【有馬記念】過去10年勝ち馬すべて前走4着以内! タイトルホルダー、エフフォーリアは覆せるか

勝木淳

有馬記念インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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有馬記念がくる

2022年もいよいよ有馬記念ウィークを迎える。競馬に親しみ、毎週末のレースにあれやこれやと思いを馳せていると、一年というものが、まさに矢のように目の前を通過していく。

競馬のサイクルは我々の人生と比べ早い。競馬と人生に重なるところは多々あり、競馬から教わる人生訓は数えきれないが、サイクルだけが違う気がする。しかしそれは錯覚でもあり、競馬も人生も同じ365日のできごと。つまりは濃度の違いだったりする。「祭典」というより「お祭り」という言葉がしっくりくる有馬記念は馬券的中よりむしろ、楽しんだもの勝ち。今年も濃く熱く満喫し、ついでに馬券が当たってほしい。データは過去10年間のものを使用する。


過去10年有馬記念人気別成績,ⒸSPAIA


22年古馬芝中長距離GⅠ・6レースの勝ち馬がすべて顔をそろえる総決算。ここに復活を期する昨年覇者エフフォーリアや2着ディープボンド、GⅠ馬アカイイトらが入る。3歳クラシックホースは不在ながら、豪華絢爛な組み合わせだ。

まずは人気の傾向だが、ひと昔前と違い、最近の有馬記念は1番人気が【6-1-1-2】勝率60.0%、複勝率80.0%で堅実。だがその分、2番人気【1-1-4-4】勝率10.0%、複勝率60.0%、3、4番人気ともに【1-1-2-6】勝率10.0%、複勝率40.0%と横一線。上位人気馬を取捨選択するセンスが問われる。また8番人気【1-1-0-8】勝率10.0%、複勝率20.0%以下からポツポツと穴が出る。たまにやってくる有馬記念ボーナスはなんとかつかみとりたいところだ。


過去10年有馬記念年齢別成績,ⒸSPAIA


次に年齢の傾向。3歳が【4-2-2-16】勝率16.7%、複勝率33.3%と優勢。日本ダービー2着からエフフォーリアと同じ軌跡をたどるイクイノックスは最有力で、伏兵にあたる菊花賞2、3着馬ボルドグフーシュ、ジャスティンパレスがどこまでやれるか。古馬は4歳【2-5-1-36】勝率4.5%、複勝率18.2%より5歳【4-3-6-45】勝率6.9%、複勝率22.4%が確率の上ではリードする。エフフォーリア、タイトルホルダー、ジェラルディーナの世代よりコントレイル世代のディープボンド、アカイイト、イズジョーノキセキらが上とデータは示すが、はたしてどうだろうか。


天皇賞(秋)イクイノックス 1.57.5

有馬記念、前走レース別成績,ⒸSPAIA


ここからは秋の競馬を回顧しつつ、それぞれのデータと特徴をつかんでみたい。まずはイクイノックスと大阪杯を勝ったポタジェが当てはまる天皇賞(秋)について。過去10年、前走天皇賞(秋)は【2-2-1-12】勝率11.8%、複勝率29.4%で、1着【1-1-0-1】勝率33.3%、複勝率66.7%、10着以下【0-0-0-3】。3歳天皇賞(秋)制覇は上記の通りエフフォーリアがいる。

今年の天皇賞(秋)はパンサラッサがあのサイレンススズカと同じく1000m通過57.4で飛ばし、正直、これを追いかけなかった先行勢ノースブリッジ、バビット、ジャックドール以下とは別の競馬になった感がある。上がり36.8で粘りこんで2着パンサラッサと4コーナー9番手から上がり32.7で差し切ったイクイノックスの評価は難しい。ひとついえるとすれば、3歳秋を迎え、心身がかみ合ったイクイノックスの破壊力は証明できた。タイトルホルダーが演出する厳しめのラップ構成にも対応できる根拠になる。中山は皐月賞2着があり、イメージより適性は高い。父キタサンブラックは有馬記念3、2、1着。


