【2歳馬ジャッジ】セットアップが昨年のトップナイフと同等の指数で未勝利戦を脱出 今後も穴馬として要注目
山崎エリカ
ⒸSPAIA
8月3週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はGⅠ連対馬トップナイフと同等の指数を記録したセットアップやラスト2Fで急加速したジュンゴールドなどが出た、8月19日、20日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
8月20日(日)新潟1R 優勝馬 キャットファイト 指数-4 評価B
前走6月東京のボンドガールが勝利した新馬戦では6着に敗れ、今回は1番人気に支持された。確かにこの新馬戦組はその後活躍している馬が多い。しかし、本馬はボンドガールから1.2秒差をつけられての6着。やや出遅れる不利があったことは確かだが、1番人気に支持されるほど信用して良いかは、やや半信半疑だった。
レースは7番枠から五分のスタートを切り、中団中目を追走。序盤は頭を上げていたが3角までに折り合いもついた。しかし、3~4角では包まれてしまう。直線では進路がなかなか開かなかったが、残り300mあたりで外に出して進路を確保すると、しっかり伸びて勝利した。
ラスト2Fの11秒2-11秒4は悪くない。上がり3Fタイム33秒8も、この週の新潟芝でそれなりの走破時計で走った上でのものなので、悪くない。なかなか良い勝ちっぷりで、今後も面白そうだ。さて、こうなるとボンドガールはどこまで強いのか。着差からの単純比較すれば、次走重賞を世代最高の指数で勝利する可能性が高いということになる。
8月20日(日)新潟5R 優勝馬 アドマイヤベル 指数-1 評価B
半姉に2017年ヴィクトリアマイルの勝ち馬アドマイヤリード、現役には今年6月の2勝クラス・皆生特別をオープン級の高指数で勝利したベルクレスタがいるという良血馬だ。今回の新馬戦では1番人気に支持された。
レースは7番枠からはっきりと出遅れ。ダッシュも付かず、後方からの追走となった。3~4角の外からじわっと上がって4角出口で大外から直線勝負。ミエノブラボーと併せてグイグイ伸び、最後に内から伸びたベストミーエヴァーと併せて追い比べ。クビの上げ下げをハナ差で制した。
ラスト2Fは11秒1-11秒7。これはあまり評価できないが、上がり3Fタイム33秒8はこの週の新潟としては悪くない。指数は高いものにならなかったが、新馬戦で出遅れて勝利した馬は次走で大きく伸びることも多い。大雑把なレースぶりを高く評価できないが、素質自体はかなり高そう。将来的に面白い存在となりそうだ。
8月20日(日)小倉5R 優勝馬 ジュンゴールド 指数-5 評価AA
半兄にはデビュー3戦目の東京スポーツ杯2歳S3着のジュンブルースカイがいて、今回の新馬戦では1番人気に支持された。レースは1番枠から五分のスタートを切り、中団やや後方の中目でしっかりと脚をタメていた。手応えに余裕があるのか、3~4角でも手綱が動かない。持ったまま直線を向いて外に誘導し、ゴーサインが出されると凄い脚。一気に前を捉えて突き放し、3馬身半差で圧勝した。
ゴールを過ぎても加速していくような脚が印象的で、やはりラスト2Fは12秒2-11秒7と急加速でフィニッシュ。上がり3Fタイムの35秒4がやや平凡ではあるが、それでも出走メンバー中では断トツの1位で、直線まで全く動かなかったこともあるだろう。ジュンブルースカイよりも新馬戦の勝ちっぷりは明らかに上。ならば重賞でも楽しめる馬となりそうだ。
8月19日(土)札幌1R 優勝馬 セットアップ 指数-10 評価AA
レガレイラが勝利した新馬戦の2着馬。今回は本馬が1番人気、スパークリシャール(マーゴットソラーレが勝利した新馬戦で2着)が2番人気。好指数決着となった函館新馬戦で、小差の2着だった両馬が上位人気に支持された。指数比較なら明らかに一騎打ちムードだが、デビュー2戦目は順当に良化する馬ばかりではないだけに、注目していた。
レースは11番枠から好スタートを切り、ダッシュよく逃げる競馬となった。そこから離れた単独2番手を追走するスパークリシャール。3~4角でもセットアップは軽快に逃げ、離れた2番手を追走するスパークリシャールだが、その後ろの馬たちが苦しくなってバテ始める。4角では前の2頭と後ろは大きく離れた。
