【紫苑S】オークス上位馬不在で狙うはエミュー 好走候補は前走・条件戦のアップトゥミーとアマイ

勝木淳

2023年紫苑ステークスに関するデータ,ⒸSPAIA

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2017年以来の事態

牝馬三冠はオークス6馬身差圧勝のリバティアイランド一強で最終戦へ進む。秋華賞直行というローテは最近ではもはやスタンダードになり、今年はオークス2着ハーパーも直行ローテを選択した。

紫苑Sは重賞になって今年で8年目を迎える。以前は関西圏の最終戦に向け、地元関東馬のトライアルだったが、重賞昇格後は昨年のスタニングローズや2017年ディアドラと秋華賞を勝つ関西馬の活躍が目立つようになった。とはいえ、関西馬はその2勝止まりで、残る5勝は関東馬。地元の利は確実にある。

今年は前走オークスで掲示板内にきた馬がいない。これは2017年以来6年ぶりの出来事だ。ではその2017年はどうだったのか。夏に1戦したオークス4着馬ディアドラを含め、1~3着はすべて前走北海道の2勝クラス2着以内だった。2勝クラス好走は秋のトライアルのひとつの目安になる。データは重賞昇格後の7回分を使用する。

紫苑Sの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-1-1-2】勝率42.9%、複勝率71.4%、2番人気【3-1-0-3】勝率42.9%、複勝率57.1%と堅実で、基本は1、2番人気どちらかを本命に選びたい。しかし、3番人気以下は横並びで、10番人気以下の激走もたまにみられ、中山の重賞らしく連下級は幅広くゾーンを広げて待ちたい。

紫苑Sの枠番別成績,ⒸSPAIA


春から4カ月半ほど空いた秋開催の芝はローテーション的に最高の状態になる。絶好の芝ゆえに基本は内枠が有利だが、これが紫苑Sには当てはまらない。8枠【4-2-2-10】勝率22.2%、複勝率44.4%で、勝ち馬はすべて5枠から外で出現している。中山芝2000mである程度の頭数が集まるトライアルは、先行有利という心理も働くのか、早めにレースが動き出す。内枠の馬は仕掛けのタイミングを逸するケースもあり、進路を作れず、力を出し切れない。もちろんさばき一つではあるが、ここまで外枠有利な傾向が出ているとなると、枠番次第で評価を変える必要がありそうだ。


上がり馬ならアップトゥミー、アマイ

前走が重賞だったのはオークス6着ヒップホップソウル、13着エミュー、NHKマイルC6着モリアーナなどで、今年は夏の上がり馬にも権利獲得のチャンスがありそうだ。

紫苑Sの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず前走GⅠ【4-4-4-23】勝率11.4%、複勝率34.3%からみていこう。ここはオークス【4-4-4-20】、桜花賞【0-0-0-3】で、NHKマイルCからここに進んだ馬はいない。

紫苑Sの前走オークスの着順別成績,ⒸSPAIA


オークスの着順内訳は、やはり掲示板内【2-1-1-3】、6着以下【2-2-3-17】なので、基本は好走馬がいい。6~9着【0-1-1-6】複勝率25.0%、10着以下【2-1-2-11】勝率12.5%、複勝率31.3%(ほか、昨年のサウンドビバーチェが除外→2着)。6着ヒップホップソウルもいいが、13着エミューも面白い。春は不良馬場でフラワーCを勝った。

オープン・L【0-0-0-5】は忘れな草賞を勝ったグランベルナデットにとって気になるデータだ。だが、大半がオークスへ向かう忘れな草賞から、ここに直行という例はない。凡走5頭は白百合S、スイートピーSとバーデンバーデンC。グランベルナデットに当てはめられない。また前走ラジオNIKKEI賞は【0-1-0-1】。20年パラスアテナが4着から2着へ巻き返した。10着だったアグラシアドは不良馬場のミモザ賞で同舞台を勝利している。

紫苑Sの前走1、2勝クラスの距離別成績,ⒸSPAIA


条件戦からここに挑む馬についても調べる。前走1勝クラス【1-1-1-35】勝率2.6%、複勝率7.9%、2勝クラス【1-1-1-11】勝率7.1%、複勝率21.4%は、まとめて前走距離別成績を出す。

2000m超からの短縮【0-0-0-5】、2000m未満からの延長【0-1-1-34】複勝率5.6%に対し、前走2000mが【2-1-1-7】勝率18.2%、複勝率36.4%と断然だ。条件戦からここに進む馬は前走2000m戦出走を目安に絞ってもいい。2勝クラスの身ながら、東京で勝ったアップトゥミー、函館のアマイあたりが候補に残る。

紫苑Sに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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