【菊花賞】データ上はソールオリエンスが一歩リード 札幌記念2着のトップナイフもチャンスあり
勝木淳
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ソールオリエンスとタスティエーラ 同じ「二冠」でも対照的な歴史
クラシック三冠最終戦の菊花賞に皐月賞馬とダービー馬がそろうのは、二冠馬を除けば2000年エアシャカールとアグネスフライトが最後だ。つまり今年は23年ぶり、21世紀に入りはじめて皐月賞馬とダービー馬が菊花賞で二冠を争うことになる。
二冠という視点でみると、皐月賞と菊花賞を奪取した例は1970年以降でも74年キタノカチドキ、85年ミホシンザン、87年サクラスターオー、98年セイウンスカイ、00年エアシャカール、12年ゴールドシップとそれなりにいるが、ダービーと菊花賞となると、73年タケホープまで遡らないといない。タケホープも、43年に達成した牝馬のクリフジ(オークス、ダービー、菊花賞の変則三冠達成)も皐月賞は未出走だった。
前例多きソールオリエンスと、達成すれば50年ぶり、三冠完走馬としては史上初となるタスティエーラ。ダービーと菊花賞の二冠を目指したアグネスフライト、ジャングルポケット、ワンアンドオンリーはいずれも菊花賞で敗れた。ただ、データを予想に用いる人間にとって禁句かもしれないが、前例が多ければ勝ちというわけではない。
ダービー馬の直行なし
日本ダービーからの直行もグレード制導入後の1984年以降でもわずか5例しかなく、ダービー馬の直行はない。そして菊花賞勝利はおろか、3着以内もない。オークスから秋華賞への直行とは真逆の現象といえる。そんな非主流ローテで挑み、50年ぶりの偉業を目指すタスティエーラが勝つようなら、その概念すら変えることになる。データは阪神開催の21、22年を含め、過去10年分を使用する。
三冠にリーチをかける馬が出現しない限り春二冠を分けあった馬が出てこない、という状況を踏まえた上で人気別成績をみていこう。1番人気は【4-0-2-4】勝率40.0%、複勝率60.0%だが、クラシックホースに限ると、14年9着ワンアンドオンリー、20年1着コントレイルの2頭しかない。今年はタスティエーラかソールオリエンスが1番人気濃厚なので、この数字はあてにならない。
2番人気【1-2-0-7】勝率10.0%、複勝率30.0%も春クラシック勝ち馬に限ると、16年4着ディーマジェスティ、17年7着アルアインの2頭しかいない。どちらも菊花賞で凡走している点は気になるものの、1、2番人気を皐月賞馬とダービー馬がわけ合う状況はデータ期間中にはなく、このデータから1番人気優位とは結論づけられない。
伏兵陣は10番人気以下【0-1-2-87】複勝率3.3%を含め、どこからでも入れる。1~5番人気以内の決着は、エピファネイアの13年、キタサンブラックの15年、コントレイルの20年の3回しかなく、1~3番人気での決着はオルフェーヴルの11年以降ない。
ステイヤーの可能性ならトップナイフ
登録はフルゲート未満の17頭だが、タスティエーラ、ソールオリエンスのほかにもGⅡ・2勝サトノグランツや重賞ウイナー3頭、ダービー3着ハーツコンチェルト、札幌記念2着トップナイフなどタレントはそろった。ではその戦歴をデータと突き合わせて確認していこう。
前走GⅠは上記の通り非常に少なく、ダービー【0-0-0-1】のみ。21年5着ディープモンスターだけなので、これはタスティエーラに当てはめられない。ただ、ダービーに関してはグレード制導入後初の1~4着タイム差なしの大接戦であり、何度やっても結果は同じ、というレースではなかった。タスティエーラ、ソールオリエンス、ハーツコンチェルトはダービーの時点では互角だったと考えた方がよさそうだ。
前走GⅡ【9-9-5-97】勝率7.5%、複勝率19.2%はほとんどがトライアルだが、念のため重賞全体で内訳をみる。前走神戸新聞杯【6-5-4-51】勝率9.1%、複勝率22.7%、セントライト記念【3-3-1-43】勝率6.0%、複勝率14.0%と、トライアルでは神戸新聞杯がやや優位といった感じになる。
神戸新聞杯を勝つと【3-0-2-2】勝率42.9%、複勝率71.4%とグンと確率が上昇する。GⅡ・2勝目をあげたサトノグランツは有力候補だ。父は菊花賞馬サトノダイヤモンドであり、父の時と同じ京都で行われるのも心強い。母系はデインヒルとニジンスキーの組み合わせでスピードと底力を補完する。良馬場の菊花賞で力を発揮しそうだ。
残るは2着【1-3-1-5】勝率10.0%、複勝率50.0%、3着【2-2-0-5】勝率22.2%、複勝率44.4%と優先出走権の獲得圏内までで、4着以下は【0-0-1-39】と急落する。2着サヴォーナ、3着ファントムシーフはデータ上、後者が優位だ。ファントムシーフは共同通信杯V、皐月賞3着の実力馬。ダービー8着で少しトーンダウンしたが見直せる。
一方、ソールオリエンスのセントライト記念はどうか。こちらも基本は3着以内で、とくにソールオリエンスの2着は【1-1-1-4】勝率14.3%、複勝率42.9%と好走確率が高い。タスティエーラと互角だったダービーからどれほど力をつけたのか。セントライト記念で、ダービーと比べ馬体重が増えていなかったのは若干気になる。
別路線ではトップナイフの札幌記念【0-1-0-2】、ノッキングポイントの新潟記念【0-0-0-3】。札幌記念経由の好走は16年9番人気2着レインボーラインだが、同馬は札幌記念3着だった。脚質はトップナイフと異なるものの、渋さは通ずるものがある。5歳で天皇賞(春)を勝ったステイヤーで、菊花賞はその予告のようなものだった。トップナイフもホープフルS、弥生賞ディープインパクト記念惜敗などステイヤーっぽい部分を感じられる。菊花賞で再浮上してもおかしくない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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