【天皇賞(秋)】主流条件のスピード勝負で「4~5歳」「Kingmambo系」が活躍 有力馬の血統を一挙解説

坂上明大

天皇賞(秋)の注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説:距離延長組向きの追走ペース

3~4歳世代の強豪が集結する今年の天皇賞(秋)。過去10年、出走全馬を均等買いした場合の複勝回収率が42%というように大荒れが少ないGⅠのひとつで、何よりもまずは地力が重要な一戦です。また、世代間の比較においては成長スピードも大切。本記事では血統面を中心に、天皇賞(秋)で強い馬の特徴を整理していきます。

まず、紹介したいデータは年齢別の成績。過去10年の連対馬20頭、3着馬9頭は5歳以下という非常に強い偏りが見られます。スピード勝負になりやすい条件では若駒が強いという傾向があり、このレースもその例外ではありません。ただ、注目したいのは3歳馬の成績で、4~5歳馬と比べるとやや劣勢の印象です。天皇賞(秋)というレースは古馬のマイラーも参戦するため、3歳馬にとっては経験したことのないようなペースを刻むことも少なくありません。そのため、年齢別の序列は「4~5歳>3歳>6歳以上」という感じで、ざっくり覚えておくといいでしょう。

天皇賞(秋)の年齢別成績(過去10年),ⒸSPAIA


天皇賞(秋)の年齢別成績(過去10年)
年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
3歳 1- 1- 1- 9/12 8.3% 16.7% 25.0% 28 32
4歳 3- 6- 4-27/40 7.5% 22.5% 32.5% 50 89
5歳 6- 3- 4-39/52 11.5% 17.3% 25.0% 75 50
6歳 0- 0- 1-29/30 0.0% 0.0% 3.3% 0 5
7歳~ 0- 0- 0-26/26 0.0% 0.0% 0.0% 0 0

また、前走からの距離延長組が強い点も特徴的。先に触れた通り、中盤が緩まないレースラップを刻むことも多く、長距離路線を使ってきた馬には厳しい追走ペースになりやすい傾向にあります。特に今年は逃げ馬が多いため、この傾向はより重要なポイントといえるでしょう。

天皇賞(秋)の前走距離別成績(過去10年),ⒸSPAIA


天皇賞(秋)の前走距離別成績(過去10年)
- 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
距離延長 5- 3- 6-47/61 8.2% 13.1% 23.0% 75 60
同距離 1- 2- 0-26/29 3.4% 10.3% 10.3% 12 19
距離短縮 4- 5- 4-57/70 5.7% 12.9% 18.6% 18 35

血統面では、ディープインパクトKingmambo→キングカメハメハの活躍が目立ちます。東京芝2000mという日本の主流条件ですから、この傾向は当然の結果といえるでしょう。

ただ、より注目度が高いのはKingmambo系Kingmambo→キングカメハメハのラインは芝とダートを問わず、短距離から長距離まで幅広いカテゴリーで活躍馬を出す万能種牡馬で、マイルから中距離でのレコードが出るようなレースパターンではディープインパクトよりも高いパフォーマンスを見せる系統です。

また、現在の日本レコード記録馬を見てみると、芝1600mがロードカナロア産駒のトロワゼトワル、芝2000mがジャングルポケット産駒のトーセンジョーダン、芝2400mがロードカナロア産駒のアーモンドアイと、いずれもNureyevの血を持っていました。

天皇賞(秋)の血統別成績(過去10年/単勝オッズ19.9倍以下),ⒸSPAIA


天皇賞(秋)の血統別成績(過去10年/単勝オッズ19.9倍以下)
血統 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
ディープインパクト 1- 7- 3-18/29 3.4% 27.6% 37.9% 37 85
Kingmambo 5- 0- 3- 9/17 29.4% 29.4% 47.1% 153 90

ハイペース適性という点ではモーリスとクロフネにも注目。両馬ともRobertoを中心に底力に優れた血統を豊富に持ち、特に今年の天皇賞(秋)では注目の血統となりそうです。

血統解説

・イクイノックス
母シャトーブランシュは2015年マーメイドSの勝ち馬。半兄には2021年ラジオNIKKEI賞勝ち馬ヴァイスメテオールがいます。父にキタサンブラックを配し、母父キングヘイローの部分だけが瞬発力を担っているような形。成長曲線も古馬になってから本領発揮といった血統でしょうか。母方に薄くNureyevの血は持ちますが、他のスピード馬と比較すると追走力も成長スピードもやや劣る印象です。ただ逆に言えば、現時点でこれだけの高いパフォーマンスを披露していることに驚きます。

・ジャックドール
母ラヴァリーノはLady Josephine→Mumtaz Mahal系の血を強く受け継ぐ繁殖牝馬で、バネの利いたスピードを産駒に伝えています。本馬は父にモーリスを配し、母から受け継ぐスピードを父の底力で支えている配合形。時計勝負の芝1800~2000m戦がベスト条件で、JRAのGⅠでは天皇賞(秋)が最も向く舞台といえるのではないでしょうか。

・シャフリヤール
母ドバイマジェスティは2010年BCフィリー&メアスプリントを制した短距離馬。全兄には2017年皐月賞と2019年大阪杯を制したアルアインがいます。馬体重500キロ超のアルアインに対して、こちらは450キロ前後の小柄な馬体。これは、父ディープインパクトの影響が強いことを表し、芝中長距離で脚をタメた時の瞬発力は現役屈指のモノを持っています。ただ、近走は緩い流れしか経験しておらず、一気にペースが上がることが課題となりそうです。

・ジオグリフ
母アロマティコは2012年秋華賞と2013年エリザベス女王杯でともに3着。その父がキングカメハメハで、本馬はこのレースと相性のいい血を母方に持っています。Storm Cat系らしい前傾姿勢で、速めのペースが予想される展開も味方しそうです。3歳馬で勝負するならこれぐらいの早熟性も必要でしょう。

2022年天皇賞(秋)の血統注目馬,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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