ジャパンC ヴェラアズール 2.23.7

ヴェラアズール、ボッケリーニの前走ジャパンCは【2-2-5-47】勝率3.6%、複勝率16.1%。1着は【0-1-1-2】複勝率50.0%と勝利なし、3、4着の惜敗馬が勝利した。また10着以下は【0-0-1-17】複勝率5.6%。中3週でGⅠ連勝はハードルが高いか。

ヴェラアズール自身は東京【2-0-1-0】でジャパンCのレース内容の通り瞬発力勝負に強いタイプ。ただジャパンCは後半800m11.7-11.4-11.3-11.5と残り200mまで上昇ラップを3区間描き、かつ最後は失速を最低限に抑える優秀な内容。単純に切れ者と安易な評価は危険。中山芝2500mは3勝クラス・サンシャインS3着。上がり最速を繰り出すも先行2頭を捕まえられなかった。なお、このとき先着を果たしたのがブレークアップだ。


菊花賞 アスクビクターモア 3.02.4

前走菊花賞はアスクビクターモア回避も2、3着ボルドグフーシュ、ジャスティンパレスがいる。菊花賞全体は【3-1-2-7】勝率23.1%、複勝率46.2%と好成績だが、勝ち馬【2-0-2-1】が好走例の大半で、2、3着は【0-0-0-3】。菊花賞敗退、有馬記念Vは18年ブラストワンピース。菊花賞4着から巻き返した。ただそのブラストワンピースも該当するのが前走菊花賞1番人気【3-0-0-2】。菊花賞で主役級でないと、古馬相手の有馬記念を勝つのは難しい。


エリザベス女王杯 ジェラルディーナ 2.13.0

ジェラルディーナ、アカイイトらが当てはまる前走エリザベス女王杯は【0-2-0-18】複勝率10.0%。たまに穴を出すイメージのローテだが、今年は1、4、10、16着馬ともっとも登録数が多い。前走エリザベス女王杯は1着【0-0-0-4】、4着【0-0-0-1】。2着にきた2頭はエリザベス女王杯2、7着馬。正直、判断がつかないローテだ。今年は道悪ながら前半1000m通過1.00.3で後半800m11.8-11.9-12.3-12.2の我慢比べ。勝ったジェラルディーナや4着アカイイトは持久戦で出番があるか。


有馬記念前走着順の壁

近年、もっとも成績がいいのは前走凱旋門賞【1-1-2-3】勝率14.3%、複勝率57.1%。馬券に絡んだ4頭のうち、3頭は既に有馬記念好走歴があった。13年1着オルフェーヴルは2年前の有馬V、14年3着ゴールドシップは前年有馬3着・2年前V、21年3着クロノジェネシスは前年有馬V。今年これに該当するディープボンドは昨年、このデータの例外、有馬記念初出走で2着にきた。またもやという場面はありうる。

昨年有馬記念5着タイトルホルダーはやや微妙になってしまうが、今年の天皇賞(春)、宝塚記念のパフォーマンスをみる限り、現役最強馬は揺らがない。特にグランプリ宝塚記念は1000m通過57.6を追いかけ、後半1000m11.9-11.8-11.9-12.0-12.4で突き抜け、2.09.7。恐ろしい競馬だった。昨年は初コンビだった横山和生騎手。もう迷いはなにもない。


過去10年有馬記念前走着順別成績,ⒸSPAIA


ここで非常にざっくりとしたデータを。前走国内外、クラスを問わず、着順別成績を出した。前走1着【5-3-3-27】勝率13.2%、複勝率28.9%を筆頭に、有馬記念単勝に限るとすべて前走4着以内で、5着以下だった馬は連下までとなる。前走1着はイクイノックス、ヴェラアズール、ジェラルディーナ、ブレークアップ、4着以内はアカイイト、ジャスティンパレス、ボルドグフーシュ。凱旋門賞帰りで敗れたゴールドシップ、クロノジェネシスもこのデータに勝利を阻まれた。エフフォーリア、タイトルホルダーはこのデータを覆せるか。

最後に12月25日クリスマス当日の有馬記念はレース史上、全部で7回。このうち5回は3歳馬が勝利。残り2回は66年「大尾形」こと尾形藤吉調教師が管理する5歳コレヒデ(現在の4歳)と05年ディープインパクトに土をつけたハーツクライ。古馬になって本格化した遅咲きだった。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。


有馬記念インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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