【菊花賞】皐月賞からダービーの距離延長実績にヒント 春クラシック経験馬・未経験馬それぞれの狙い目を調査

東大ホースメンクラブ

菊花賞・春クラシック出走なし組条件別成績,ⒸSPAIA

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全馬が未経験の3000m

今週日曜、阪神競馬場でGⅠ菊花賞が行われる。皐月賞から始まったクラシック三冠の最終戦となる大一番に、東のトライアル・セントライト記念を勝ったガイアフォース、ダービー3着馬のアスクビクターモア、西のトライアル・神戸新聞杯を圧勝したジャスティンパレス、夏の札幌で長距離戦を連勝中のディナースタなどがエントリーしてきた。

最大のカギは3000mへの対応。現在のレース体系においては、必然的に全馬が未経験の距離となる独特の舞台設定だ。ただでさえ予想のヒントが少なく、加えて今年は65年ぶりに皐月賞・ダービーの連対馬が不在という超レアケースが重なったことで、夏場に条件戦を駆け上がった馬も例年に増して検討の俎上に載せる必要があり、輪をかけて難解な一戦となりそうだ。

今回は「春のクラシック経験馬vs夏の上がり馬」という構図と、距離への対応に関するデータを概観し、週末に向けた予習を進めていこう。

春クラシック経験組vs上がり馬

菊花賞 春クラシック出走歴別成績,ⒸSPAIA


<菊花賞 春クラシック出走歴別成績>
あり【10-14-9-140】勝率5.8%/連対率13.9%/複勝率19.1%
なし【11-7-12-170】勝率5.5%/連対率9.0%/複勝率15.0%
※2001年以降

まずは21世紀の菊花賞において、春のクラシックに出ていた組とそうでない組どちらが優勢なのか、それぞれの成績を確認する。

結論は「ほぼイーブン」。勝利数は「出走歴なし」組が一歩リードも、母数の関係で好走率は「出走歴あり」組が高い。「あり組」はダービーワンツーのジャングルポケット・ダンツフレームがともに沈んだ2001年に全滅したのを最後に、以降は20年連続で馬券圏内を少なくとも1頭は輩出している。

一方で「なし組」が全滅したのも参考21回中、03年、05年、11年、16年の4回のみ。この4回中3回は二冠馬(ネオユニヴァース、ディープインパクト、オルフェーヴル)とクラシック2着馬が出走しており、残る1回の16年にも皐月賞馬ディーマジェスティと、皐月賞3着、ダービー2着のサトノダイヤモンドがいた。今年は前述した通りクラシック上位がダービー3着のアスクビクターモアのみ。上がり馬台頭の余地がありそうだ。

距離延長の予行演習

菊花賞 条件別成績,ⒸSPAIA


<菊花賞 条件別成績>
皐月賞・ダービー両方に出走【10-8-8-77】勝率9.7%/連対率17.5%/複勝率25.2%
ダービーで皐月賞より下の着順【3-5-4-43】勝率5.5%/連対率14.5%/複勝率21.8%
ダービーで皐月賞以上の着順【7-3-4-34】勝率14.6%/連対率20.8%/複勝率29.2%
※2001年以降。「ダービーで皐月賞以上の着順」は同着順含む

次に、春のクラシックに出走歴があった組に限定し、条件別成績を確認する。

この組は参考期間内で10勝を挙げているが、勝ち馬全頭が皐月賞・ダービーともに出走経験があった。一冠目に間に合い、かつ順調にダービーへと駒を進めただけの実績が菊花賞でも重要となるようだ。

皐月賞からダービーへは400mの距離延長があり、秋のさらなる600m延長への予行演習ともいえる。ここで着順を上げる、もしくはキープできた馬がやはり成績優秀だ。回収率も「ダービーで皐月賞以上」:単勝75%・複勝113%、「ダービーで皐月賞より下」:単勝41%・複勝70%と有意に前者が高く、この距離延長をこなした馬を重視したいところ。なお前者で勝った7頭は全てダービーで3着以内。今年の出走馬で条件をクリアするのはアスクビクターモアだ。

ダービーで着順を下げながら菊花賞を勝った3頭は2012年のゴールドシップ、2015年のキタサンブラック、2021年のタイトルホルダーで、全て皐月賞で3着以内に入っており、のちに天皇賞(春)を含む古馬GⅠを複数勝っている。現役最強クラスにまで成長する「外れ値」的な馬でなければ、セオリーに反する勝利は難しいといっていいだろう。

芝2600m戦の勝ち馬は狙える?

菊花賞 春クラシック出走なし組条件別成績,ⒸSPAIA


<菊花賞 春クラシック出走なし組条件別成績>
芝2600m戦勝利実績あり【1-1-4-18】勝率4.2%/連対率8.3%/複勝率25.0%
同0秒1差以上の勝利実績あり【1-1-4-10】勝率6.3%/連対率12.5%/複勝率37.5%
※2001年以降

次に春のクラシックに出走歴がない馬についても同様に確認していく。

毎年のように穴馬として取り上げられるのが芝2600mの条件戦を勝ってきた馬。現在のレース体系で経験できる最長距離とあって食指も動きやすいが、勝ち馬を出したのは2001年のマンハッタンカフェが最後。実に20年、菊の栄冠から遠ざかっている。

ただし、2600mで0秒1差以上をつけての勝利があった馬は、単回収率106%、複回収率156%とともに黒字域。さらにその勝利時と同騎手での参戦なら【1-0-2-3】と半数が好走。昨年もディヴァインラヴが6番人気ながら3着に頑張った。

今年はこれにディナースタのみが合致する。唯一の勝ち馬であるマンハッタンカフェとは芝2600mをマクりで勝った点が共通しており、久しぶりに一気の戴冠があるかもしれない。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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