【2歳馬ジャッジ】エフフォーリアの全妹ペリファーニアが新馬戦を快勝 兄と同じ成長曲線なら楽しみな逸材

山崎エリカ

12月4週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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12月4週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は2021年の年度代表馬エフフォーリアの半妹ペリファーニアや、GⅠ馬タイムフライヤーの半妹オールザタイムなどが出た、12月24日、25日、28日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

12月25日(日) 中山2R 優勝馬 タマモロック 指数-11(ダート) 評価B
デビューからダートで5着、3着、4着と特に目立つ成績ではなかったタマモロック。1、2戦目は行きっぷりが悪く、後方からのレースだった。前走は初めてブリンカーを着用し出遅れたが、掛かり気味になるほどの行きっぷりを見せ、今回は11番枠から好発を切って逃げた。

それなりに速いペースを刻んで逃げたため、3~4角から後続馬がバテていく展開。勝負は前を行く馬に絞られた。逃げるタマモロック、それを追うフェザーモチーフ。2頭の叩き合いはゴールまで続き、クビ差でタマモロックが押し切った。

3着馬に8馬身差をつけ走破タイム1分54秒1はなかなか優秀。古馬1勝クラスレベルでの勝利だった。前走から着用したブリンカーの効果が効いたようだ。気性に問題があり、成績にムラが出そうなタイプだが、能力はあるので昇級後いずれ穴を開けそうだ。

このレースで大きく注目すべきは2着惜敗だったフェザーモチーフの方か。芝のデビュー戦では9着だったが、2戦目で初ダートの今回で大きく前進。同馬も1クラス上の指数を記録しているだけに、順調なら未勝利クラスをすぐに突破し、ダートで上を目指す馬となりそうだ。

12月25日(日) 中山3R 優勝馬 スズハローム 指数-10 評価A
新馬戦では後に朝日杯FSで3着となるレイベリングの4着だった。このレースには前走レイベリングが勝利した新馬戦組の2着、5着馬が出走してきたが、当時2着だったショウナンアビアスは今回2番手でレースを進め13着。当時5着のマンスールも折り合いを欠き早めに上がっていく競馬で7着と凡退した。

この日の中山芝は馬場の内側が急速に悪化しており、このレースは完全なオーバーペース。それを生かす形となったのがスズハローム。2番枠から出遅れてかなり後方からの競馬となったが、3~4角で外からスルスルと勢いよく位置を上げ、4角では前を飲み込む形。直線では後続を引き離し、5馬身差の圧勝だった。

明らかに展開が向いた勝利も、ラスト2Fは11秒8-11秒7と最後まで伸び続けている。走破タイムも優秀で1クラス上の指数を記録しての圧勝。展開、馬場が向いたことは確かだが、高い評価をすべき走りだったようだ。今回は多少の疲れが懸念されるほど高いパフォーマンスだったが、長く良い脚を生かし、いずれは上で活躍するようになるだろう。

12月25日(日) 中山4R 優勝馬 ダニーデン 指数-6 評価B
新馬戦では後に東京スポーツ杯2歳Sを勝利したガストリックの2着だった。同レースでは好発を決め序盤先頭、控えて2番手と掛かり気味に勝ちに行く競馬で、外からガストリックに差されてしまった。

今回はそれを踏まえて9番枠からゆったりと出して、前走よりもやや控えた3列目の外を追走と理想的な位置。3~4角で進出して2列目の外まで上がり、そこからジワジワとしぶとく伸びて抜け出し勝利。2着に2馬身半差、3着に4馬身半差をつけての勝利は価値が高い。勝ち負けを繰り返しながら上を目指す馬となるだろう。

12月25日(日) 中山6R 優勝馬 ペリファーニア 指数-6 評価AA
クラシック戦線で大活躍し、2021年の天皇賞(秋)、有馬記念を優勝したエフフォーリアの半妹ペリファーニア。血統面での評価は高く、今回は単勝オッズ1.4倍の断然の1番人気に支持された。

レースは10番枠からやや出遅れ、行き脚もまずまずで好位直後の外を追走したが、2角で前の馬が下がって、ブレーキをかける不利。ペリファーニアも位置が下がり、中団のさらに外を追走した。この不利によって、結果的には馬場の良い外を通ることが出来た。

