【朝日杯FS】外国人騎手の活躍目立つ2歳マイル決戦 リオンディーズがエアスピネルを破った2015年

緒方きしん

朝日杯FS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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重賞実績馬がズラリと集結する今年の朝日杯FS

阪神JFは1番人気のリバティアイランドが快勝。来春以降の牝馬戦線がこの馬を中心に回っていくことを予感させる、非常に強い勝ち方だった。また、香港では5歳牝馬のウインマリリンが念願のGⅠ制覇を達成。オークスやエリザベス女王杯で2着と悔しい思いをしていた実力馬が、ついに栄冠を掴んだ。

さて、今週は朝日杯FS。90年代にはミホノブルボンやナリタブライアン、グラスワンダーらが勝利している伝統の一戦だ。00年代はアドマイヤドンやドリームジャーニー、ローズキングダムらが、10年代にはロゴタイプやダノンプレミアム、アドマイヤマーズらが勝利をあげている。

そんな2歳GⅠに、今年も素質馬が多数集結。デイリー杯2歳Sの1、2着馬オールパルフェ(父リアルスティール)とダノンタッチダウン(父ロードカナロア)、京王杯2歳Sの1、2着馬オオバンブルマイ(父ディスクリートキャット)とフロムダスク(父Bolt d'Oro)、サウジアラビアRCの1、2着馬ドルチェモア(父ルーラーシップ)とグラニット(父ダノンバラード)など、さまざまな血統の重賞実績馬が並ぶ注目の一戦となった。今回は、朝日杯FSの歴史を振り返る。

1番人気の安定感は◯

朝日杯FS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で1番人気馬は2勝。サリオスとダノンプレミアムが人気に応え、2021年セリフォスは2着、2020年レッドベルオーブは3着、2018年グランアレグリアは3着と、敗れながらも馬券圏内は確保している。最後に馬券圏外となった1番人気馬は2016年ミスエルテ(4着)、掲示板を外した1番人気馬となると1996年クリスザブレイヴ(15着)まで遡る。

とは言え、未知数な2歳馬が集結するだけあって、単なる平穏決着に終わるわけではない。2020年の覇者は7番人気グレナディアガーズ、2019年3着は14番人気グランレイ、2018年2着は9番人気クリノガウディーというように伏兵の活躍も目立つ。特に2016年は6番人気サトノアレス、7番人気モンドキャンノ、12番人気ボンセルヴィーソで決着し、三連単は2212.0倍の20万馬券となった。

また、外国人騎手が強いことも特色のひとつ。M.デムーロ騎手がアドマイヤマーズ、リオンディーズ、ロゴタイプ、グランプリボスで勝利しているほか、ムーア騎手がサリオス、アジアエクスプレスで勝利。さらにアルフレードはウィリアムズ騎手、コスモサンビームはバルジュー騎手、アドマイヤコジーンはロバーツ騎手で制している。

血統のロマンを感じさせたリオンディーズVSエアスピネル

デムーロ騎手が制したうちのひとつ、2015年朝日杯FSは印象に残るレースだった。

1番人気は武豊騎手とエアスピネル。エアスピネルはデビュー戦で後の重賞馬ロジクライらを相手に勝利すると、続くデイリー杯2歳Sも勝利。小倉2歳S勝ち馬でその後も阪神Cなどを制するシュウジや、後に宝塚記念で3着に食い込むノーブルマーズ、ダートで開花するウインムートなど多彩なメンバーを一蹴した。

鞍上の武豊騎手は当時のJRA・GⅠで、朝日杯FSだけが未勝利。2008年には1番人気ブレイクランアウトで3着と好走したものの、セイウンワンダー、フィフスペトルに先着を許した。そんな武豊騎手が遂に朝日杯FSを制する日がきたかと、ファンはエアスピネルを単勝オッズ1.5倍の圧倒的1番人気へと押し上げた。

2番人気はリオンディーズ。デビュー戦は岩田康誠騎手を背に快勝したが、その岩田騎手が重賞馬シュウジとコンビを組み、鞍上には新たにデムーロ騎手が配された。近5年での騎乗機会は、2013年マイネルディアベル4着、2012年ロゴタイプ1着、2010年グランプリボス1着と抜群の成績を出していたデムーロ騎手。1戦1勝馬ながら、多くのファンからの期待が寄せられた。

この2頭はどちらもキングカメハメハ産駒。そして、エアスピネルが母エアメサイア、リオンディーズは母シーザリオと、いずれも良血馬であった。エアメサイアとシーザリオは現役時代の同期であり、クラシック戦線で激突した間柄でもある。直接対決の結果は、桜花賞がシーザリオ2着・エアメサイア4着、オークスがシーザリオ1着・エアメサイア2着というものだった。エアメサイアの鞍上が武豊騎手だったこともあり、さらに血統の面白さを感じる一戦となった。

結果は、上述の通りリオンディーズとデムーロ騎手の勝利。武豊騎手の朝日杯FS制覇は、またしても持ち越しとなった。

この2頭の対決は翌春も続き、皐月賞とダービーでは上位3着以内をマカヒキ、ディーマジェステイ、サトノダイヤモンドという3頭のディープインパクト産駒が独占するなか、皐月賞では4位入線のリオンディーズが5着に降着してエアスピネルが繰り上がりで4着。ダービーではエアスピネルが4着、リオンディーズが5着と、春クラシック2戦ではいずれもエアスピネルが上位という結果となった。

今年も伝説の一戦となることを目指して

リオンディーズはダービーを最後に引退し、種牡馬として人気を集める。既にアナザーリリック、テーオーロイヤル、ジャスティンロックという重賞馬を輩出し、さらなる活躍が見込める種牡馬となっている。そしてエアスピネルは9歳になった今年の秋まで現役を続け、非常に多くのファンから愛される馬として、当初の芝路線だけではなくダート路線も盛り上げた。

そして武豊騎手は、昨年ついにドウデュースとのコンビで朝日杯FSを制覇。さらに今年に入って、同馬で皐月賞3着・ダービー勝利という偉業を達成した。ドウデュースが制した昨年の朝日杯FSは、2着馬セリフォスが先月マイルCSを制覇し、3着のダノンスコーピオンがNHKマイルCを制覇、5着馬ジオグリフが皐月賞を制覇と、多くの実績馬を輩出している。他にもトウシンマカオやプルパレイが重賞馬となり、アルナシームやドーブネといった成長中の馬も控えていて、まさに“伝説の朝日杯FS”になろうとしている。

今年の朝日杯FSに集結したメンバーも、素質馬がズラリと並んでいる。すでに名牝への道を歩み始めた阪神JF勝ち馬リバティアイランドとともに来年の競馬界を盛り上げる馬が、1頭だけでなく複数ひそんでいるはずだ。その素質馬を探しつつ、今年の朝日杯FSを大いに堪能したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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