【有馬記念】器用さが求められるトリッキーなコース 東大HCが中山芝2500mを徹底解析

東大ホースメンクラブ

中山芝2500mのコース図,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

コース分析

今週は中山芝2500mを舞台に中央競馬の総決算、GⅠ・有馬記念が行われる。天皇賞(春)、宝塚記念とGⅠを2勝、一躍現役最強クラスまで成長を遂げたタイトルホルダーと、天皇賞(秋)を鮮やかに撫で切った3歳世代の代表格、イクイノックスが人気の中心。2強を追うのは昨年の年度代表馬、復活を期すエフフォーリア、エリザベス女王杯からの連勝を狙う超良血ジェラルディーナ、芝転向でジャパンCを勝ったヴェラアズール、天皇賞(春)2着ディープボンドなどの精鋭たち。今年も年末の大一番にふさわしいスターホースたちが出揃った。

このコースを舞台とする重賞は有馬記念の他に天皇賞・春の重要なステップレースとなるGⅡ・日経賞がある。コースの特徴を過去のデータから分析していこう(使用するデータは2012年12月23日〜2021年12月18日)。

まずはコース概要。内回りコースが舞台だが、スタート地点を内回りに設定するとすぐコーナーを迎える影響で、外回りコースの3コーナー手前からスタートする。4コーナーを回った後に正面スタンド前で中山名物・高低差2.2mの急坂を上る。その後2コーナー前まで上りが続き、向正面の平坦な直線を迎える。3・4コーナーのきついカーブを下るとわずか310mしかない直線へ(直線距離は中央4場で最短)。最後に待ち受ける2度目の急坂が勝負のカギを握る。コーナーを6回も通過し、器用さが求められるトリッキーなコースレイアウトだ。

有馬記念史上、3着以内皆無の8枠16番

過去10年の中山芝2500m・枠別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の中山芝2500m・枠別成績>
1枠【12-10-10-91】勝率9.8%/連対率17.9%/複勝率26.0%
2枠【11-9-11-96】勝率8.7%/連対率15.7%/複勝率24.4%
3枠【12-10-11-106】勝率8.6%/連対率15.8%/複勝率23.7%
4枠【8-15-14-112】勝率5.4%/連対率15.4%/複勝率24.8%
5枠【13-18-17-120】勝率7.7%/連対率18.5%/複勝率28.6%
6枠【14-18-9-135】勝率8.0%/連対率18.2%/複勝率23.3%
7枠【12-8-24-141】勝率6.5%/連対率10.8%/複勝率23.8%
8枠【19-11-4-152】勝率10.2%/連対率16.1%/複勝率18.3%

古くはアメリカンボス、マツリダゴッホ、近年ではクイーンズリングが有馬で好走したことで内枠有利の印象が強いコースだが、全体成績で見ると枠ごとに大きな差はないのが実情。気にしておきたいのは8枠の不利で、有馬記念の過去10年では【0-0-1-19】(馬券内は2018年のシュヴァルグランのみ)。1986年以降で見ても【3-2-1-67】複勝率8.2%。勝ったのはイナリワン、シンボリクリスエス、ダイワスカーレットと歴史的名馬だけだ。特にレース史上、16番枠から馬券に絡んだ馬はいない。

過去10年の中山芝2500m・脚質別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の中山芝2500m・脚質別成績>
逃げ【11-7-6-86】勝率10.0%/連対率16.4%/複勝率21.8%
先行【52-47-36-205】勝率15.3%/連対率29.1%/複勝率39.7%
差し【27-35-44-336】勝率6.1%/連対率14.0%/複勝率24.0%
追込【6-7-11-312】勝率1.8%/連対率3.9%/複勝率7.1%

脚質別では先行>差し>逃げ。コース形態上、好位から最後の直線でもう一脚を使える強力な先行馬を倒すのは至難の業。有馬記念でも人気を集めた先行組はほとんど好走しており、トゥザワールド、ゴールドアクター、クイーンズリングなどが波乱を演出してきた。基本的に前に意識を向けるべきだろう。

後方勢はおととしサラキアが11番人気で2着に突っ込み、3年前はワールドプレミアが4角16番手から3着まで間に合ったが、好走率はやはり一枚も二枚も劣る。3連系で高配当を狙うなら追込勢をバッサリ切るのも一つの手だ。

