【2歳馬ジャッジ】桜花賞路線で推せる一頭 タガノエルピーダの走破タイム、ラスト2Fを高評価

山崎エリカ

10月2週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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10月2週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はともにラスト2F11秒0-11秒0をマークしたタガノエルピーダやルカランフィーストなどが出た、10月14、15日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

10月14日(土)京都4R 優勝馬 フォーエバーヤング 指数-9(ダート)評価AA
2番枠からまずまずのスタートを切ったが、二の脚で置かれて位置が下がり、そこから1番枠の馬の外に出して好位の直後を追走。外に出せるタイミングがなく、向正面では内目で包まれた。手応えに余裕がありながらも4角では前に馬がズラリ。そこでも外に出せない状況だったが、直線序盤で馬の間が開くと一瞬で抜け出した。そこから一気に後続を突き放して4馬身差の圧勝だった。

ラスト2Fは12秒8-12秒2。最後の直線で抜け出してから、他馬とはフットワークの回転スピードが違っており、やはり映像通りというべきか、ラスト1Fが急加速で速い。

砂を被っても問題なく、最後の脚も文句なしで、見たところまだ余裕たっぷり。当然、ダートで今後の活躍が期待できる馬ではあるが、あの瞬発力ならいずれ芝路線に転向しても面白そう。その際は新馬戦でダートだった経験が、その後の上昇度に生きてきそうだ。

10月14日(土)京都5R 優勝馬 タガノエルピーダ 指数-7 評価AAA
2番枠からトップスタートを決めた後に外にヨレたが、すぐに立て直して2列目の最内を確保。向正面では逃げたクランフォード後ろの3番手を追走。ペースは同日同距離の2歳未勝利戦と比べてかなり遅かった。同馬は手応え十分に4角を回り、直線で一気に加速して後続を引き離しにかかったが、本馬はこれに食らいついていく。後続を引き離しての2頭の追い比べはやはり追う側が有利で、最後は3/4差で差し切った。

ラスト2Fは11秒0-11秒0と驚きの数字。京都芝は東京芝よりも時計が掛かっており、その価値は高い。先述の通り道中のペースがかなり遅かったが、走破タイムは1分34秒3で、同日同距離の2歳未勝利戦と比べて0.2秒速かった。これも高く評価できるポイントだ。今回の上位2頭タガノエルピーダ、クランフォードはともに牝馬。桜花賞路線で楽しみな新星が誕生した。

10月14日(土)京都8R 優勝馬 ジュンゴールド 指数-13 評価AA
8月小倉の新馬戦ではラスト2F12秒2-11秒7で勝利。ラスト1Fの数字はそこまで驚くものではなかったが、映像の最後の加速感、ゴール板を過ぎてもさらに加速していくようなスピード感は素晴らしく高い評価をした。

今回はデビュー2戦目、ここはまず負けないと見たが、5頭立てと少頭数になり、相手もそこまで強くなかったので断然の1番人気に支持され、馬券的には全く面白くなくなってしまった。

レースは3番枠から好スタートを決めてすぐに抑えたが、鞍上はペースが遅いと見たようで、向正面で一気に先頭に立って逃げる競馬。結果的にはこの判断が正解で、3馬身半差の圧勝だった。

今回で記録した指数はコスモス賞を圧勝したエコロヴァルツにやや劣るが、なかなか優秀なもの。新馬戦と全く違う内容の競馬で結果を残せたことも今後の収穫となった。重賞戦線で楽しみが膨らむ勝利だった。

10月15日(日)京都3R 優勝馬 サトノシュトラーセ 指数-8 評価A
前走の新馬戦は勝ち馬ショウナンラプンタが出遅れたが、外を回り長く良い脚を使って2馬身半差をつけるという、勝ち馬の強さが目立った一戦。本馬は最後の直線で内目をうまく突いての2着だった。今回は相手関係もあり、1番人気に支持されたがそこまで楽観視はできないと見ていた。

レースは2番枠からまずまずのスタートを切って2番手を追走した。向正面半ばで外からワーキングアセットが並びかけたところで、先頭のエンムスビとともにそれに抵抗していく形に。3角手前でワーキングアセットがコーナーロスを嫌って控え、そこでは隊列は変わらなかった。3~4角でエンムスビとの差を徐々に詰め、4角で並びかけると直線入り口で先頭。他馬よりも1.3倍は大きく見せる馬体が後続をジワジワと引き離し、5馬身差で圧勝した。

