【高松宮記念】2019年に”レース史上最高”三連単449万円超え 波乱のスプリントGⅠを「記録」で振り返る(訂正)
緒方きしん

ⒸSPAIA
三連単449万馬券が飛び出した2019年
今週は高松宮記念が開催される。春のスプリント王者決定戦で、過去にはキングヘイローやビリーヴ、オレハマッテルゼ、ロードカナロアといった快速馬たちが勝利をあげてきた。近年は非常に波乱傾向が強いGⅠでもあり、穴党にとっても楽しみな一戦となっている。
今回はそんな高松宮記念について、現在のレース名に改称された1998年以降の記録を振り返る。
高松宮記念における三連単配当ランキングは下記の通り。
1位 44974.7倍 ミスターメロディ→セイウンコウセイ→ショウナンアンセム(2019年)
2位 27845.6倍 ナランフレグ→ロータスランド→キルロード(2022年)
3位 6682.8倍 ファストフォース→ナムラクレア→トゥラヴェスーラ(2023年)
4位 5464.5倍 スズカフェニックス→ペールギュント→プリサイスマシーン(2007年)
5位 2177.2倍 モズスーパーフレア→グランアレグリア→ダイアトニック(2020年)
なお、最も低配当となったのはカレンチャン→サンカルロ→ロードカナロアで決着した2012年の59.3倍である。三連単の配当が100倍以内となったのは2012年を含めて3度のみ。また、配当トップ5のうち4戦が2019年以降という点も見逃せない。
セイウンコウセイ&ショウナンアンセム、伏兵評価の6歳馬2頭が好走
2019年の勝ち馬ミスターメロディは2015年生まれの『マル外』馬。デビューから4戦連続ダートで使われていたが、初めての芝レース、かつ初の重賞挑戦となったファルコンSで勝利を挙げる。
そこから1年以上勝ち星から見放されたが、4歳で挑戦した高松宮記念で勝利。一気にGⅠ馬への仲間入りを果たした。結局それ以降は勝利を挙げることなく引退となったが、スプリンターズSでも2度の4着があるなど、当時における現役屈指の快速馬だったことは間違いない。
その2019年・高松宮記念が同レース史上最も波乱の決着となったのは、2着に12番人気セイウンコウセイ、3着に17番人気ショウナンアンセムと人気薄だった6歳馬2頭が食い込んだことによるもの。セイウンコウセイは2017年に同レースを制している実績馬だったが、直近3走がいずれも2桁着順となっていたことで人気を落としていた。
ショウナンアンセムはGⅠ・GⅡ未出走馬で、GⅢ戦績も10着→15着→15着→5着といまひとつ。ただ、マイル路線からスプリント路線に変更した初戦(2019年・オーシャンS)が5着と、飛躍の兆しは見えていたと言える。これに加え、新コンビとなった藤岡康太騎手による内で我慢する好騎乗も光った。
快速女王グランアレグリア、飛躍の第一歩となった2020年
2022年の勝ち馬ナランフレグは8番人気の勝利。2着は5番人気ロータスランド、3着は17番人気キルロードが食い込んだ。重馬場での一戦だったが、重馬場での勝利経験があるロータスランドが上位に進出。ゴールドアリュール産駒のナランフレグは重賞未勝利ながら強い勝ち方を見せた。
ナランフレグの前走・オーシャンSは振り返ればハイレベルなメンバー構成。高松宮記念3着のキルロードが出ていただけでなく、同年スプリンターズS勝ち馬ジャンダルム、翌年の高松宮記念勝ち馬ファストフォースも出走していた。
モズスーパーフレアが勝利した2020年は、15番人気クリノガウディーが1着入線も進路妨害で4着に降着。2着にはグランアレグリアが物凄い末脚で食い込んできた。グランアレグリアはそこから短距離女王として一時代を築いていく。モズスーパーフレアは前年の高松宮記念15着からのリベンジを達成。牝馬でのワンツー決着となった。
最重量の勝ち馬マッドクール
昨年は540kgという雄大な馬体を誇るマッドクールが勝利。馬体重540kgは高松宮記念における歴代勝ち馬で最重量であるだけでなく、馬券圏内においても最重量である。高松宮記念3着以内の馬体重ランキングは以下の通り。
1位 540kg マッドクール(2024年1着)
2位 530kg ブラックホーク(2001年2着)
3位タイ 524kg エアロヴェロシティ(2015年1着)、シンコウフォレスト(1999年3着)
5位タイ 522kg ナックビーナス(2018年3着)、ペールギュント(2007年2着)
※レース名改称前の1200m戦だった高松宮杯も含めると、最重量は1996年3着のヒシアケボノで560kg
マッドクールは前走比18kg増での出走と、前走からの増減の大きさでもトップ。エアロヴェロシティはセン馬、ナックビーナスは牝馬でランクインとなった。ちなみに最軽量は2001年にブラックホークに勝利したトロットスターの436kgである。
馬体重ランキングの上位はマル外がズラリ
マッドクールのデビューは3歳1月。当時で既に520kgという馬体を誇り、出走馬でも最重量となっていた。翌年の同時期には536kg(シルクロードSで3着)となっていたが、4歳冬の香港遠征から5歳春の高松宮記念までの間に急成長を遂げた。昨年末の阪神Cでも542kgで2着など、その美しい馬体と実力は健在だ。
マッドクール、ブラックホーク、シンコウフォレストはマル外、エアロヴェロシティは外国馬であるため、内国産馬としてはナックビーナスとペールギュントの522kgが最重量となる。
ペールギュントは母が桜花賞2着馬ツィンクルブライド、甥にはミッキースワローがいる良血馬。ディープインパクト世代の活躍馬で、朝日杯FSで3着、デイリー杯2歳Sやシンザン記念で勝利など早くから実績を残す。
古馬になってからは重賞での好走から遠ざかってしまっていたが、4歳秋に芝2000mのオープン競走・オパールSを勝利。京都金杯12着、中山記念13着などを挟んで一気に距離短縮して挑んだ高松宮記念での2着好走だった。
近走苦戦が続いていたことから単勝人気は13番人気と伏兵評価だったため、1着が1番人気スズカフェニックス、3着が2番人気プリサイスマシーンにもかかわらず、上述の三連単ランキングで4位に食い込む波乱を呼んだ。
様々な血統馬が激突する高松宮記念。今年はどのような背景を持つ、どのような馬体の名馬が勝利をあげるのか──。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。
※「クリノガウディーと同じく藤沢厩舎のグランアレグリア」と記載していましたが、正しくは、クリノガウディーが藤沢則雄厩舎所属で、グランアレグリアは藤沢和雄厩舎所属です。お詫びして訂正いたします。3月24日18時30分
《関連記事》
・【高松宮記念】「香港スプリント組」「ペアポルックス」「ナムラクレア」に熱視線 ママコチャには気になるデータ
・東大HCが中京巧者を徹底検証 ダートはキタサンブラック産駒と外枠の浜中俊騎手に注目
・【高松宮記念】過去10年のレースデータ