有馬記念を勝ったことがない父ミスタープロスペクター系

過去10年の中山芝2500m・種牡馬別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の中山芝2500m・種牡馬別成績>
ディープインパクト【10-9-14-97】勝率7.7%/連対率14.6%/複勝率25.4%
スクリーンヒーロー【3-0-1-6】勝率30.0%/連対率30.0%/複勝率40.0%
エピファネイア【4-0-0-2】勝率66.7%/連対率66.7%/複勝率66.7%
エイシンフラッシュ【0-0-1-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率14.3%

圧倒的な信頼度を誇ったステイゴールドが亡き今、種牡馬界では確固たる存在がいない。ディープインパクト産駒が10勝を挙げ2位タイにつけるが(有馬記念にはジャスティンパレス、ポタジェが登録)、好走率がそれほど高いわけではない。同馬も2019年にこの世を去っており、ますます混戦状態となりそうだ。

以下サンプルは少ないものの有力馬の父について確認。まず複勝率4割と高水準でまとめているのがスクリーンヒーロー産駒。ゴールドアクターの有馬記念・日経賞制覇を皮切りに、ウインマリリンも日経賞を制しており、3勝は全て重賞の舞台。ボルドグフーシュは菊花賞でレコード決着の中をハナ差2着。目下充実の3歳馬だ。

同じロベルト系でもさらに勝ち切っているのがエピファネイア産駒で、6戦4勝の数字は目を引く。有馬記念にはアリストテレス、イズジョーノキセキ、エフフォーリアがエントリー。特に昨年覇者エフフォーリアの復活に期待したいところだ。

ジャパンC覇者ヴェラアズールが該当するエイシンフラッシュ産駒は微妙な数字。唯一の馬券圏内が同馬のサンシャインS(3勝クラス)という点が救いか。またタイトルホルダーの父ドゥラメンテは【1-1-0-3】だが、有馬記念を父ミスタープロスペクター系が制した例は一度もないことは覚えておきたいところ。なおキタサンブラック(イクイノックス)の出走例はなかった。

過去10年の中山芝2500m・騎手別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の中山芝2500m・騎手別成績>
戸崎圭太【11-11-2-32】勝率19.6%/連対率39.3%/複勝率42.9%
ルメール【7-5-7-9】勝率25.0%/連対率42.9%/複勝率67.9%
横山和生【2-2-1-5】勝率20.0%/連対率40.0%/複勝率50.0%
横山武史【2-1-3-11】勝率11.8%/連対率17.6%/複勝率35.3%

騎手別成績では戸崎圭太騎手が最多勝。高い連対率が光り、特に2021年以降では【2-3-2-2】複勝率77.8%、複勝回収率130%と素晴らしい成績だ。騎乗予定のブレークアップは同コースのサンシャインSでヴェラアズールに先着、前走のアルゼンチン共和国杯で重賞初制覇と勢いに乗っている。

関西勢からはただ一人、ルメール騎手をピックアップ。2016年以降の有馬記念で【1-2-2-1】複勝率83.3%、2019年アーモンドアイ9着以外は全て馬券圏内に入っており、このコースを知り尽くしている男。イクイノックスで久しぶりの勝利なるか注目したい。

タイトルホルダーとコンビを組む横山和生騎手はちょうど半数の騎乗馬で好走、おととしのグレイトフルSで12番人気のジャコマルを勝利に導くなど妙味も兼備している。エフフォーリアで挑む横山武史騎手は兄より信頼度が落ちるものの、依然として強調できる数字だ。その他の有力勢はC.デムーロ騎手(ジェラルディーナ)【1-0-0-7】、松山弘平騎手(ヴェラアズール)【0-2-1-5】、福永祐一騎手(ボルドグフーシュ)【1-2-0-17】となっている。


中山芝2500mのコースデータ,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開。秋G1シーズンに合わせ、新入部員募集中。

《関連記事》
【有馬記念】夢のオールスター集結 有馬は「宝塚記念」と「天皇賞(秋)」の勝ち馬が強い!
【有馬記念】参考レース振り返り 天皇賞(秋)勝ちイクイノックスと好データの菊花賞組
【有馬記念】過去10年勝ち馬すべて前走4着以内! タイトルホルダー、エフフォーリアは覆せるか

おすすめ記事