【ダイヤモンドS】今年も大混戦で波乱の気配あり! リベンジなるかレクセランス

勝木淳

ダイヤモンドSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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年に一度の東京芝3400m

1年に一度というのは競馬ファンにとって価値がある。名鉄杯や宝塚記念のファンファーレは「神曲」扱いだったりもする。そもそも天皇賞を除けば、GⅠはどれも1年1度。東京芝3400mもこのダイヤモンドSでしか使われない。芝コースを2周するマラソンレースは当然スローペースが多く、レースの動き出しも他場の長距離戦と比べて遅い。スタミナを問わないとは言わないが、末脚の温存がカギを握る。データは過去10年間のものを使用する。

過去10年ダイヤモンドS人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【6-1-0-3】勝率60.0%、複勝率70.0%。ハンデ戦でもあり波乱を期待したくなるが、東京らしく1番人気が強い。人気を裏切った3頭は古馬重賞の実績がなかった。1番人気が強力な反面、2番人気【1-2-3-4】勝率10.0%、複勝率60.0%はまだいいが、3番人気以下は混戦。波乱イメージは16番人気ミライヘノツバサVとあわせ3番人気以下の混戦具合からくるものだ。馬券の軸はどこから入っても面白い。無難に1、2番人気から入っても、人気薄を組み合わせれば高配当にありつける。

過去10年ダイヤモンドS人気別成績,ⒸSPAIA


年齢別では若い馬中心でよさそうだ。4歳は【3-2-3-12】勝率15.0%、複勝率40.0%。以下は5歳【3-2-0-24】勝率10.3%、複勝率17.2%、6歳【2-2-5-28】勝率5.4%、複勝率24.3%、7歳以上【2-4-2-50】勝率3.4%、複勝率13.8%。5歳以上は年齢を気にする必要はなさそうだ。

過去10年ダイヤモンドS上がり3ハロン順位別成績,ⒸSPAIA


東京のスローペースは本当に直線入り口手前の残り600mまでゆったりと流れやすい。00年ユーセイトップランが3200m時代に掟破りの3角スパートを後藤浩輝騎手と決めたが、これは例外中の例外。基本はまず上がり勝負になる。そのため上がり1位は【6-3-1-1】勝率54.5%、複勝率90.9%と驚異的だ。

真冬の東京Dコース設定は東京新聞杯で紹介したが、上がり最速が1着まで届きにくい。今年の東京新聞杯もウインカーネリアンが逃げ切り、上がり最速ジャスティンカフェは4着と位置取りの優位性が勝った。しかしダイヤモンドSは例外で、瞬発力はレースを決する武器になる。


万葉S勝ちは取り扱い注意

波乱傾向も基本は1、2番人気中心、4歳優勢、上がり最速は必須条件という基本を押さえたので、ここからは好走パターンを探り、候補をさらに絞る。

過去10年ダイヤモンドS前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず前走GⅠ【1-1-0-9】勝率9.1%、複勝率18.2%は有馬記念【1-1-0-2】で今年は該当馬がいない。トラストケンシンのジャパンCは【0-0-0-4】で同じ東京でもリンクしない。

過去10年ダイヤモンドS前走GⅡ組レース別成績,ⒸSPAIA


注目は前走GⅡ【4-2-5-34】勝率8.9%、複勝率24.4%だ。スタッドリーなどが当てはまるAJCCは【3-0-0-7】勝率、複勝率30.0%と極端。こちらは3着【2-0-0-0】、10着以下【1-0-0-4】で3着か凡走が理想になる。凡走から巻き返したのは15年フェイムゲーム。同馬はアルゼンチン共和国杯1着からAJCC12着、そしてダイヤモンドS1着という臨戦過程で、AJCCはここを目標にしたひと叩きだった。こうした割り切ったローテーションではないスタッドリーは長距離への可能性を感じつつも、評価しにくい。

同じ長距離戦のステイヤーズSは【1-2-3-17】勝率4.3%、複勝率26.1%で頭数の割に成績はそこまでだ。今年は12着カウディーリョがいる。ここは2~4着【1-2-2-5】、5着以下【0-0-1-12】で好走が条件。カウディーリョは戦歴も東京歓迎とはいえず狙えない。

こうなると万葉S【2-2-2-25】勝率6.5%、複勝率19.4%だ。1着ミクソロジー、4着レクセランスなどが該当する。5着以内【2-2-2-15】、6着以下【0-0-0-10】、1着は【0-0-1-4】なので注意が必要だ。

ハンデ戦からハンデ戦なので、万葉Sを勝つと当然斤量が増える。オープンを勝って重賞で斤量増は一般的にも手を出しにくい。53キロで勝ったミクソロジーは斤量増を免れず、56キロで4着レクセランスは据え置きの可能性が高い。前走万葉Sで斤量増減なしは【0-2-1-14】。今年は中盤が緩み、先行勢の競馬だった。4コーナー10番手から上がり最速35.4で差してきたレクセランスは、昨年1番人気を裏切ったが今年はリベンジなるか。ただし、中京で行われた万葉Sは【0-0-0-4】。

ほかでは長距離戦に矛先を変えるアスクワイルドモアは勝った京都新聞杯がいかにもスタミナを要する流れで一変する余地はある。6歳牝馬ウインキートスは目黒記念1、3着と東京の長距離に実績がある。引退が近いと推測されるが、ひと花咲かせられるか注目だ。牝馬の優勝は88年ダイナブリーズ(このレース最多勝の岡部幸雄騎手)が最後であり、その前は80年プリテイキャスト。ウインキートスに騎乗予定の横山和生騎手の祖父横山富雄騎手が騎乗した。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。


ダイヤモンドSインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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