【桜花賞】主役は女王アルマヴェローチェ 前哨戦挟んだビップデイジーの逆襲も注目
勝木淳

ⒸSPAIA
2番人気の逆転
牝馬クラシック幕開けの桜花賞は第一冠でありながら、最大目標であったりもする。舞台の阪神芝1600mは2歳牝馬GⅠと同じ(※昨年の阪神JFは京都開催)。まずは阪神芝1600mをきっちり走ることに全力投球してくる。一連の流れは読みやすく、ある程度2歳GⅠの勢力図がそのまま通用する。
反面、阪神JF以降レースに出走しないパターンも目立ち、この間に結果を残した馬たちとの力量比較に頭を悩ませる。阪神JF2着ビップデイジーはチューリップ賞3着、4着ショウナンザナドゥはクイーンC9着の後フィリーズレビュー1着。あえて単純な構図に落とせば、フィリーズレビュー組は厳しく、チューリップ賞1、2着に逆転の目が出てくる。
もちろん簡単すぎる話であり、そうはいかない。まして昨年暮れのGⅠは京都だった。阪神ならどう変わるのか。今年はもうひとつ難しい要素が増えた。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【1-4-1-4】勝率10.0%、複勝率60.0%にすぎず、2番人気が【5-1-0-4】勝率50.0%、複勝率60.0%と強い。昨年も1番人気アスコリピチェーノが2着、勝ったのは2番人気ステレンボッシュだった。
名牝たちがその名を残すレースながら、この時点での評価は2番手というケースは思ったほど多く、アーモンドアイ、グランアレグリア、デアリングタクト、ソダシが2番人気で勝利している。
以下、4番人気【0-0-0-10】を除き、8番人気【1-0-2-7】勝率10.0%、複勝率30.0%までは横一線で、10番人気以下【0-0-0-88】。大穴出現こそないものの、伏兵台頭の機は残されている。1番人気が不思議と勝てないGⅠでもあり、ひとつ狂えば穴馬券のチャンスだ。
人気薄激走のチューリップ賞は
登録馬のうち、阪神JFから直行のアルマヴェローチェを除き、前走1着は7頭。このうちトライアルと重賞勝ちは5頭。残るはエルフィンSから直行するヴーレヴー、1勝クラスを勝ったムイ(除外対象)。各トライアル勝ち馬が顔をそろえ、今年もハイレベルな争いになる。
前走レース別では、やはり前走阪神JFが【3-2-0-4】勝率33.3%、複勝率55.6%と強い。今年は1着アルマヴェローチェ、16着ブラウンラチェットが該当。1、2着【3-2-0-2】で1着【2-1-0-0】。アルマヴェローチェが主役であることは動かない。
しかし、くどいようだが、昨年の阪神JFは京都芝1600m開催。同舞台スライドではない点は気になる。同じ関西圏の外回りだが、4コーナーで下りながら直線に入る京都と、最後に急坂が待つ阪神は違う。
といいつつ、昨年の阪神JFは序盤600m34.2で前後半800mは46.5-46.9。ラスト600m34.9といいわけできない真っ向勝負の流れだった。ここに出走していたのは登録馬の中で9頭もおり、実力差はきっちり出た印象はある。9番手から競り合いを抜け出したアルマヴェローチェを下げる理由は見当たらない。
1番人気ビップデイジーが3着、2~6番人気が馬券圏外と波乱だったのがチューリップ賞だ。GⅡ昇格後は【0-5-3-23】複勝率25.8%とかつてほどではないが、馬券検討では外せない。
GⅢ時代も含めた過去10年で見ると、1着【0-2-1-8】、2着【1-2-0-6】、3着【1-2-2-5】と連勝馬こそ出ていないものの、権利獲得組が上位を占める。
一方、人気では1番人気【1-3-1-4】勝率11.1%、複勝率55.6%に2番人気も【1-2-2-3】勝率12.5%、複勝率62.5%と上位が占め、6番人気以下だと【0-1-0-14】。荒れたチューリップ賞はその結果を素直には評価できない。3着ビップデイジーはクリアも、クリノメイやウォーターガーベラは引っかかる。
チューリップ賞は序盤600m35.7、前後半800m48.0-46.0でラスト600m34.2と後半が2秒速い後傾ラップだった。好位に流れが向いたレースであり、クリノメイとビップデイジーには展開利があったといえる。
2着ウォーターガーベラも、引退する河内洋調教師に捧げる武豊騎手のイン強襲という特殊なレースをしたことは確か。これしかないという競馬での結果であり、再現できるかどうかはなんともいえない。
フィリーズレビューは着順に注目。勝った馬は【0-0-0-11】で好走すらなし。スプリント志向の芝1400mを勝った直後、詰まった間隔など難しい面が多い。今年は1週長くなったが、これがどこまで数字の改善につながるのか。
好走は2着【1-0-2-6】勝率11.1%、複勝率33.3%のみ。3着以下も好走すらない。そこまで買えるレースではないが、あえて買うなら2着馬だけでいい。今年ならチェルビアット。前半600m33.2、後半600m35.8の前傾ラップを4コーナー14番手から差してきただけに強調はしづらいところだが。
個別ではなく、データ全体から着順別をとると、前走1着【4-3-4-54】勝率6.2%、複勝率16.9%など3着以内に好走が集中する。逆に4着以下は【0-2-2-42】。たとえ実績があったとしても、直前で好走できないようだとクラシック好走は難しい。
今年は前走大敗の重賞ウイナーも目立つ。ここ一番で復活を。そんなシナリオがそうそう発動しないのもクラシックだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【桜花賞】過去10年のレースデータ
・川田将雅騎手はGⅠで単回収率300%超え 芝1600m戦に強い種牡馬、騎手、調教師を東大HCが調査
・安定のルメール騎手、頭にしたい川田将雅騎手 東大HCが「3歳重賞に強い騎手、調教師、種牡馬」を調査