【2歳馬ジャッジ】ラスト2F、勝ちっぷりは満点評価 今後の飛躍が楽しみな凱旋門賞馬の全弟シンエンペラー
山崎エリカ
ⒸSPAIA
11月1週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は凱旋門賞馬の全弟シンエンペラーや例年素質馬が揃う百日草特別を制したアーバンシックなどが出た、11月4、5日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
11月4日(土)東京1R 優勝馬 ソニックライン 指数-14(ダート)評価AA
デビューからの2戦は芝で連続3着。ただ初戦の勝ち馬はパワーホールで2戦目はのちに札幌2歳Sを制するセットアップ。戦った相手が強すぎて運がなかったとも言える。今回はデビュー3戦目で初ダートの一戦となった。
レースは5番枠からスタートし、五分の出だったが、行きっぷりが良く楽に2列目の最内を確保して追走。3~4角で逃げ馬の直後まで上がって4角出口で前2頭の外に出ると、残り300mで2番手に上がった。そこから逃げ切りを図るロジアデレードに並びかけて激しい一騎打ち。ゴール寸前で同馬を競り落とし、半馬身差でゴールした。
3着以下には10馬身差をつけており、ダ1600mの走破タイム1分37秒3もかなり優秀。記録した指数も古馬1勝クラスを勝てるものだった。ラスト2Fは12秒3-12秒3。かなり速い時計で走りながら最後まで減速しなかったことも価値が高い。
名牝ソングラインの半弟にあたり、血統的にもかなり奥がありそう。今後のダート路線で大活躍が期待できる。今回2着のロジアデレードもかなり優秀な指数をマークしている。よほど疲れが残らない限り、未勝利クラスはすぐに突破するだろう。
11月4日(土)東京5R 優勝馬 シンエンペラー 指数-6 評価AAA
4番枠からトップスタートを決めて早々と1馬身前に出たが、そこからすっと抑えて好位の最内を追走した。道中は前にスぺースを作って追走し、3~4角でそのスペースを潰して4角出口で逃げ馬の外。直線序盤で外からほかの馬が上がってフラつき、一瞬進路が狭くなりかけたが、あっさり抜け出した。そこからは後続を引き離していき、そのまま減速することなく3馬身差で押し切った。
ラスト2Fは11秒1-11秒0。一流馬と評価すべき数字が出た。最後の直線で抜け出してから外に切れ込むようにヨレた点はマイナス評価だが、他は満点評価ができる勝ちっぷりだった。
本馬は凱旋門賞、仏ダービーの勝ち馬ソットサスの全弟にあたる超良血馬。矢作芳人厩舎所属だけに順調ならば海外遠征をするようになるだろう。とにかく今後の飛躍が楽しみな馬。期待込みで評価AAAとする。
11月5日(日)東京1R 優勝馬 デビッドテソーロ 指数-11(ダート)評価A
ここまでキャリア4戦すべて芝で6、3、8、6着という成績。今回は初ダートの一戦となった。3番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速くあっさり2列目の内を追走。3~4角で逃げ馬の外から並びかけていき、4角出口では先頭列。残り300mくらいで逃げ馬をかわして先頭に立つと、そのまま後続を引き離し、2着に5馬身差、3着に8馬身半差つけて圧勝した。
まさにダートで一変。指数は1クラス上で勝ち負けになるものを記録した。行きっぷりの良さからもよほどダートが合うのだろう。ダート路線で今後の上昇がかなり期待できる。
11月5日(日)東京2R 優勝馬 ニシノティアモ 指数-6 評価B
前走の新潟芝1600mの新馬戦はフルゲート18頭立ての緩みない流れ。本馬は外枠だったが、上手く中団最内に入れ、インから差す競馬で2着だった。最後の直線序盤で進路がなく、ラスト1Fで外に持ち出しての2着だったが、着差がバラバラになっての入線だったことから消耗度が高そうな一戦だった。
