【有馬記念】1番人気の安定感光る年末の総決算 グラスワンダーが宿敵を破った1999年

緒方きしん

有馬記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

年末の大一番にふさわしいメンバーが集結

朝日杯FSは、ルーラーシップ産駒ドルチェモアが勝利。生産の下河辺牧場にとって、菊花賞を制したキセキと同じ父ルーラーシップ×母父ディープインパクトという配合で、新たな勲章を得たことになる。
さて、今週は有馬記念。トウカイテイオーやナリタブライアン、テイエムオペラオーやゴールドシップといった名馬たちが制してきた、日本競馬界の歴史を象徴する一戦である。

今年も、前年度王者エフフォーリア、天皇賞を制した3歳馬イクイノックス、凱旋門賞帰りのタイトルホルダー、ジャパンカップを制したヴェラアズールなど、今年注目の中長距離馬が集結した大興奮の一戦となった。今回は、本連載の締めくくりとして、有馬記念の歴史を振り返る。

1番人気は安定度○

有馬記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


キタサンブラックとクロノジェネシス、エフフォーリアが人気に応えた一方で、アーモンドアイは9着、レイデオロは2着に敗れている。過去には2015年1番人気ゴールドシップ(8着)、2007年1番人気メイショウサムソン(8着)なども敗れているが、ここ10年では1番人気馬は6勝、3着以内は8頭と、1番人気馬が馬券圏内を確保することが多いGⅠと言える。

昨年は掲示板圏内を上位人気5頭で独占したものの、2020年2着のサラキア(11番人気)、2018年3着のシュヴァルグラン(9番人気)、2017年2着のクイーンズリング(8番人気)など、伏兵の好走も少なくない。2015年ゴールドアクター(8番人気)や2007年マツリダゴッホ(9番人気)など、伏兵評価の馬が勝ち切ることもあるので、出走メンバー全てに注目しておきたい。

また、牝馬の好走も期待できるのが有馬記念。2020年に牝馬によるワンツー決着があったことも記憶に新しいが、ここ3年連続で馬券圏内に牝馬が食い込んでいる。過去にはジェンティルドンナやダイワスカーレットが制している点からも、牝馬の好走はイメージがつきやすい。今年もウインマイティーやイズジョーノキセキ、アカイイトなど魅力的な牝馬が集まったが、特に今年の出走馬ジェラルディーナは母娘での有馬記念制覇がかかる一戦であり、そのレースぶりに注目が集まる。

歴史的グランプリホース、グラスワンダー

有馬記念の親子制覇といえば、シンボリルドルフとトウカイテイオーやハーツクライとリスグラシュー、ディープインパクトとジェンティルドンナ・サトノダイヤモンドなどがあげられるが、仮にジェラルディーナが勝利した場合はそれだけではない記録となる。

ジェラルディーナの母父はディープインパクトであり、父父はスクリーンヒーロー。いずれも、有馬記念馬を輩出している血統である。さらには父父父のグラスワンダーは、有馬記念を連覇した名馬だ。ジェラルディーナの父であるモーリスの牝系には、桜花賞で3着・オークスで2着の名牝メジロボサツがいるが、彼女も有馬記念に出走した経験を持つ。有馬記念に縁の深い名が、血統表に多く連なった。

グラスワンダーが有馬記念を制したのは、1998年と1999年のこと。1998年の1番人気馬は、グラスワンダーと同期のセイウンスカイだった。マル外のグラスワンダーは皐月賞、ダービー、菊花賞への出走権はなくさらに故障を経験し、毎日王冠で名馬サイレンススズカと名勝負を繰り広げるなど秋には存在感を示しつつも毎日王冠5着、アルゼンチン共和国杯6着と連敗を喫する。

有馬記念では、同年に皐月賞・菊花賞を制した同期セイウンスカイに人気を譲り4番人気だったものの、春〜秋の鬱憤を晴らすかのように弾けたグラスワンダーは、3番人気メジロブライトの猛追を凌いで勝利。単勝14.5倍の評価に反発するような強さを見せつけたのだった。余談だが、3着には11番人気ステイゴールドが食い込んだものの、当時は三連単の発売がなかったので大荒れ馬券とまではいかなかった。

そして年が明けてから京王杯スプリングC、宝塚記念、毎日王冠を制したグラスワンダーは、前年覇者として有馬記念に参戦。堂々の1番人気となったが、単勝2.8倍のグラスワンダーに続き単勝3.0倍の2番人気で続いた馬がいた。それが同期のダービー馬、スペシャルウィークである。前年には菊花賞2着、ジャパンカップ3着で休養したものの、年が明けてからは天皇賞の春秋制覇やジャパンカップ制覇など日本の総大将といえる活躍を果たしてきた。唯一その年に落としたGⅠは宝塚記念(2着)で、3馬身差先にいた勝ち馬グラスワンダーへのリベンジに燃えている一戦だった。

レースが始まると、グラスワンダーをスペシャルウィークがマークする展開に。宝塚記念ではスペシャルウィークをグラスワンダーがマークするような形だったのが、その時とは逆の展開にファンが湧いた。両頭が早めに積極的な競馬を見せ、両頭に抜かされる形でライバル対決を見守ったのは、ひとつ下の世代のテイエムオペラオーだった。翌年に完全開花を見せる素質馬を抜き去りライバル2頭が火花を散らしたのが、この1999年有馬記念の最大の見どころだった。ゴール前はまさにどちらが勝ったかもわからないほどの大接戦。ライバル対決を制したグラスワンダーと的場騎手に、ファンは大きな拍手を送った。

ライバルの産駒たちに感動する有馬記念

スペシャルウィークは引退後、種牡馬として活躍を収めた。2009年、2010年と連続で有馬記念2着となったブエナビスタも、スペシャルウィーク産駒である。そして昨年の覇者エフフォーリアもまた、スペシャルウィークの血を引く一頭。

今年もエピファネイア産駒はエフフォーリアをはじめ期待馬が多く、アリストテレスやイズジョーノキセキらは、新たな伝説を刻みそうな1頭である。グラスワンダーもまた、先述の通りスクリーンヒーローらを輩出し、その産駒からは有馬記念の覇者ゴールドアクターが登場している。

他にも父キタサンブラックのイクイノックス、父ゴールドシップのウインマイティーなど、親子制覇を狙う馬が多い。母父シンボリクリスエスも、2002年、2003年と連覇した名馬の血を引くが、アカイイトが該当する。

年末の大一番に向けて各有力馬が仕上げてきた。 ここで活躍した名馬がいずれ名種牡馬、名繁殖として世に名を轟かせる日が来るかもしれない。その日を楽しみにしながら、今年の有馬記念を観戦したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

《関連記事》
【有馬記念】夢のオールスター集結 有馬は「宝塚記念」と「天皇賞(秋)」の勝ち馬が強い!
【有馬記念】過去10年勝ち馬すべて前走4着以内! タイトルホルダー、エフフォーリアは覆せるか
【阪神C】1400mのスペシャリスト大集合! ダイアトニックに注目もロータスランドに好走データあり

おすすめ記事