【菊花賞】トライアル好走のジャスティンパレスとボルドグフーシュ、アスクビクターモア中心 上がり馬ならセレシオン
勝木淳
ⒸSPAIA
今年は異例の菊花賞
春二冠の連対馬不在。春の好走馬で菊花賞登録はダービー3着アスクビクターモアただ1頭。加えて同馬は実績的に一枚抜けていたセントライト記念で上がり馬ガイアフォースに敗れ、2着。牡馬クラシック最終章の菊花賞は稀にみる大混戦。最後の一冠をどの馬が獲得してもおかしくない。
舞台は昨年に続き阪神芝3000m。昨年はタイトルホルダーが圧巻の走りを見せ、今年の活躍を予感させたが、そのタイトルホルダーはセントライト記念13着からの巻き返しと異例のパターンでもあった。当然、データ分析はしっかりしつつも、各馬の適性をしっかり見極めたい。阪神芝3000mは京都よりステイヤー適性が必要になるからだ。データは過去10年間のものを使用する。
1番人気は【5-0-2-3】勝率50.0%、複勝率70.0%。かつては波乱が多かった菊花賞だが、近年は比較的堅調。それでも今年のように春の実績馬が出走しないケースが目立ち、序列は春の通りとは限らない。2番人気は【0-2-0-8】複勝率20.0%と未勝利。また7番人気【1-0-2-7】勝率10.0%、複勝率30.0%までは好走する確率が高く、安易に絞るのも危険だ。今年の1番人気はなんとなくタイトルホルダーとキャラが被るアスクビクターモアだろうか。人気すら読みにくい。
神戸新聞杯から感じるジャスティンパレス、ボルドグフーシュのステイヤー資質
大混戦ではあるが、実は菊花賞はデータ上の好走ゾーンがかなり狭いGⅠ。これを根拠に絞ってしまうのは危険な気もしなくもないが、基本的に好走候補は多くない。
前走クラス別成績では前走GⅡが【9-9-5-99】勝率7.4%、複勝率18.9%と目立つ。ここ以外では前走2勝クラス【0-1-5-35】複勝率14.6%ぐらいで、前走GⅡ、つまりトライアル以外から菊花賞を勝ったのは18年フィエールマン(ラジオNIKKEI賞2着)しかいない。
前走GⅡの内訳は神戸新聞杯【7-4-4-50】勝率10.8%、複勝率23.1%、セントライト記念【2-4-1-46】勝率3.8%、複勝率13.2%がほとんど。近年は間隔が詰まるトライアルは嫌われる傾向にあるが、菊花賞は別で、とにかくトライアル出走組が強い。
神戸新聞杯は今年も中京芝2200mが舞台。伏兵がペースを握り、前半1000m通過1.00.0と緩みのない流れ。大半が出走権をかけたレースらしく、後半の仕掛けは早く、残り800mから11.6-11.4-11.2-12.1。じわじわとペースが上がり、最後は我慢比べ。
勝ったジャスティンパレスと2着ヤマニンゼストはインコースを通り、スタミナのロスを最低限に抑え、末脚を温存した。なかでも好位から運んだジャスティンパレスはスタミナも証明。兄アイアンバローズは3000m超で強く、古馬になって本格化、いわばステイヤーの典型。ジャスティンパレスも春二冠は連続9着。春のもどかしさと秋の変身ぶりはステイヤー感が強い。上位2頭と比べると、大外から差してきた3着ボルドグフーシュも互角以上だ。
神戸新聞杯の着順別成績は1着【4-0-1-2】勝率57.1%、複勝率71.4%を筆頭に3着以内【7-4-2-13】勝率26.9%、複勝率50.0%で4着以下は【0-0-2-37】複勝率5.1%。まずは上位3頭を評価。なかでも1、3着ジャスティンパレスとボルドグフーシュは3000mで変わり身も期待できる。
一方、セントライト記念はどうだろう。こちらも伏兵がハナを奪い、1番人気アスクビクターモアが3番手につけ、実質レースを支配する形。前半1000m通過1.00.3とスローにはならず、こちらも後半800m11.7-11.6-11.5-12.2とアスクビクターモアの動きに合わせじんわりとラップ上昇、この動きにガイアフォースが呼応する形になり、最後の直線で叩き合いに持ち込み、アタマ差差し切った。実績最上位のアスクビクターモアが得意とする形を差したガイアフォースは評価したい。
セントライト記念の着順別成績は神戸新聞杯ほど上位着順優勢ではなく、1着【1-0-0-6】勝率、複勝率14.3%、2着【0-2-1-4】複勝率42.9%、6着以下【1-1-0-17】勝率5.3%、複勝率10.5%。巻き返したのは昨年のタイトルホルダー。こちらは直線で進路がなく、力を出せなかったという事情もあった。
本番も実績最上位のアスクビクターモアはとにかくダービーの内容が秀逸。評価は下げられない。一方、この10年で唯一、セントライト記念と菊花賞を連勝したのはキタサンブラック。ガイアフォースの父であり、息子は父と同じ道をたどれるか。注目だ。
条件戦からくる上がり馬はセレシオン
GⅢから来るパターンは上記フィエールマンのみで、フェーングロッテンの前走新潟記念は【0-0-0-2】。17年ウインガナドルが新潟記念4着から本番16着、18年ブラストワンピースは新潟記念1着から本番4着に敗れた。
夏の上がり馬にあたる前走2勝クラスは【0-1-5-35】。データ範囲外ではデルタブルース、スリーロールスがいるが、この10年で勝ち馬はいない。春二冠未出走馬の菊花賞制覇はトーホウジャッカル、キセキ、フィエールマン、ワールドプレミアの4例。フィエールマン以外は前走神戸新聞杯3着以内。新興勢力であってもトライアル経験がほしい。とはいえ、前走2勝クラスは2、3着なら十分ありうる。
そこで前走2勝クラスの距離別成績を出すと、前走2200mが【0-1-3-3】複勝率57.1%と目立つ。トライアルと同じ距離で、400で割れない、いわゆる非根幹距離。主流ではない距離だけに、ここが強いのは不思議。昨年牝馬ながら3着にきたディヴァインラヴもこのパターン。好走はすべて前走勝利した馬で、今年で言えばセレシオンが当てはまる。
一方、注目を集める上がり馬ディナースタの2600mは【0-0-1-4】複勝率20.0%、ドゥラドーレスの2000mは【0-0-0-10】。連下で面白いのはこの2頭ではなく、セレシオンだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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