3~4角で好位に進出し、4角では2列目の外。直線序盤で堂々と先頭に立つと、そのまま押し切った。2着馬に2馬身、3着馬に7馬身差をつけての快勝で、指数は新馬戦としてはなかなか優秀なものとなった。ラスト2Fは11秒5-11秒7。そこまで余裕を感じさせるものにはならなかったが、道中で不利があったことを考えれば悪くない。

兄エフフォーリアは新馬戦時の走りが秀逸と評価できなかったが、使われるごとに内容が良化していったタイプで、スタミナ型の成長曲線を示した馬だ。本馬の新馬戦の指数は兄よりも上。そこから兄同様の成長曲線ならば、相当なところまでいく馬となりそう。まずは次走に注目したい。そこで兄同様の上昇を見せれば、かなり期待できる。

12月28日(水) 中山5R 優勝馬 オールザタイム 指数-3 評価B
2017年のホープフルSの優勝馬タイムフライヤーの全妹にあたるオールザタイム。今回は1番人気の支持を受けた。5番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速く、逃げる競馬。マイペースの逃げで5F通過は62秒0。そのまま4角を回っても脚色は衰えず、結果は2馬身半差の快勝だった。

有馬記念当日の馬場だったなら、逃げて内を通れば残れなかっただろう。しかし、この日の中山芝は馬場状態が一気に回復したことで、3レースに続いて逃げ馬の勝利となった。ラスト2Fは11秒7-12秒0と減速。この点はそこまで高い評価はできないが、逃げて後続に着差をつけて勝利した点は評価できる。このタイプは次走差す競馬で大きく前進することもある。

今年のシンザン記念を勝利したライトクオンタムがまさにそれ。新馬戦時のラスト2Fの数字は評価できなくとも、次戦で一変した。オールザタイムの今回の指数はライトクオンタムよりも劣るだけに過大評価はできないが、次走差す競馬でどこまで変わるかで評価すべき馬だろう。

12月28日(水) 中山11R 優勝馬 ドゥラエレーデ 指数-15 評価A
前走時の指数比較だけならばファントムシーフ、ミッキーカプチーノの2強と評価できた2022年のホープフルS。当日の馬場状態は有馬記念当日と激変して内と前が残るコンディションに変わっていた。ミッキーカプチーノは大外18番枠の不利。前走の葉牡丹賞の内容が強すぎて、いかにも疲れを残していそうだったが、結果は5着と敗北を喫した。

ファントムシーフは1番枠からまずまずのスタートを切り、外のシーウィザードを行かせて好位の直後からの競馬。脚をタメる戦略に出たことは良かったが、4角でシーウィザードとのスペースを詰め切っていたため外に出せなかった。結果、仕掛けを待たされ直線序盤では前が壁になりブレーキ。そこから外に出して、再度スピードに乗せていく形になったため4着に敗れた。

ミッキーカプチーノもファントムシーフも能力を出し切れたものではなく、戦前から負けても仕方のない要素を持っていただけに評価を落とす必要はない。今後のクラシック戦線で活躍を期待していい馬だ。

レースは前に行ったドゥラエレーデとトップナイフがワンツーフィニッシュ。ドゥラエレーデの前走、東京スポーツ杯2歳Sはシルトホルンと競り合いオーバーペースになったもので、4着でも負けて強しの内容だった。

またトップナイフはPP指数上の能力値は今回のメンバーでは1位だった。前走の京都2歳Sでは好位の直後の内目を追走していたものの、4角出口で押し上げようとしたところで、ビキニボーイに内から接触され外に弾かれた。その結果、中団まで下がる不利がありながらの2着、負けて強しの競馬だった。

トップナイフはもともと4走前の札幌未勝利戦時の指数が秀逸で、この連載では高く評価しており、ホープフルSでは本馬を狙っていた。このレースは予想も馬券も的中となった。大本命馬のミッキーカプチーノが2列目の外を取ったことでペースが上がらず、トップナイフらが前残りした一面もある。

