【菊花賞】最後の一冠を制すのは!? ガイアフォース、アスクビクターモア、ジャスティンパレスの有力馬3頭をデータで徹底比較

高橋楓

菊花賞・有力馬3頭のデータ比較,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

春の実績馬VSトライアル勝ち馬!

1998年11月8日、第59回菊花賞当日。この日の朝の高揚感は今でも忘れられない。武豊騎手に初の日本ダービー制覇をプレゼントしたスペシャルウィーク。皐月賞馬セイウンスカイ。3強の一角としてクラシックを盛り上げた世界的良血馬キングヘイロー。そして、個人的に贔屓にしていたエモシオン。当時はガラケー全盛期。今のようにネットで何でも手軽に調べられる時代ではなかった。だからこそ、頭で想像した記憶が強く思い出に残っているのかもしれない。

さて、今週は春のGⅠ馬不在の中で最後の一冠・菊花賞が行われる。今回も上位人気が予想される3頭を比較してみたい。

菊花賞 有力馬3頭の各成績,ⒸSPAIA


皐月賞馬ジオグリフは天皇賞(秋)に登録、日本ダービー馬ドウデュースは凱旋門賞に挑戦し、春のクラシック勝ち馬が不在となった一戦。どの馬にも当然チャンスがある。ここではセントライト記念の勝ち馬で連対率100%のガイアフォース、春のクラシックで5、3着と掲示板を守ったアスクビクターモア、2歳時にホープフルSを2着し、神戸新聞杯を制したジャスティンパレスにスポットをあててみたい。まずは通算成績から振り返ってみよう。

ガイアフォース[3-2-0-0]
アスクビクターモア[3-1-3-1]
ジャスティンパレス[3-1-0-2]

ガイアフォースは小倉のデビュー戦でドウデュースにクビ差惜敗。それでも後にラジオNIKKEI賞を勝ち、新潟記念で古馬に交じって3着だったフェーングロッテンに3馬身差をつけていた。その後、無理せずレースを使われ2勝目をあげた国東特別では2000mを1分56秒8で駆け抜け、後続に7馬身差をつけるレコード勝ち。前走のセントライト記念の勝ち方を見ても、堂々主役をはれる存在だろう。

そのセントライト記念で2着だったアスクビクターモアは、皐月賞5着、日本ダービー3着と出走馬の中では実績上位だ。常に先行し粘り切る走りは安定感がある。デビュー戦ではジオグリフをおさえ1番人気に支持されたほどの馬。最後の一冠は是が非でも手にしたい。

ジャスティンパレスは春のクラシック戦線ではともに9着だったが、2歳時にはホープフルSで2着だった。前走の神戸新聞杯では馬体の大きさこそ変わらなかったが、身が入ってきた印象を受けた。次にこれまでの重賞成績を見てみよう。

ガイアフォース[1-0-0-0]
アスクビクターモア[1-1-1-1]
ジャスティンパレス[1-1-0-2]

ガイアフォースは前走が重賞初挑戦。アスクビクターモアは弥生賞を勝っている。ジャスティンパレスは前走が初の重賞制覇だった。

3頭共にGⅡ勝ちの実績があり、出走予定馬の中では重賞実績上位といえる。ガイアフォースとジャスティンパレスは阪神競馬場でともに1戦1勝。アスクビクターモアはここまで8戦を東京、中山競馬場でしか走っておらず、初の関西遠征となる。当日、パドックの状態を注意して見ておきたい。

3頭の距離実績を探る!

菊花賞 有力馬3頭の各タイム別成績,ⒸSPAIA


次に、3000mという長丁場に対しての適性を見ていきたい。ここでは芝2400m以上の実績に絞ってみていく。

ガイアフォース[未出走] 平均出走距離2000m
アスクビクターモア[0-0-1-0] 平均出走距離2000m
ジャスティンパレス[0-0-0-1] 平均出走距離2100m

まずガイアフォースから見ていこう。これまで2000m戦を走ることが多く、前走のセントライト記念の2200mが最長経験距離。曾祖母のクリスマスローズは潜在能力が抜群の快速馬で、1つ上の姉エリザベスローズはセントウルSの勝ち馬だ。

祖母ロージーチャームはダンスインザダーク産駒でデビュー当初は芝の長い距離で期待されたが、勝ち星はダート1400m。繁殖実績としては川崎ダート2100mのロジータ記念を制したルイドフィーネ、そしてこれまた川崎のダート2100mで行われる戸塚記念を制したナターレがいる。そのナターレから誕生したのがガイアフォースだ。