今回は新馬戦から一転して横綱競馬。1クラス上でも通用域の優秀な指数を記録した。レース内容は新馬戦から大きく進化。キレがやや足りない印象もあるが、スタミナは相当ありそうだ。昇級後も面白い存在となるだろう。こうなると新馬戦でこの馬に勝利したショウナンラプンタが次走どんな走りを見せるのかにも注目したい。

10月15日(日)京都4R 優勝馬 シュークリーム 指数-7 評価AA
好スタートから二の脚で楽にハナを主張。序盤でリードをしっかり取ったことで、他馬が積極的に競りかけてはいかず、ペースが遅い逃げ。これにより十分に脚が溜まり、最後の直線を向くと一気に後続を引き離した。そのまま悠々と伸びて7馬身差の圧勝だった。

ラスト2Fは11秒0-11秒3。逃げて独走状態だったことを考慮すれば、最後はある程度の余裕を持たせたものと推測され、悪くない。むしろ高く評価できるのは、自身の上がり3Fタイム33秒8のほう。同日の2歳OP・もみじSの上位馬たちと差のない数字とだった。

今回の走破タイム1分10秒0はかなり平凡。短距離の新馬戦を好指数で圧勝した馬はどうしても疲れが残りやすいが、今回の平凡なタイムならそれは気にしなくて良いだろう。今後、順当な上昇が期待できそうだ。いずれにしても新馬戦で逃げきり勝ちした馬は次走で大きく飛躍することもあるだけに、要警戒だ。

2023年10月2週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


10月14日(土)東京3R 優勝馬 ソンシ 指数-4 評価A
7番枠から好スタートを決め、前を行く2頭を外からマークする形で好位の外を追走した。直線序盤では楽な手応えで先頭列に並びかけていったが、ラスト2Fでは内のエリカマルゲリータも懸命に抵抗。ラスト1Fで気合いを入れられるとフットワークの回転が上がり、最後は1馬身差をつけてゴールした。

ラスト2Fは11秒2-11秒3。ラスト1Fの減速も少なく、なかなか優秀と言える。レースぶりは優等生で上を目指せそうだ。またこのレースの2着馬エリカマルゲリータは本馬に終始プレッシャーをかけられる形で苦しい競馬。未勝利クラスはすぐに突破できるだろう。

10月14日(土)東京5R 優勝馬 ルカランフィースト 指数-6 評価AAA
11番枠から好発を決めたが、9番枠のボーモンドの方が速く、その2番手を追走した。同馬が淡々としたペースで逃げたことでやや離されたが、隊列は変わることなく最後の直線へ向かう。逃げるボーモンド、追うルカランフィースト。ラスト2F標地点から両馬ともに気合いがつけられ加速開始。2頭の長いマッチレースが始まった。

ラスト1F、両馬ともに苦しくなってくるあたりだが、そこからさらにがんばりを見せた。最後は追うものの強みでルカランフィーストが制し、3/4馬身差をつけてゴールした。

ラスト2Fは11.0秒-11秒0。素晴らしいラップタイム。長い追い比べだったことが数字にも出ている。苦しくなったところから、さらにファイトした2頭はかなり強そうだ。

昨年の東京芝の新馬戦、ソールオリエンスとレーベンスティールのマッチレースよりはやや迫力に欠ける感じだが、素晴らしい加速比べだったことは間違いない。3着オルドヴァイもなかなか強そう。少しオマケでAAA評価とする。

10月14日(土)東京9R 優勝馬 イーグルノワール 指数-18(ダート)評価A
8月の新潟ダ1800mの新馬戦をラスト2F12秒6-12秒6で逃げ切って勝利し、現2歳世代のダート新馬戦としては最上級の評価をしたライジンマル。今回はデビュー2戦目、距離は1600mと前走よりも短くなったが、強いことは間違いない。ただ、新馬戦の当欄でも記したように、最後の直線で見せた機械のような等速のフットワークから、やや瞬発力不足を感じさせたのも確かだった。

今回は鞍上がその弱点を補おうと、緩みないペースで逃げる競馬を選択。その判断は間違っておらず、最後の直線ではいったん逃げ切り態勢に持ち込んだが、ゴール目前でイーグルノワールに捕まり、惜しくもクビ差2着に敗れた。やはりライジンマルはもっと距離があった方が良さそうだ。

