【ローズS】瞬発力指向で「ディープインパクト」内包馬が上位独占 有力馬の血統を一挙解説

坂上明大

2022年ローズS注目の血統,ⒸSPAIA

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ローズSの血統傾向

秋華賞に向けての関西のステップレース・ローズS。2020年から中京芝2000mを舞台に行われており、阪神芝1800m時代との求められる適性の違いが予想のポイントのひとつとなっています。中京芝2000mのローズSに強い血統は何かを整理していきましょう。

中京芝2000mはスタートしてすぐに1コーナーを迎えることから序盤のペースが遅くなりやすい傾向にあります。ただ、向正面に向いてからはすぐにペースが上がり、その後はゴールまで淀みない流れで進行する、スピードの持続力が重要なコースです。同コースで行われる古馬重賞の平均ラップを確認するとペースのイメージがつくのではないでしょうか。

・中京芝2000mの古馬重賞の平均ラップ(過去10年)
12.7-11.2-12.6-12.4-12.2-12.1-12.0-11.7-11.4-12.0

しかし、3歳牝馬限定戦であり、GⅠのステップレースでもあるローズSでは微妙に流れが異なるようです。前半が遅く、向正面に向いてから徐々にペースが上がる点は同じですが、下に記載したように残り800~600mと残り600~400mのラップ差が0.5秒以上もあります。つまりはラスト3Fの意識が強い瞬発力勝負のレースといえるでしょう。

・ローズSのレースラップ(過去2年)
2020年:12.6-10.8-12.3-12.7-12.5-12.4-12.1-11.6-11.3-11.6
2021年:13.1-10.9-12.3-12.7-12.2-12.0-12.2-11.6-11.3-11.7

瞬発力指向の強い芝中距離戦で強い血統といえば、やはりディープインパクト。近年の日本競馬を牽引した大種牡馬であり、非凡な瞬発力と豊富なスタミナは孫の代になっても強い影響力を持っています。中京開催のここ2年は馬券圏内に好走した6頭全馬がディープインパクトの血を内包。当然、今年も上位を独占するとは限りませんが、重要な血統であることは間違いないでしょう。

ディープインパクト内包馬の成績(過去2年),ⒸSPAIA


・ディープインパクト内包馬の成績(過去2年)
レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
ローズS 2- 2- 2-11/17 11.8% 23.5% 35.3% 64 271

ただ、桜花賞に強い北米血脈を掛け合わせたスピード型のディープインパクト産駒ではスタミナ面に不安があるため、Nureyev≒Sadler's Wellsトニービンなど欧州の中長距離血統との組み合わせが理想形です。実際、過去2年の馬券圏内馬6頭のうち4頭がNureyev≒Sadler's Wellsの血を持ち、うち2頭はトニービンの血も兼備していました。

注目馬の血統解説

・アートハウス
母パールコードは2016年秋華賞2着馬。本馬は父にスクリーンヒーローを配した晩成型中距離馬で、オークス時の幼さが目立つ馬体から徐々に大人の馬体へと成長を見せています。瞬発力勝負では少々分が悪いですが、前半のペースが緩む点は魅力のひとつでしょう。

・サリエラ
母サロミナは2012年独オークス馬で、全姉サラキア(2020年府中牝馬S)や3/4同血の兄サリオス(2019年朝日杯FS)の妹である良血馬。父ディープインパクト譲りの瞬発力とドイツ牝系から受け継ぐ豊富なスタミナが持ち味で、適性や成長曲線はサラキアに似ているでしょう。本格化はまだ先ですが、ローズSへの適性はなかなか高そう。注目の一頭です。

・パーソナルハイ
母パーソナルダイアリーは2014年に芝のデルマーオークスを制し、ダートのクイーンエリザベスⅡ世チャレンジCでも3着と好走した芝ダート兼用のオールラウンダー。本馬は全兄のインワンシティングがダ1000mで初勝利を挙げており、自身も筋肉質なスピードタイプの馬体をしています。スタミナ面では劣るため、直線に向くまでにどれだけリードを取れるかがポイントです。

・ラリュエル
母母シルバーレーンは1988年愛オークス3着馬で、母カウアイレーンは2010年クイーンS3着馬。半兄には2022年ドバイゴールドCなどを制したステイフーリッシュがおり、ディープインパクト産駒の本馬も芝中距離向きの小柄な牝馬に出ています。春のマイル戦ではスピード負けしましたが、2000m戦のここなら勝ち負けに加わってきても驚きません。

ディープインパクト内包馬の成績(過去2年)と注目馬,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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