【富士S】安田記念大敗は好走のサイン、シャンパンカラー最有力 侮れない存在は初マイルのソーヴァリアント

勝木淳

2023年富士ステークスに関するデータ,ⒸSPAIA

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GⅡ昇格後の変化とは

GⅢからGⅡへ格上げされた2020年以降、21年ソングライン、22年セリフォスと着実にのちのマイルGⅠ馬を輩出してきた。スピードと持続力のバランスがとれないと勝てない東京マイルでのパフォーマンスは、本格化の予兆でもある。

今年はNHKマイルCを勝ったシャンパンカラー、4着ダノンタッチダウンら3歳と、ナミュール、イルーシヴパンサーなどのマイル重賞常連組に、マイル戦初出走のソーヴァリアント、キラーアビリティと多彩なメンバーがそろった。富士Sで本格化を感じさせる馬は出てくるのか。注目しよう。データはGⅢ時代を含め、過去10年分を使用する。

富士Sの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【4-1-0-5】勝率40.0%、複勝率50.0%、2番人気【3-0-2-5】勝率30.0%、複勝率50.0%をはじめ、勝ち馬は5番人気以内。複勝圏内も6番人気以下は確率を落とし、比較的堅調な傾向がある。GⅡ昇格後はさらに堅く、穴は21年9番人気2着サトノウィザード、10番人気3着タイムトゥヘヴンぐらい。上位人気拮抗が基本線だ。

富士Sの年齢別成績,ⒸSPAIA


今年も注目を集める3歳は【4-1-3-30】勝率10.5%、複勝率21.1%で、GⅡ昇格後の3年では【2-1-2-7】勝率16.7%、複勝率41.7%とさらに上昇する。

一方、古馬は4歳【4-4-2-17】勝率14.8%、複勝率37.0%、5歳【2-4-5-32】勝率4.7%、複勝率25.6%で年齢が若いほど確率があがる。ただし、GⅡ昇格後は4歳【1-1-0-7】勝率11.1%、複勝率22.2%、5歳【0-1-1-12】複勝率14.3%とトーンダウンする。

ソーヴァリアント、マイル路線で本格化へ

年齢の傾向をみると、GⅡ昇格以降は顕著に若い馬が優位になった。シャンパンカラー、ダノンタッチダウンがデータ上では優勢で、4歳ナミュール、レッドモンレーヴ、キラーアビリティがギリギリ、5歳ソーヴァリアント、イルーシヴパンサーらは少し苦しい。

富士Sの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別成績は前走国内GⅠ【4-4-3-18】勝率13.8%、複勝率37.9%から確認する。前走安田記念は【2-3-0-4】勝率22.2%、複勝率55.6%と相性がいい。4、5着【1-1-0-0】、6~9着【0-1-0-4】、10着以下【1-1-0-0】と凡走組の巻き返しもある。今年は6着レッドモンレーヴや10着以下だったイルーシヴパンサー、シャンパンカラー、ナミュールまで圏内だ。

前走NHKマイルCは【0-1-1-5】複勝率28.6%で、3歳優勢のわりにそのベストマイラー決定戦との相性はそこまでよくない。1着【0-1-1-2】、4着以下【0-0-0-3】なので、4着ダノンタッチダウンには気になるデータだ。

富士Sの前走GⅡ、GⅢでの着順別成績,ⒸSPAIA


ではGⅠ以外の重賞を走った馬について、ざっくり着順別成績を出してみる。1着は【1-0-0-5】勝率、複勝率16.7%と重賞連勝狙いは案外、凡走もある。一方、2着【1-2-0-7】勝率10.0%、複勝率30.0%、3着【2-0-1-7】勝率20.0%、複勝率30.0%と惜敗組がよく、掲示板以内だった馬は概ね前向きになれる。6~9着【0-1-0-16】複勝率5.9%、10着以下【0-2-2-24】複勝率14.3%は激走もあり得るが、確率的にはアテにならない。

札幌記念3着ソーヴァリアント、新潟大賞典5着キラーアビリティは好走データに一致する。どちらも中距離からの転戦だが、前走重賞かつ距離短縮は【3-2-2-33】勝率7.5%、複勝率17.5%。特に前走GⅡの距離短縮は【2-0-2-7】勝率18.2%、複勝率36.4%で、ソーヴァリアントがマイルで再浮上する可能性は高い。オルフェーヴル産駒の5歳秋といえば、ラッキーライラック、マルシュロレーヌが飛躍したシーズンでもある。ソーヴァリアントもここで本格化のきっかけをつかめるか。

富士Sに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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