【朝日杯FS】「前走上がり最速33秒台で1着」は複勝率66.7% データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年朝日杯フューチュリティステークス、データで導く穴馬候補3頭イメージ,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の阪神メインは朝日杯フューチュリティステークス。2歳マイル王者を決するGⅠ競走だ。

“最重要ステップ”のサウジアラビアRCを勝ったゴンバデカーブースこそホープフルSに回ったが、ジャンタルマンタル、シュトラウス、ダノンマッキンリーの3頭はなかなかに強力。ここに割って入る馬は現れるのか。今回も様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。


今週も「早生まれ」狙いが炸裂? オーサムストローク

まず1頭目はオーサムストローク。勝ち上がりに3戦を要したが、未勝利戦、ベゴニア賞と連勝して本番に臨む。

先週も触れた通り、一般的に「2歳GⅠは早生まれが有利」とされる。実際、それを根拠にピックアップしたアスコリピチェーノ(2月生まれ)が阪神JFで優勝。今週も同じパターンをコスってみたい。

朝日杯FS 生月別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の朝日杯FSについて生まれ月別成績を見ると、2月以前が【6-7-4-34】複勝率33.3%、複回収率93%に対し、3月以降は【4-3-6-99】複勝率11.6%、複回収率54%。阪神JFよりハッキリと「早生まれ有利」の傾向が出ている。

2月以前生まれのうち、特に狙い目となるのが「前走時に馬体重が増えていた馬」【4-5-3-17】複勝率41.4%、単回収率146%、複回収率125%。元々早生まれのアドバンテージを持った馬が、使われながらさらに馬体を成長させていればアツい。

人気のシュトラウス(1月生まれ、前走時+6キロ)もいいが、穴ならオーサムストローク(2月生まれ、前走時+6キロ)が面白い。ベゴニア賞の勝ち時計1:37.0は極めて遅いが、1200m通過1.15.1の超スローペースでは無理もない。むしろ中2週で本番に向かう上で、ダメージを残さないレースになった点をポジティブに解釈したい。


「上がり最速33秒台でV」なら複勝率66.7% タガノエルピーダ

2頭目は牝馬のタガノエルピーダを取り上げる。阪神JFにも登録していたが無念の抽選除外。しかし、それに備えて朝日杯FSへの登録も怠っていなかった。

朝日杯FS 前走上がり別成績(阪神開催の過去9年),ⒸSPAIA


直線の長い阪神外回りに移ってからというもの、朝日杯FSはシンプルに「前走でいい末脚を使った馬が好走するレース」になった。阪神での過去9年、前走上がり最速【5-7-5-32】複勝率34.7%、複回収率111%に対し、同2位以下【4-2-4-88】複勝率10.2%、複回収率42%。実にシンプルだ。

そして上がりは順位だけでなく、タイムも速ければ速いほどいい。「前走上がり最速33秒台で勝った馬」が【4-3-3-5】複勝率66.7%、単回収率168%、複回収率140%。細かいことは無視して、馬柱の前走着順と上がりだけを見れば的中にほぼたどり着ける。こんな美味しい話があっていいのだろうか。

該当馬はサトミノキラリ、タガノエルピーダの2頭だけ。特に注目したいのは後者だ。

新馬戦は京都内回りのマイル戦で先行策から上がり33.5秒の末脚を繰り出して勝利。ラストは11.0-11.0と秀逸、負かした2着馬クランフォードも次走を快勝した。実は同コースの2歳戦を1:34.3以下、上がり33秒台で勝った馬はGⅠ・4勝ラヴズオンリーユーとこのタガノエルピーダしかいない。

あのグランアレグリアでも敗れた牝馬の朝日杯FS挑戦、その壁は決して低くない。使う予定だったレースを弾かれて1週スライドという調整面の難しさも課題となる。しかし、それを突破しても不思議ないと思えるほど、初戦のインパクトは強烈だった。「タガノ軍団」が誇る名牝タガノレヴェントン、その最高傑作になる可能性を十分に秘めている。


「過小評価」エイシンヒカリ産駒は枠次第で◎ エンヤラヴフェイス

最後はエンヤラヴフェイス。デイリー杯2歳S2着もさることながら、新馬勝ちの内容が素晴らしい。2歳7月以前、マイル以上のレースで後半1000mが58.0秒以下だったのは、この馬の新馬戦を含め全7例しかない。勝ち馬はワグネリアン、グランアレグリア、セリフォス、ジオグリフ、リバティアイランド、ボンドガール、そしてエンヤラヴフェイスとなる。まるで名馬の宝石箱だ。

データ面では同馬の父エイシンヒカリに着目する。代表産駒はエイシンスポッターやエイシンヒテン、条件馬ながら力を見せているニシノライコウなど。社台ノーザン系の生産馬がほぼいないこともあって地味な印象かもしれないが、産駒は人気以上に走っている。

エイシンヒカリ産駒の条件別成績(JRA・平地),ⒸSPAIA


JRA平地通算での複回収率は102%と、条件を問わず黒字計上。総じて過小評価傾向にあり、見かけたら買っておきたい種牡馬だ。なかでも“買い条件”を二つ示しておくと、「芝の1600m以下」で単回収率116%、複回収率123%、「5~8枠」で単回収率126%、複回収率140%となっている。

エンヤラヴフェイス自身、デビュー2戦目の新潟2歳Sは3枠3番から他馬を気にするような形でズルズルと後退し、7着敗戦を喫した。父同様、馬群に入れずに気分よく走らせる競馬が合うのだろう。金曜の枠順発表で外枠を引くようなら評価をグンと上げたい1頭だ。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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