【富士S】逃げない牝馬が好成績 条件満たし得るナミュールとエターナルタイムに注目
佐藤永記
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わざわざ富士Sを選ぶ牝馬は強い
今年の富士Sは登録こそ13頭とやや少ないが、昨年3月以来の復帰戦になるステラヴェローチェや、今年のNHKマイルC覇者シャンパンカラーの秋初戦、7歳馬ユニコーンライオンが5歳時の条件戦以来のマイル戦など、個々に取り上げても話題が多いメンバーとなった。そんな多彩なメンバーで開催されるレースなのだが、歴代の出走馬を見渡すと牝馬の出走が少ないことに気づく。
富士Sが重賞となって25回、出走頭数はのべ403頭を数えるが、牝馬はたったの29頭だけなのだ。さらにいえば、2012~2017年は6年連続で牝馬の出走がなかったほど、このレースは基本的に牝馬は避けるレースなのである。
この理由は明白。前後の重賞にはともにGⅡの府中牝馬SとスワンSがあり、エリザベス女王杯やマイルCSに向かう馬にとって有力な選択肢が他にあるためだ。特にエリザベス女王杯のステップになっている府中牝馬Sは、マイルCSに向かう牝馬の前哨戦として選ばれることも多い。
そういった背景があるにもかかわらず、わざわざ牡馬混合の富士S出走を選択した牝馬の成績は、かなりよい傾向にある。
過去25回で牝馬は【3-3-3-20】勝率10.3%、複勝率31.0%。直近10年では【2-1-2-5】勝率20.0%、複勝率50.0%とさらに跳ね上がっており、率でみれば過去25回で牡馬の倍、直近10年では3倍以上の数字となっている。
牝馬の結果が良くなっている要因としては、2020年に富士SがGⅡへ格上げされたことで牡馬の出走レベルも上がっているのに、それでもGⅡの府中牝馬ではなく富士Sを選ぶだけあって、レベルの高い馬が馬が多かったからだろう
逃げ馬でなければより強烈に
過去10年での牝馬の傾向を見ると、馬券圏外だった馬は競走除外を除くと人気薄か逃げた馬である。
馬券圏外だった例は次の通り。
2022年 スマートリアン(他馬に蹴られて競走除外)
2021年 ロータスランド(10着) 逃げ馬
2020年 スマイルカナ(10着) 逃げ馬
2020年 シーズンズギフト(12着) 逃げ馬
2019年 メイショウオワラ(8着) 16番人気
2018年 デンコウアンジュ(16着) 11番人気
※2020年は2頭で逃げ争い
逆に馬券圏内だった5例は全て「逃げなかった5番人気以上の馬」であった。全25回まで遡れば2011年に6番人気2着アプリコットフィズ、1999年に13番人気3着エイダイクインなど、5番人気以下でも好走例があるが、それでも逃げ馬で馬券に絡んだ例はない。
牝馬で「4番人気以内かつ逃げ馬以外」なら、過去25回で【2-2-1-2】複勝率71.4%と、かなり高い確率で馬券になっていることは覚えておきたい。
J.モレイラ騎手が騎乗予定のナミュール
そんな注目の牝馬だが、今年は2頭が出走登録している。まずは人気上位が想定されるナミュールだ。今年のGⅠではヴィクトリアマイル7着、安田記念16着だが、ヴィクトリアマイルでは序盤にソダシが内に寄った影響で位置取りを悪くし、安田記念でも直線でシャンパンカラーに寄られた影響で進路を失うという明確な敗因がある。昨年のオークス3着、秋華賞2着馬で、今年は同コースの東京新聞杯でアタマ差の2着と、条件に問題はない。なにより今回の鞍上はJ.モレイラ騎手へ乗り替わりとなっており、明確に「勝ちに来た」感が強い。
もう1頭の牝馬はエターナルタイムだ。6月の3勝クラス・多摩川Sを勝ってオープン入り。関屋記念に出走予定だったが夏負けで回避し、放牧で回復させて富士Sに照準を合わせてきた。過去7戦で東京が6戦、新潟外回りが1戦と、直線の長いコースを選んで出走している。唯一の懸念点は今回がオープン初戦&重賞初挑戦であることだ。
ちなみに重賞になってから富士Sに「前走条件戦の牝馬」が出走した例は一度もないのだが、実は牡馬セン馬を含めて「前走条件戦」だった馬の成績は【1-1-3-20】で複勝率20.0%。古い例になるが1998年に勝ったエアジハードや、直近だと2014年3着のレッドアリオンなどが該当しており、案外走れている。出走数は少ないのだが、あまり評価を下げなくてもよさそうだ。
思い切ってナミュールとエターナルタイム、この牝馬2頭を軸にした馬券作戦が面白そうである。
<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。
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