最後の直線ではスパークリシャールが差を詰めたが、セットアップの1馬身半差の逃げ切り勝ち。3着馬には9馬身半つけてのゴールだった。
セットアップが記録した指数は1クラス上のもの。走破タイムの1分48秒5はこの日の札幌としてはかなり優秀。昨年の札幌未勝利戦で、デビュー3戦目のトップナイフが逃げて高指数で圧勝したが、今回はそれと同等の指数だった。
このタイプは成績にムラが出ることが多い。トップナイフもその後、毎度のように人気薄となったが、セットアップも似たようなタイプとなるだろう。能力は確か、スタミナも相当あるだろう。馬券的にとても楽しめる馬となりそうだ。また、2着だったスパークリシャールも優秀な指数での2着。当然、今後も注目すべきだ。
8月19日(土)札幌5R 優勝馬 ラヴスコール 指数-5 評価AA
8番枠から好スタートを切って前に行こうとし、前進気勢の強さを見せていた。しかし、外の馬に前に入られてしまい、抑える形になって折り合いを欠いた。前に壁を作って好位の中目を追走したが、それでも行きたがる感じを見せていた。最後の直線では外に出すのに手こずったが、進路を確保するとグイグイ伸び、最後は早めに抜け出したラーンザロープスをクビ差捉えてゴールした。
3着馬には3馬身差をつけており、上位2頭はなかなかの好指数を記録。ラスト2Fは11秒6-11秒3。時計の掛かる札幌芝ではかなり評価できる数字だ。今回はスムーズさを欠くところもあっただけに、今後かなり期待できそうだ。
8月20日(日)札幌5R 優勝馬 ウールデュボヌール 指数-2 評価B
2番枠から五分のスタートだったが前に行こうとする馬がおらず、徐々に先行態勢となり、押し出されてハナに立った。1角のコーナーワークでややスムーズさを欠いてペースが落ち、そこからもかなり緩いペースで逃げた。あまりに遅いペースとなったため、向正面から動く馬が出現。よって、そこから急にペースが上がり、ラスト4Fは12秒2-12秒2-12秒1-12秒2でゴールした。
なかなか長く良い脚を使っていたが、ほぼ減速しなかったところからスタミナの豊富さを感じさせる。距離の長い舞台で楽しめそうな馬だ。
8月20日(日)札幌8R 優勝馬 コスモディナー 指数-11 評価A
7月福島芝の新馬戦をかなりの好指数勝ち。前走はコスモス賞で2着も、3~4角から動いてエコロヴァルツを負かしにいく競馬で内容は悪くなかった。そこから連闘策。前走時は中間の調教が緩く、万全ではないと感じていたが、この連闘を考えていてのものだったのか。今回は新馬戦でなかなか良い勝ち方をした馬もいたが、ここはおそらく圧勝すると見ていた。
レースは8番枠から五分のスタート切って、中団の外を折り合って追走。ここでも3~4角の外から位置を押し上げ、4角では先頭列が直線で馬場の良い外を走らせようと横に広がっていく中、一番外からしぶとく伸び続けて勝利した。
今回で記録した指数は悪くないが、期待ほどのパフォーマンスではなかった。とりあえず、今回は能力を出し切ったものと見る。そうなるとここからは想定していたよりも苦戦するかもしれない。
このレースで驚かされたのはホッカイドウ競馬所属のカイコウ。今回が初芝ながら好位の外と正攻法の競馬で2着は、かなり高く評価できる。過去にも初芝で好走し、その後のJRA重賞で活躍した先輩馬たちはたくさんいる。初芝の500万下では3着ながらもその後も芝を使い続け、札幌2歳Sを10番人気で優勝したモエレエスポワールという馬もいた。地方馬カイコウの今後の芝での活躍を大いに期待したい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)セットアップの指数「-10」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.0秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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