【ヴィクトリアマイル】牡馬相手に戦ってきた馬が優勢 スターズオンアース、ソダシら有力も、逆転託せるナミュール
勝木淳
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2、3番人気不振で順調な決着なし
春の女王決定戦はマイル戦で行われる。レース創設はあとからGⅠに昇格した大阪杯やホープフルSより遅く、2006年のこと。初代女王ダンスインザムードに騎乗した北村宏司騎手はGⅠ初制覇を師匠・藤沢和雄調教師の管理馬で飾った。17年も前の話だ。
以降、言い訳できないチャンピオンコースである東京マイルで数々の名場面が生まれてきた。ヴィルシーナ、ストレイトガールの連覇、最低人気ミナレットの3着激走など大波乱もあった。秋は中距離にシフトする牝馬路線、マイラータイプにとってここが勝負になる。過去10年分のデータを使用して展望する。
まずは人気の傾向から。1番人気は【3-2-0-5】勝率30.0%、複勝率50.0%と好凡走は半々。だが、2番人気【0-0-1-9】複勝率10.0%、3番人気【0-2-0-8】複勝率20.0%と対抗評価の確率がガクンと下がる点が特徴だ。1~3番人気が複数馬券圏内にきたのは直近10年で16年1回にとどまり、ひとひねりが必要だ。
4~8番人気から勝ち馬が6頭も出現しており、10番人気以下は【1-4-2-80】勝率1.1%、複勝率8.0%。2着4頭が10番人気以下と、ひとひねりぐらいでは的中にたどり着けないレースだ。
年齢別では4歳【4-6-2-61】勝率5.5%、複勝率16.4%、5歳【4-3-7-58】勝率5.6%、複勝率19.4%が主力。6歳【1-1-1-23】勝率3.8%、複勝率11.5%のうち、馬券圏内だった3頭はストレイトガール、ケイアイエレガント、クロコスミアと重賞勝ちがあった。前出2、3番人気は4歳【0-2-0-8】、5歳以上【0-0-1-9】。5歳のソダシ、ソングライン、メイケイエールあたりは人気に注意したい。
阪神牝馬Sは2着以下を狙う
次に前走成績から好走ゾーンを明確にし、候補を絞ってみたい。まず前走クラス別成績だが、牝馬の春最大目標らしく、前走重賞が【10-10-10-135】で条件戦やオープン・Lからの好走はない。問題は前哨戦の牝馬限定戦からくる馬、牡馬相手の重賞からくる馬、どっちがいいか。
重賞組について、牝馬限定戦とそれ以外にわける。牝馬限定【5-7-6-95】勝率4.4%、複勝率15.9%に対し、牡馬混合は【5-3-4-40】勝率9.6%、複勝率23.1%。牡馬混合の好走率が高いものの、分母に差があるため勝ち馬は5対5、3着以内に至っては18対12で牝馬限定組が多い。16年に阪神牝馬Sが1400mからマイル戦へと変更され、ここが主要ルートとして機能し、以前よりその差は埋まりつつある。
まずは牝馬限定重賞の内訳をみる。上記の通り阪神牝馬Sが【4-4-4-56】勝率5.9%、複勝率17.6%とメイン。ほかは中山牝馬S【1-1-0-11】勝率7.7%、複勝率15.4%、福島牝馬S【0-1-2-20】複勝率13.0%。コーナー4つの芝1800mという中距離寄りの舞台設定は東京マイルと適性のつながりが薄く、メンバーランクもGⅡの阪神牝馬Sと違う点が要因だろう。
では阪神牝馬Sでの着順別成績をみる。1着【0-1-0-9】複勝率10.0%、2着【1-1-2-6】勝率10.0%、複勝率40.0%、3着【0-1-1-4】複勝率33.3%と、勝ち馬より惜敗馬が強いことが特徴だ。さらに5着【1-0-1-2】勝率25.0%、複勝率50.0%、6着以下【2-1-0-29】勝率6.3%、複勝率9.4%まで負けた組も油断できない。
今年の阪神牝馬Sは序盤600m36.1、前後半800m48.0-45.9のスロー。最後600m11.2-11.0-12.0の上がりの競馬だった。位置をとった1、2着馬のほかに、上がり最速を記録した5着アンドヴァラナウト、スムーズにさばけなかった6着ルージュスティリア、10着イズジョーノキセキまでチェックしておこう。阪神牝馬S以外の牝馬限定重賞は5着以内【0-3-2-26】、6着以下【1-0-0-13】。ステラリアなど連下候補も複数いる。
舞台がマイルならナミュールも互角
続いて牡馬相手の重賞について。前走高松宮記念【1-0-3-15】勝率5.3%、複勝率21.1%は3着以内【0-0-1-3】、6着以下【1-0-2-12】で掲示板を外した馬にも注意。ロータスランド、メイケイエールの巻き返しに期待したい。スターズオンアースの大阪杯は【1-0-0-2】。21年グランアレグリアが勝利した。ちなみにGⅡの産経大阪杯時代は13年ヴィルシーナ1着など【1-1-1-1】だった。スターズオンアースは大阪杯の内容からも、阪神内回りから東京に替わるのは好材料だ。
牡馬相手の重賞と言っても格も条件もバラバラなので、ここはひとまとめにして整理する。その人気別成績は1番人気【2-1-2-3】勝率25.0%、複勝率62.5%を筆頭に、4番人気以内【5-3-3-14】、5番人気以下【0-0-1-22】とくっきり。牡馬相手で上位人気に支持されるような馬でないと、いくら牡馬と一緒に戦っても女王の座には近づけない。
4番人気以内だったのはスターズオンアース、スタニングローズ、ソダシ、ナミュール、ナムラクレア、メイケイエール、ロータスランド。前走サウジで馬券発売がなかったソングライン以外はすべて当てはまる。そのソングラインは昨年同ローテで5着、次走安田記念を勝った。阪神牝馬S組との比較では、今年は牡馬相手に戦ってきた組が優勢のように映る。
昨年の女王ソダシ、東京GⅠ好走歴があるスターズオンアース、スタニングローズ、ナミュールはデータ面でも有力。一発あるならマイル戦得意のナミュールではないか。前走東京新聞杯は序盤600m34.4、前後半800m45.8-46.0、1.31.8。ウインカーネリアンが逃げ、2ハロン目から6ハロン目まで11.4以下が続くスピード勝負だった。好位をついていったナミュールは我慢強さを求められた最後400m11.6-12.1で後ろに差されず、ウインカーネリアンをアタマ差まで追い詰めた。同舞台の東京新聞杯経由は昨年の2着ファインルージュと同じローテーション。マイラーとしての資質は極めて高い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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