今回はデビュー2戦目、2番人気に支持されていたが、疲れが残っている可能性もあり、過信はできないと見ていた。レースは8番枠から好スタートを決め、行きっぷりよく2番手の外を追走。どこからでも動ける態勢で進めた。最後の直線序盤でスパートした逃げ馬に食らいついて、ラスト1F手前でかわして先頭に立つとそのまま押しきった。
新馬戦よりも前でレースを進めて堂々と押し切ったことは価値が高く、記録した指数も未勝利戦としてはなかなか良い。今思うと新馬戦では最後の直線で内に包まれたぶん、能力を出し切っていなかったのだろう。今後なかなか面白い馬になりそうだ。
11月5日(日)東京6R 優勝馬 グランドハーバー 指数-6 評価A
5番枠から五分のスタートを切って、先団馬群からやや離れた単独7番手を追走。3~4角は最短距離を回り、4角出口で中目に誘導された。直線序盤ではスパートのタイミングで先団馬群が上手くバラけた。中目をロスなく進み、ラスト1F手前で内のインマイポケットに並びかけた。そこからは激しい一騎打ちとなり、ゴール手前で同馬が内にモタれたところを振り切ってクビ差で勝利した。3着以下には7馬身以上の差をつけてのゴールだった。
芝1400mの走破タイム1分21秒5はかなり優秀。新馬戦としては指数も優秀だった。緩みない流れとなり、ラスト2Fは11秒7-11秒9とやや減速。それでも走破タイムの速さのわりには減速度が小さかったと言える。
今後すんなり伸びるかはやや微妙なところもあるが、優秀な指数で新馬勝ちしたことは素質の高さの証。今後が楽しみだ。また2着馬のインマイポケットも好指数を記録しており、当然ながら注目すべきだ。
11月5日(日)東京9R 優勝馬 アーバンシック 指数-13 評価AA
札幌芝1800mの新馬戦ではやや出遅れ、好位直後の中目からの競馬。超スローペースから最後の直線では迫力ある瞬発力比べを制して優勝した。今回はデビュー2戦目、4番枠から少しアオったところを内の馬にぶつけられ、最後方からの追走となった。
3角手前で外から一列ポジションを上げたが、4角を回っても前とはかなりの差。直線序盤で大外に持ち出すとジワジワと前との差を詰め、ラスト1Fでグンと伸び、最後に逃げ粘るマーゴットソラーレを差し切ってクビ差で勝利した。
ラスト2Fは11秒5-11秒3。それなりに速い走破タイムで走りながら最後まで加速できたことは価値が高い。指数もなかなか良い。粗削りで当てにならない面もありそうだが、さすが例年素質馬が揃う百日草特別。今年も今後が楽しみになる優駿を輩出した。
11月4日(土)京都2R 優勝馬 ポッドロゴ 指数-10(ダート)評価B
デビューからの2戦は芝で3、4着。今回はデビュー3戦目で初ダートの一戦。レースは大外11番枠から好スタートを決めて、二の脚の速さで前2頭に並びかけたが、1角でじわっと行かせて3番手を追走。芝の2戦は気合いをつけて位置を取りに行っていたが、ダートだと無理なく好位で流れに乗っていた。
最後の直線では4角出口で上がってきたクリノフィガロとの叩き合い。これを制して2馬身半差で勝利した。3着馬は2着クリノフィガロから10馬身も引き離されており、1クラス上でも通用域のなかなか優秀な指数だった。初ダートでこの走りなら、ダート路線で今後の上昇が期待できる。
11月4日(土)京都3R 優勝馬 イフェイオン 指数-7 評価AA
前走の京都芝1600mの新馬戦は前残りの流れを中団から最短距離を回り、最後の直線でもインを突いて鋭い脚を見せての3着だった。今回は10番枠から好スタートを決めて、好位直後の外を追走。前走よりも前目で先団を見ながらの競馬。4角で前の馬の外から手応え良く上がっていき、そこからスムーズに脚を伸ばし、堂々の2馬身差の完勝だった。