勝利したイーグルノワールはデビュー戦が芝だったが、前走初ダートの未勝利戦をラスト2F13秒4-13秒0と加速しながら勝利した。今回はダート2戦目の上昇力と瞬発力を生かしての差し切り。現時点で現2歳世代のダートで最高指数を記録した。今後もダートのトップ級の一頭として活躍してくれそうだ。

10月15日(日)東京2R 優勝馬 ホーエリート 指数-5 評価A
7月の福島芝1800mの新馬戦で差のない3着だった馬。そのレースでは1着トレミニョンと2着ティンクの社台ファーム生産馬2頭のレースセンスの良さが光った。トレミニョンは次走、強敵が揃った札幌2歳Sで5着、ティンクはすぐに未勝利勝ちして芙蓉Sで4着。新馬戦時に差をつけられての4着だったゴードンテソーロもすでに未勝利を突破しており、ホーエリートにとってここは負けられない一戦だった。本馬は今回デビュー2戦目で、ペッレグリーニと人気を分け合う形で1番人気に支持された。

雨降りの重馬場。4番枠から好スタートを決め道中3番手でレースを進め、4角で2番手に上がった。逃げるペッレグリーニは直線を向いてもフットワークが軽快で引き離しにかかり、ホーエリートはそれを追う。後続を大きく引き離してのマッチレースとなったが、やはり追うものが強く、ハナ差でホーエリートが勝利した。

このレースはそれまで逃げたことがある馬が1頭もいないどころか、前走で先行している馬もおらず、最序盤が遅くなった。しかし、馬場状態を考えれば全体のペースは遅くなく、スタミナを要求されたレースで、今回の上位2頭は距離が延びればなかなか楽しめそうだ。

10月14日(土)新潟5R 優勝馬 トニーテソーロ 指数-8 評価A
11番枠から好ダッシュし、押してハナを主張。ダートに切り替わるまでに1馬身のリードを取り切ると、そこからコントロールして、ダ1200mのわりに息を入れながら逃げることができた。最後の直線を向いて追い出されると、後続をジワジワと引き離していく。結果は7馬身差の圧勝だった。

ラスト2Fは12秒3-12秒1。これはかなり高く評価できる。半兄スズハロームは、未勝利勝ち時が5馬身差の圧勝で1クラス上の指数を記録したが、その後は凡退。そして1勝クラス勝ち時が、3勝クラス勝ちレベルの指数で圧勝。ところが昇級戦では凡退と、かなりのムラ馬ぶりを見せている。兄弟で似たところが出るなら、こちらも一戦燃焼型で当てにならないところがあるかもしれない。しかし、秘めた能力は高く、今後の活躍が楽しみだ。

10月15日(日)新潟1R 優勝馬 ジャスパーノワール 指数-9 評価A
前走の小倉芝1200mの新馬戦は2番人気に支持されたが、スタートから3頭雁行の先行争いが長く続き、3~4角で一番外を回って直線で失速。6着に敗退した。

今回はデビュー2戦目、1番枠から五分のスタートだったが、枠の利を生かして先手を取ることに成功すると緩みないペースを刻んだ。直線を向いてもその逃げ脚は衰えず、2着に3馬身半差、3着以下には7馬身半以上の差をつけて圧勝した。

指数は1クラス上のものを記録。前走で厳しいペースを経験していたことが今回に繋がったのだろうが、とにかく強かった。森秀行厩舎の馬で今後は成績にムラが出そうだが、今回の指数から考えると最終的にはオープンで活躍する馬になっていくだろう。

10月15日(日)新潟5R 優勝馬 ワイドラトゥール 指数-4 評価A
18頭立ての新馬戦、そんな中でも1番人気の支持を受けた。レースは10番枠から好発を決め、いったん好位からすっと下げて先団馬群からやや離れた6番手で折り合う、センス十分の競馬。3~4角の外から徐々に進出し、直線でさらに外に進路を取った。直線半ばであっさりと先頭。そこから後続を引き離し、2着に2馬身半差、3着以下に5馬身半以上の差をつけて完勝した。

かなり強さを感じさせる競馬ぶり。自身の上がり3Fタイム34秒5はこの日の新潟芝ではなかなか評価できる数字。今後、かなり期待できそうだ。

2023年10月2週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)タガノエルピーダの指数「-7」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.7秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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