最後に3着に突っ込んできたキンクズレインだけは完全に想定外。3着がファントムシーフのままだったら万々歳だったが、画竜点睛を欠く結果となった。いずれにしても現3歳牡馬クラシック戦線は大混戦ムード。勝ったり負けたりで馬券的には面白いクラシック戦線となりそうだ。

12月24日(土) 阪神2R 優勝馬 サイレンスタイム 指数-11(ダート) 評価A
デビューからの2戦は芝で3着、2着という成績だったサイレンスタイム。今回はデビュー3戦目で初めてダートに出走した。レースは9番枠から五分のスタートだったが、押すとスッと行き脚がついて2列目外からの競馬。3角では2番手に上がり、4角では先頭に並びかけると直線序盤で早々と先頭に立ち、そのまま7馬身差をつけて圧勝した。

今回の指数は古馬1勝クラスで勝ち負けになるレベル。本馬の父エスポワールシチーはデビューからしばらくは芝路線を歩んだが、3歳夏の1勝クラスを初ダートながら好指数で圧勝すると、ダート路線に転向しダート王者に登り詰めた。

今回のサイレンスタイムの指数は、エスポワールシチーが初ダート時に記録した指数と比較するとだいぶ落ちるだけに、父同様のストーリーとまではいかないかもしれない。しかし、初ダートながら出遅れることなくスピードに乗り、古馬1勝クラスの指数を記録したのは大したもの。ダートでの今後の活躍はかなり期待できそうだ。

12月24日(土) 阪神6R 優勝馬 モックモック -13(ダート) 評価B
12番枠からスタートは五分だったが、促されると加速がついて逃げ馬の外2番手からの競馬となったモックモック。このあたりのスムーズさは減量騎手ならではの加速感だった。そのまま余裕たっぷりに先頭列を追走し、3~4角では早々に先頭。直線で追われると後続をジワジワと引き離し、9馬身差をつけて圧勝した。

走破タイムの1分25秒4は同日8レースの古馬2勝クラスとの比較からもかなり優秀。新馬戦を古馬1勝クラス勝ちレベルの指数で勝利したことになる。ラスト2Fは12秒1-13秒0とそこまで余裕はなかった。ダートの新馬戦好指数勝ちの馬は、その後ダメージが残りやすい面もあるだけに楽観視できないが、疲れが取れ力を出し切れるようになれば、かなり上のクラスで戦っていく馬になるだろう。

12月28日(水) 阪神5R 優勝馬 ランスオブサウンド 指数-3 評価B
5番枠から好発を切って、楽に2番手に上がっていくスピードを見せたランスオブサウンド。外からも内からも位置を取りに上がってくる馬がいたため、すっと控えて好位の直後の中目を追走。最後の直線入口で外に持ち出し、ゴーサインを出されるとしっかり伸びて勝利した。

ラスト2Fは11秒0-11秒2。加速こそ出来ていないがなかなか良い数字。とにかくスムーズに控えることが出来たレースセンスの良さが光る。突出した才気はそこまで感じなかったが、着実な活躍が期待できる馬になってくれそうだ。

12月28日(水) 阪神6R 優勝馬 ユティタム 指数-19(ダート) 評価A
8月札幌の新馬戦では次走オキザリス賞を勝利し、全日本2歳優駿で1番人気に支持されたペリエールの2着となり、好指数を記録したユティタム。本馬は休養明けとなった前走の阪神未勝利戦でも、前半やや行きたがり、鞍上が折り合いに苦労する場面がありながらも好指数で完勝した。

今回はデビュー3戦目、勝利するのは当然として、どの程度の指数で走るかが注目された。レースは7番枠から五分のスタートだったが、スッと加速して3番手を追走する優等生な競馬。砂を被らない外目を追走し、最後の直線で追い出されるとラスト1F手前で抜け出し、3馬身差で快勝した。

本馬が今回で記録した指数は古馬2勝クラスレベルを上回るもの。ペリエールがオキザリス賞勝ち時に記録した指数と同等なものとなった。これで現3歳世代ダート路線ではトップを狙う1頭となった。ただ現3歳世代ダート路線は前年と比較すると低調。全日本2歳優駿も指数の低い決着となった。芝路線からの転入馬も含め、ここからまだまだ勢力図は変わっていきそうだ。

2022年12月4週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ペリファーニアの指数「-6」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.6秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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