【アイビスSD】トキメキにリベンジの好機到来 2年前の覇者オールアットワンスも侮れない
勝木淳
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直線競馬は外が内、内が外になる
はじめて現地で直線競馬を観たのは2001年、改装間もない夏のことだった。遠く陽炎に揺れるスタート地点から飛び出す馬たちが、蹄音とともに近づいてきたかと思えば、外ラチ一杯を走り抜ける迫力に圧倒されたものだ。
新潟の外ラチ強襲は新潟記念の“ブラストワンピースロード”が有名だが、それほど外ラチ一杯を通るのは珍しい。直線競馬は外が内、内が外。直線でしか使用されない外ラチ沿いのグリーンベルトを巡る争いは年々、熾烈になっていき、外で詰まるという現象がしばしば生じるようになった。
1枠から内ラチ沿いを進んだのは21年アイビスSDのバカラクイーン。14番人気単勝130.0倍、大穴の一発激走は、直線競馬の理にひとつ、風穴を開けた。開幕したばかりの新潟なら、内ラチ沿いも悪くはない。さて、今年は内も外もどんな攻防がみられるだろうか。データは過去10年分を使用する。
夏の重賞は波乱傾向が強めだが、このレースは1番人気【7-2-0-1】勝率70.0%、複勝率90.0%と極めて信頼度が高い。22年9着ヴェントヴォーチェの前は9年連続2着以内だった。昨年を機にこの傾向は変化するだろうか。その分、2番人気【1-4-0-5】勝率10.0%、複勝率50.0%以降に大きな差はなく、素直に傾向通りなら、1番人気から手広くが基本線になる。
まずは出走数が少ない3歳【1-2-1-6】勝率10.0%、複勝率40.0%、4歳【3-1-1-18】勝率13.0%、複勝率21.7%が効率よさそうだ。今年も3歳リバーラ、4歳はプルパレイ、昨年のNHKマイルC以来のジャングロなど候補は多くない。一方、5歳【3-6-5-33】勝率6.4%、複勝率29.8%や7歳以上【3-0-1-38】勝率7.1%、複勝率9.5%など、スピード勝負ながら夏の重賞らしくベテランも奮闘する。なお、3勝の7歳馬はすべてその年の韋駄天S4着以内で、スピード通用の下地を春に作っていた。ちなみに2勝は8枠だった。
直線競馬は外が内、内が外。枠番の傾向も顕著だ。8枠は【4-2-1-17】勝率16.7%、複勝率29.2%ともっとも勝率が高い。4枠から内【2-3-2-65】に対し、5枠から外【8-7-8-65】なので、外枠有利ではあるが、上記21年のように内がまったく振るわないわけではない。なにせ外枠は渋滞が生じるリスクも高く、内枠の方がスムーズに外目に出てこられることも頭に入れておこう。ただし、1番人気×8枠は【2-0-0-0】で全勝だ。
21年1、4着オールアットワンス、トキメキがポイント
枠順が非常に結果を左右するレースではあるが、内枠の抵抗もあるように好走ファクターはほかにも必要だ。したがって、ここからは前走レースにポイントを置き、もう少し好走ゾーンを探っていく。
前走クラス別でみると、ざっくり前走GⅢ【5-1-3-33】勝率11.9%、複勝率21.4%、オープン・L【5-8-2-65】勝率6.3%、複勝率18.8%の2パターンがある。
前走GⅢの好走例はCBC賞【4-0-1-14】勝率21.1%、複勝率26.3%、函館SS【1-1-2-14】勝率5.6%、複勝率22.2%といずれのサマースプリントシリーズ経由だった。しかし、今年はCBC賞組も函館SS組も不在。登録馬の中で前走がGⅢだったのは、昨年のこのレース以来の出走となるオールアットワンスのみ。前走がアイビスSDだった馬はおらず、判断が難しい。
オープン・Lは前走韋駄天S【4-6-1-26】勝率10.8%、複勝率29.7%が中心になる。韋駄天Sも基本は1着【1-2-1-2】勝率16.7%、複勝率66.7%、2着【1-2-0-1】勝率25.0%、複勝率75.0%など好走組がよく、4着以内が【4-5-1-11】。それ以下では6~9着【0-1-0-10】複勝率9.1%ぐらい。今年は2着ファイアダンサー、3着トキメキが有力候補だ。
今年の韋駄天Sは春の新潟開催でありがちな時計を要する馬場状態で行われ、決着時計は56.5と遅かった。ハンデ戦らしく伏兵同士で決まり、上位は差し馬勢が大半を占めた。3着トキメキは前目から流れ込んでおり、見所はあった。21年アイビスSD4着(54.9)、3勝クラス突破もこの舞台と適性は十分ある。スピードがどこまで通用するかだろう。
最後に前走条件クラスからここに挑戦する馬は6頭好走例があるが、いずれも6月以降の芝1200m戦に出走していた。新潟直線だと【0-0-0-4】。
1年ぶりに復帰する2年前の覇者オールアットワンスや、さらに長い休養から戻るジャングロはデータでの評価は難しい。とはいえ函館記念を1年ぶりの出走で4着に好走したマイネルウィルトスの例もあり、得意舞台ならいきなり走ってもおかしくない。その意味ではオールアットワンスもこのメンバーなら軽くは扱えない。2年前の決着時計は54.2だった。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。
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