【秋華賞】「2歳重賞を勝っていない桜花賞好走馬」が複勝率7割 データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年秋華賞の穴馬像,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の京都メインレースは3歳牝馬限定GⅠ・秋華賞。話題はもはや三冠がかかるリバティアイランド一色と言っても過言でないだろう。

1986年の三冠牝馬メジロラモーヌから起算して、春二冠した牝馬の最終戦成績は【6-1-3-0】。三冠達成率60%を高いと感じるか、低いと感じるかは人それぞれだろうが、「少なくとも3着は外さない」と思えば予想の組み立てもスッキリするのではなかろうか。

今回はそのリバティアイランドの相手探しに焦点を絞り、様々な角度のデータから3頭の穴馬候補を導き出した。


桜花賞好走馬にまつわる複勝率69.2%データ コナコースト

1頭目は桜花賞2着馬コナコーストをピックアップする。……が、その前に、まずは前提となるデータを紹介しておきたい。

春二冠の出走有無別成績(過去10年),ⒸSPAIA


オークスから5か月弱の期間を経て行われるこのレースでは、「夏の上がり馬」と呼ばれる新興勢力が一定の人気を集めがちだ。

しかし、過去10年の秋華賞において春二冠(桜花賞、オークス)どちらにも出走していなかった馬は【2-3-4-58】複勝率13.4%、単回収率24%、複回収率42%。両方とも出走した馬は【6-6-2-30】複勝率31.8%、単回収率68%、複回収率77%だから、その差は歴然だ。なお、春二冠不出走組は2016年にワンツースリーを決めている(ヴィブロス→パールコード→カイザーバル)が、この年は桜花賞馬ジュエラーが骨折明け、オークス1、2着のシンハライト、チェッキーノがともに故障で不在という特殊事情があった。

結局のところ、夏の条件戦やトライアルを勝ち上がってなんとか間に合わせた馬よりも、順調に春クラシックを戦ってきた馬の方が、好走確率も回収率も高いのだ。新星のドラマチックな登場には期待せず、桜花賞、オークス戦線を歩んできた馬を優先したい。

桜花賞での着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


さて、話をコナコーストに戻す。同じく過去10年の秋華賞において、同年桜花賞の4着以内馬は【4-4-2-10】複勝率50.0%、複回収率114%の好成績。興味深いのは、このうち「2歳重賞を勝っていた馬」が【0-1-0-6】と苦戦していること。この7頭を除くと成績が【4-3-2-4】複勝率69.2%、単回収率142%、複回収率161%まで跳ね上がる。

「2歳重賞勝ち」はあくまでひとつの目安に過ぎないが、つまりは「早熟性に因らず桜花賞で好走できたか」が、秋華賞を占う上でリトマス試験紙になるのだと解釈できる。

コナコーストは桜花賞2着ののち、オークスに駒を進めるもスタート直後に他馬と接触する不利もあって7着止まり。とはいえ、そもそも母コナブリュワーズは現役時代1400m以下で全4勝を挙げたスプリンターであり、さすがに2400mは長かった印象。悲観することはないだろう。400mの距離短縮は疑うべくもなく歓迎で、前目で立ち回れるレースセンスから京都の内回りも合いそうだ。


ノリにノッてる西村淳也騎手を背に大仕事 ドゥアイズ

2頭目にも桜花賞とオークスを戦ってきた馬のなかから、ドゥアイズをチョイスした。こちらの「買い材料」は騎乗予定の西村淳也騎手。先週はエルトンバローズに騎乗して毎日王冠を制覇。今年ノリにノッている新進気鋭の若手だ。

西村淳也騎手の条件別成績,ⒸSPAIA


本年の西村騎手について、その騎乗傾向をデータで分析すると、「ダートより芝」「短距離よりマイル以上」「平場より高額賞金レース」を得意としていることが分かる。これらの得意条件が重なる「芝1600m以上の特別戦」では【15-15-8-52】複勝率42.2%、単回収率227%、複回収率125%。ベタ買いでも大幅なプラスをもたらしてくれる、実に頼もしい存在と言える。

ドゥアイズも今春こそワンパンチ足りなかったが、2歳時はコスモス賞でモリアーナの2着、札幌2歳Sでドゥーラの2着、阪神JFで3着、明け3歳初戦はクイーンCでハーパーの2着がある実力馬。世代の2番手集団に位置しているのは確かだ。

最大の武器は先行、差し、あるいは内を捌く競馬などなんでもできる操縦性の高さ。その反面、阪神外回りや東京のような、器用さがあまり生かされないコースではやや見劣りするタイプでもある。三冠路線でベストの条件は桜花賞でもオークスでもなく、京都内回り2000mを舞台とするこの秋華賞。侮られた頃の一撃に警戒しよう。


ローズS3着以下×非ディープ系で複回収率155% マラキナイア

最後はマラキナイアの名前を挙げておく。前記した通り、春二冠皆勤しているに越したことはないのだが、不出走組から選ぶとしたらこの馬だと見ている。

キーポイントは関西圏の主要ステップレースのローズSと、秋華賞との関係性。過去10年のうちローズSが阪神で行われた7年間についてデータを確認する。

前走「阪神開催のローズS組」成績,ⒸSPAIA


ローズSで連対した馬は【1-1-2-9】複勝率30.8%、複回収率57%。同3着以下なら【1-2-4-32】複勝率17.9%、複回収率111%だ。当然、いい結果を出してきた馬の方が好走確率は高いのだが、回収率ならむしろ後者がいい。前哨戦で崩れてしまった馬は敬遠されがちだが、阪神外回り、直線勝負のダイナミックな競馬は秋華賞と直結度が低く、砕けた言い方をするならローズSの着順は「そんなに重要じゃない」のだ。

となると、狙うは「阪神外回りより京都内回りが合う、ローズS敗退組」という話になる。そしてこれにも単純明快な手掛かりがある。ローズSで3着以下だった父ディープインパクト系は【0-0-0-11】、非ディープ系は【1-2-4-21】複勝率25.0%、複回収率155%。ローズSはディープインパクト系の独擅場になっており、その裏返しが上記のデータに表れている。

ジャスタウェイ産駒のローズS3着馬マラキナイアは、夏場を休養に充てて馬体重+14キロとパワーアップ。春にマイルを使っていた頃はややワンペースさを感じる内容だったことから、2000mに距離が延びるのも、内回りに替わるのもプラスの要素だろう。ギリギリでつかんだ女王への挑戦権。ぜひともこの大舞台で存分に暴れまわってほしい。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

《関連記事》
【秋華賞】二冠牝馬リバティアイランドに不安データ コナコーストら3頭の番狂わせに期待
【秋華賞】打倒リバティアイランドなるか ライバル3頭を徹底比較し逆転の可能性を探る
【秋華賞】過去10年のレース結果一覧

おすすめ記事