物にできるか。はたまた武豊騎手にダービー6勝目を贈ったキーファーズの孝行息子が凱旋門賞の屈辱を跳ね返すのか。一介のGⅡ競走の枠を超えた激戦になりそうだ。

エフフォーリアの不振については様々な原因が囁かれており、その一つに「エピファネイア産駒の早熟説」が挙げられる。秋華賞以来勝利から遠ざかっているデアリングタクト、菊花賞でコントレイルをクビ差まで追い詰めたアリストテレスの古馬シーズン低迷などが論拠を補強している印象だ。

今週は「エピファネイア早熟説」をデータで検証。同産駒の年齢別成績やほかの種牡馬との比較検討によって検証していきたい(データは種牡馬のJRA全期間における産駒成績を参照)。

4歳が分水嶺、数字の落ち込みが激しい

エピファネイア産駒 年齢別成績,ⒸSPAIA


<エピファネイア産駒 年齢別成績>
2歳【114-94-96-645】勝率12.0%/連対率21.9%/複勝率32.0%
3歳【149-156-141-1368】勝率8.2%/連対率16.8%/複勝率24.6%
4歳【34-39-29-386】勝率7.0%/連対率15.0%/複勝率20.9%
5歳・6歳【8-8-8-162】勝率4.3%/連対率8.6%/複勝率12.9%

まずはエピファネイア産駒の年齢別成績を概観する。

4年連続で2歳馬リーディングトップ5にランクインし、特に2021、2022年は2位につけたように早い時期からの仕上がりは確かな事実で、2歳時の単勝回収率は139%、芝に限定すると155%と妙味十分。芝では複勝率3割を下回った年がなく、傾向が知れ渡った現在でも馬券の旨味は残っている。

無敵を誇る2歳シーズンに比べ3歳シーズンは一枚劣るものの、それでも芝では複勝率27.5%、単勝回収率78.0%、複勝回収率80.0%とまずまずの数字を記録。種牡馬としての色が出始める時期でもあり、芝2200m以上に限れば【34-24-20-123】複種率38.8%、単勝回収率139%。デアリングタクトのオークス制覇、エフフォーリアの有馬記念、アリストテレス、オーソクレースの菊花賞2着、ディヴァインラヴの菊花賞3着などGⅠでも真価を発揮する産駒が多い。

一方、4歳では陰りが見え始め、芝でも複勝率20.3%、単複回収率ともに45.0%と低調。5歳になるとさらに厳しく、オープンクラス以上で勝利を挙げたのは昨年の府中牝馬Sを勝ったイズジョーノキセキのみ。また苦手とするダートでは【0-0-1-39】と惨憺たる結果。若馬の時期に比べるとまるで別馬の感がある。

一定の早枯れ傾向が存在

主な種牡馬「早熟率」一覧,ⒸSPAIA


次にほかの種牡馬との比較において、エピファネイア産駒の早熟傾向が顕著に出ているかどうかを調査する。ここでは2、3歳時の勝率から4、5歳時の勝率を引いたものを「早熟率」と定義し、各種牡馬の数値を確認する。

エピファネイア産駒は9.5%(2、3歳時勝率)-6.3%(4、5歳時勝率)=3.2%。比較的ベテラン勢の活躍が多いダートのつぶしが利かない点はあるにせよ、芝に限定した早熟率でも4.4%とむしろ全体を上回る結果に。後述する種牡馬の4、5歳時勝率に劣る面は否めず、やはり一定の早枯れ傾向が確認できる。

ディープインパクト産駒は16.6%-10.0%=6.6%。エピファネイア産駒と比べて高い数値。とはいえこれは2、3歳時における勝率が異常に高い点を考慮すべきだろう。事実芝GⅠに限れば11.1%-8.4%=2.7%と大きく落ち込んでおらず、複勝率ベースではほぼ変わりない。

長らくディープインパクトと二大巨頭を張ったキングカメハメハ産駒は11.5%-10.8%=0.7%と非常に衰えが小さい。4、5歳時勝率はディープを上回っており、GⅠ勝利も2、3歳時が12勝、4、5歳時が13勝と逆転。トップクラスの産駒も傾向を地で行く好成績を残している。

その他キズナ産駒は10.5%-8.7%=1.8%、晩成のイメージが強いハーツクライ産駒は9.9%-9.1%=0.8%。キズナは怪我の後遺症から古馬シーズンで輝き切れなかったが、産駒たちもディープやエピファネイアほどではないにせよ、やや衰えが見られる。

最後に晩成といえばこの種牡馬、ステイゴールド。7.9%-8.8%=-0.9%と初めてマイナスの値を記録した。大きな故障なしに7歳シーズンまで50戦を走り抜いた無類のタフネスを受け継ぐ子どもたちが多い証拠。驚異的な数字といっていいだろう。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

《関連記事》
【京都記念】ハイブリッド式消去法で苦戦続きエフフォーリアは消し! ドウデュースは買いか消しか
【京都記念】ドウデュースvsエフフォーリア! 注目の一戦は両雄並び立たず?
【京都記念】参考レース振り返り ダービー馬ドウデュースの復帰戦、データは有馬記念組が優勢

おすすめ記事