【朝日杯FS】スピードの持続力勝負ならドルチェモア、瞬発力ならダノンタッチダウン 混戦の2歳王者決定戦

勝木淳

朝日杯FSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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キャリア2、3戦が好走ゾーン

2歳から路線が固定されつつある牝馬クラシックに対し、牡馬戦線はマイルの朝日杯FSと皐月賞と同舞台で行われるホープフルSで分かれ、あえて2歳GⅠに出走せず来春に向けて休養に入るなどさまざま。

昨年は武豊騎手がドウデュースでこのレース初制覇。さらに93年ナリタブライアン以来久々に朝日杯FSの勝ち馬が日本ダービーを制した。一流マイラーに育つ馬もいれば、クラシックウイナーもいる。路線も多様なら、ここを勝つ馬も多様。来春に向けて注目の一戦であることに変わりない。データは阪神に舞台を移した過去8年間のものを使用する。


過去8年朝日杯FS人気別成績,ⒸSPAIA


紛れの少ない阪神に移ったことで、1番人気が崩れるケースは減少、【3-2-2-1】勝率37.5%、複勝率87.5%と安定している。2番人気【2-2-1-3】勝率25.0%、複勝率62.5%、3番人気【1-1-1-5】勝率12.5%、複勝率37.5%で上位人気は堅調。6、7番人気も1勝ずつなので、波乱はないとはいえないが、まずは上位人気に目付けしたい。ただ、10番人気以下【0-1-3-54】複勝率6.9%に注意したい。経験が少ない2歳戦だけに人気の盲点も確かに存在する。16年12番人気3着ボンセルヴィーソ、19年14番人気3着グランレイなど馬券のどこかに人気薄を組み込むのも面白い。


過去8年朝日杯FSキャリア別成績,ⒸSPAIA


キャリア別成績は1戦【1-0-0-2】勝率、複勝率33.3%もいいが、基本は2戦【3-3-3-28】勝率8.1%、複勝率24.3%、3戦【3-4-1-29】勝率8.1%、複勝率21.6%が中心。連下候補は4戦【1-1-4-26】勝率3.1%、複勝率18.8%まで。5戦以上は【0-0-0-21】。


有力候補はドルチェモア

キャリア2戦2勝で重賞を制したドルチェモア、オオバンブルマイや3戦2勝オールパルフェ。同馬にデイリー杯2歳Sで敗れたダノンタッチダウンなど実績馬はキャリア的には問題なし。では前走成績ではどんな馬がいいのか。具体的にみてみよう。


過去8年朝日杯FS前走クラス別成績,ⒸSPAIA


2歳とはいえ、さすがにGⅠだけあって、前走重賞がGⅡ、GⅢあわせて【3-8-5-50】勝率4.5%、複勝率24.2%。ちょっと勝ちきれない点は気になるが、過去8回で2着8頭とパーフェクトなので、まずはここが基本線。


過去8年朝日杯FS前走重賞組レース別成績,ⒸSPAIA


前走重賞の内訳はサウジアラビアRC(いちょうS含む)【2-2-2-5】勝率18.2%、複勝率54.5%が目立つ。今年は1、2着ドルチェモア、グラニットが該当する。着順別では1着【2-1-2-0】、2着【0-1-0-4】なのでドルチェモアが一歩リード。位置取り別では先行【2-0-2-0】で逃げは出走ゼロ。2番手からグラニットを捕らえたドルチェモアを上位にとりたい。

今年はこのレースとしてはハイペースに近く、前後半800m46.3-47.1、上がり600m35.6なので瞬発力は問われなかった。過去に勝って好走した5頭の大半はスローの瞬発力勝負だったので、このデータを安易に当てはめていいのか分からないが、不良馬場だった20年ステラヴェローチェもこのレース2着。重賞での瞬発力勝負の経験がないと厳しいわけでもない。むしろ厳しめの流れを経験したことは大きい。

次にデイリー杯2歳S【1-3-2-16】勝率4.5%、複勝率27.3%。重賞組の勝ちきれなさはここにある。今年は1、2着オールパルフェ、ダノンタッチダウンの2頭。こちらも着順では1着【1-2-1-2】、2着【0-0-1-4】、位置取りは逃げ【1-0-1-2】、後方【0-0-0-4】でオールパルフェ優勢。ただ今年のレースは前後半800m47.3-45.9、上がり600m34.2のスローペース。スケールでは上がり33.1の瞬発力で追い込んだダノンタッチダウンが上ではある。とはいえ、そう評価されオールパルフェが甘くみられるなら狙ってもいい。

京王杯2歳Sは【0-2-2-18】複勝率18.2%。今年は1、2着オオバンブルマイ、フロムダスク、12着ミシェラドラータが登録。1着が【0-2-1-4】、2着【0-0-0-5】。6着以下【0-0-0-7】。ここもオオバンブルマイが残る。こちらは1400m戦らしいゴールまで緩みのないラップ。好位から押し切ったオオバンブルマイや逃げたフロムダスクのスピードは距離延長でも発揮できるか。


前走からの距離変化に注意

では重賞以外から来る馬はどうだろうか。ウメムスビなどが該当する前走オープン・Lは【1-0-2-18】勝率4.8%、複勝率14.3%、コーパスクリスティ、バグラダスなどの1勝クラス【2-0-0-22】勝率、複勝率8.3%。頻繁に来るわけではないが、傾向は把握しておこう。


過去8年朝日杯FS前走OP・L組距離別成績,ⒸSPAIA


オープン・Lの前走距離別成績は延長【0-0-0-10】なのでウメムスビはちょっと苦しい。抽選対象のスズカダブルが当てはまる短縮が【1-0-1-5】勝率14.3%、複勝率28.6%。スズカダブルは昇級後1800mで逃げて3、5着。未勝利を勝ったマイル戦に戻るのは面白い。


過去8年朝日杯FS前走OP・L組距離別成績,ⒸSPAIA


前走1勝クラスの距離別成績は延長【0-0-0-12】、短縮【0-0-0-5】で距離変化は好走なし。勝った2頭はいずれも同距離で【2-0-0-5】勝率、複勝率28.6%。キャリアの浅いうちは距離変化に対応しづらい面があり、なおかつ格があがるGⅠへの挑戦となれば、経験ある距離が理想だろう。

該当するのは中山のマイル戦アスター賞を勝ったドンデンガエシ。そのアスター賞は前後半800m49.1-46.7、上がり34.5。ドンデンガエシはこのラップを逃げ切った。恵まれたといえばそれまでだが、2着に2馬身半差。スローで0.4差、接戦に持ち込ませなかった。グラニットやオールパルフェ、フロムダスクとの枠の並びにも注目だ。各馬の出方次第だが、ある程度前半が流れ、単純な瞬発力勝負にならない可能性もある。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。


朝日杯FSインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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