走破タイムの1分33秒3はかなり優秀なもの。1クラス上でも通用域の指数で勝利した。ラスト2Fは11秒3-11秒5。速い走破タイムのわりに減速度が小さい点は評価できる。新馬戦とは全く違う形で好走したことも良い。今後の重賞戦線で活躍が期待できる。
11月4日(土)京都4R 優勝馬 キープカルム 指数-3 評価B
新馬戦は後にデイリー杯2歳Sを勝利するジャンタルマンタルの2着だった。今回は4番枠から好スタートで行きっぷり良く先頭に立ったが、外からハナを主張する馬を行かせて2番手を追走。2角で外から上がってきたインファイターに進路をカットされ、3番手に下がったがそれでもしっかりと折り合った。道中では内からオルドヴァイが上がって3列目を追走した。
3~4角では外からじわっと前との差を詰め、4角で早々と2番手に上がると、ラスト1F標で先頭に立ち、そのまま抜け出して1馬身半差で完勝した。指数はそこまで高いものにはならなかったが、新馬戦よりも前目から堂々と抜け出した点、不利がありながらもしっかり走れた点は評価できる。まだ余力を感じさせる勝利だっただけに、今後の上昇が期待できそうだ。
11月4日(土)京都6R 優勝馬 エイカイソウル 指数-10(ダート)評価A
4番枠から好スタートを決め、そこから促して位置を取りに行って3番手の外を追走。3角までは余裕たっぷりに追走していたが、4角手前でやや置かれそうになってムチが飛び、大丈夫かと思わせる場面もあった。ところが直線を向いて勢いがつくと一気に先頭に立ち、ラスト1Fからどんどん後続を引き離して独走。2着以下に1.8秒差をつけて大差勝ちした。
走破タイムは同日同距離のポッドロゴが勝利した2歳未勝利戦を0.1秒差上回る1分54秒3。道中のペースがこちらの方が速かったぶん、指数はポッドロゴと同等の評価となったが、かなり優秀だ。
ラスト2Fは12秒6-12秒7。他馬が最後の直線で急失速する中で最後までほとんど減速しなかったことも評価できる。11月を迎え各場でダートでの好指数勝ち馬が散見される。ここからJRA2歳ダート路線も大きく動きが出てきそうだ。
11月5日(日)京都5R 優勝馬 ミスタージーティー 指数-3 評価A
4番枠からやや出遅れ、1角では最後方。そこから位置を上げ、3角では後方3番手の中目につけた。3~4角では手応えが悪く、これは厳しいかとも思われたが、直線序盤で外に出るとフラフラしながらも鋭い伸び。最後はきっちり差し切ってクビ差で勝利した。
ラスト2Fは11秒2-11秒5。マズマズか。なんだか三冠馬ミスターシービーを連想させるような名前と脚質で人気が出そうな馬。きょうだいに活躍馬がズラリの良血馬だけに、すんなりとはいかないかもしれないが、いずれ上の舞台に上がっていくだろう。
11月5日(日) 福島6R 優勝馬 オーケーバーディー 指数-15(ダート)評価A
2番枠から好スタートを決め、最序盤は内の馬を行かせて2番手で折り合おうとしていたが、二の脚の速さで1角で無理なく先頭に立った。そこからペースを落としてマイペースの逃げ。3角手前から後続馬たちは促されている中で本馬は持ったまま、4角では後続が離れていった。直線では完全に独走となり、2着馬に2.9秒差をつける大差勝ちだった。
ラスト2Fは12秒1-12秒2とほとんど減速せず。指数は古馬1勝クラス勝利レベルを突破し、2勝クラスでも通用域の優秀なものだった。今後かなり期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)シンエンペラーの指数「-6」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.6秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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