これまでの産駒達は地方競馬のダート1400mから1600m戦で勝ち星を挙げているが、ガイアフォースは芝の中距離戦で活躍中だ。母方の血統を見ると距離が長い気もするが、父キタサンブラックもセントライト記念を制しながら、それまで走った最長距離だった日本ダービー14着が嫌われ、菊花賞当日は5番人気だった存在。芝2000mでレコード勝ちするなどスピード能力は証明済み。今回はレース展開が鍵になりそうだ。

アスクビクターモアの母カルティカはフランスの芝2100mで行われるGⅢフィユドレール賞で3着など、芝のマイルから中距離路線で善戦した馬。産駒のケマーはイギリス、フランスのマイルGⅠを制するなど活躍した。母父レインボークエストは欧州でもパワーとスタミナに優れた血統だけに、そこまで距離の心配はいらないだろう。ポイントはこれまでのレースが先頭を追いかけるレーススタイルだったこと。どこで息を入れられるかにかかってきそうだ。

血統面で一番魅力的なのはジャスティンパレス。母パレスルーマーは1200mから1700m戦で5勝をあげているが、母となってから大活躍。パレスマリスはアメリカのクラシックレースであるベルモントSを制するなど大レースを戦い続け種牡馬入り。2017年に誕生したオルフェーヴル産駒のアイアンバローズは昨年のステイヤーズS、今年の阪神大賞典をそれぞれ2着、天皇賞(春)は5着と長距離戦線で活躍している。ジャスティンパレスもデビュー戦以降2000m以上のレースを走り続けてきた。最長距離は日本ダービーの2400m戦だが、600m延長される菊花賞でも不安はないだろう。

3頭共にラスト3Fの末脚ベストタイムでは大差がなく、前々につけるアスクビクターモアをガイアフォースとジャスティンパレスが見る様な形が予想され、直線での余力勝負となりそうだ。

3頭の父親&騎手の長距離実績を探る!

菊花賞 有力馬3頭の阪神・芝2400m以上の各成績,ⒸSPAIA


最後に3頭の種牡馬と騎乗予定騎手の阪神・芝2400m以上の成績を調べてみた。ここでは内回り、外回りを合算した阪神芝の長距離適性を見ていく。期間は2012年10月1日から2022年10月14日までとする。

ガイアフォース・父キタサンブラック[0-0-0-2]
アスクビクターモア・父ディープインパクト[24-28-26-146]
ジャスティンパレス・父ディープインパクト[24-28-26-146]

キタサンブラック産駒はデビューしたばかりでまだサンプルが少ないので度外視。ディープインパクト産駒は当該条件で勝利数1位となっており、複勝率も34.8%と安定している。2位のハーツクライ産駒が[15-26-19-132]、3位のステイゴールド産駒が[15-13-9-95]と母数が多いとはいえ、率も上位だ。次に騎乗予定騎手の成績を見てみよう。

ガイアフォース・松山弘平[13-7-5-62]
アスクビクターモア・田辺裕信[1-1-1-5]
ジャスティンパレス・鮫島克駿[2-0-1-38]

勝利数の全体トップは福永祐一騎手で[24-17-10-39]。5勝以上している騎手の中で複勝率1位はC.ルメール騎手[13-11-7-17]の64.6%となっている。

ガイアフォースに騎乗予定の松山弘平騎手は勝利数の順位は3位タイの好成績。1番人気の騎乗機会が9回しかなく、逆に単勝100倍以上の馬に13回騎乗していることを考えると、善戦していると言える。アスクビクターモアに騎乗予定の田辺裕信騎手は、美浦所属で騎乗機会こそ少ないが8戦中3回馬券圏内にきており、心配はなさそうだ。鮫島克駿は8年目で当該条件では、勝率4.9%、複勝率7.3%とこの成績は少々寂しい。昨年はローカル戦での活躍が目立ったが、今年は阪神競馬場で一番多くの勝ち星をあげている。

データ比較は以上になる。群雄割拠の今年の菊花賞。新たなヒーロー誕生を楽しみに待ちたい。


菊花賞・有力馬3頭のデータ比較,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。

《関連記事》
【菊花賞】トライアル好走のジャスティンパレスとボルドグフーシュ、アスクビクターモア中心  上がり馬ならセレシオン
【富士S】 3歳マイル王ダノンスコーピオンかセリフォスか、大混戦の一戦! 穴候補は5歳勢2頭
「勝負強い」騎手ランキング! タイム差なしでの勝ち越し数60以上の2名は?

おすすめ記事