【マイルCS】穴馬は外枠の2頭! 外差し馬場ならエアロロノア、ファルコニアが面白い

山崎エリカ

2022年マイルCS出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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外差し馬場が濃厚

秋の阪神開催、Aコース使用6週目で行われた先週のエリザベス女王杯は、雨の影響もあり、馬番11番より外枠の馬が掲示板を独占した。2着同着のウインマリリンこそ好位の外目でレースを進めたが、他の上位馬は全て差し、追い込みだった。

今週も日曜日は雨予報。先週の日曜日は良馬場だった前半のレースでも外差しが決まっていた。今回もレース当日に雨が降れば、より外枠の差し馬が有利になると予想される。使い込まれた夏の新潟開催終盤の芝のように、外しか伸びない状況ではないが、外枠有利と見て予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年マイルCS出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 サリオス】
前走の毎日王冠は、最後の直線で中団の内目からの進路確保に苦労し、中目から狭い間を割って2列目まで上がってきた。そして、ラスト1Fで先頭列のダノンザキッドとジャスティンカフェの間を割りしぶとく伸び、半馬身差の優勝。直線での進路取りでスムーズさを欠きながらも、見事な差し切り勝ちを決めた。

本馬はここでは能力値1位。休養明けとなった3歳時の毎日王冠でも3馬身差で圧勝した実績があり、能力最高値もここでは1位タイとなる。しかし、その次走のマイルCSでは5着に凡退。今年の毎日王冠では3歳時ほど高い指数では走っておらず、余力を残している可能性もある。ただ今回も休養明け好走後となるため、思わぬ凡退をする可能性も否定出来ない。

【能力値2位 セリフォス】
2歳時はデビューから3連勝し、朝日杯FSでは2着。世代トップクラスではあるが、あと一歩足りない印象もあった。3歳初戦のNHKマイルCではややハイペースを先行したこと、その流れで前半から掛かり気味になっていたことで、能力を出し切れずに4着敗退。しかし、これが良い叩き台になったようで、次走の古馬相手となった安田記念では差のない4着と善戦。古馬マイルGⅠでも通用する下地があること、そして着実に成長しているところを見せた。

前走の休養明けとなった富士Sではさらに成長した姿を見せた。中団の中目から最後の直線半ばで外に出されると、そこからはしぶとく伸び、前2頭を捕らえて優勝。自己最高指数を記録した。NHKマイルCまでは先行馬だったが、そこで我慢させることを教え、安田記念以降、差し馬になったこともワンランク上昇した要因だろう。

今回は前走同様に走れば当然勝ち負けになる。問題は前走の走りが疲れを残したかどうか。今回はある意味サリオスが3歳時の毎日王冠を優勝し、マイルCSに向かってきた時と似たところがある。セリフォスの能力の天井がどこにあるかで、今回の結果が決まりそうだ。

【能力値3位 ウインカーネリアン】
コントレイルが優勝した2020年皐月賞で正攻法の強い競馬をし、4着と好走した実績馬。その後もジワジワと地力をつけ、5走前の3勝クラス・幕張Sは重賞で勝ち負けになるレベルの指数で圧勝した。その後は蹄葉炎で長期休養となり、復帰初戦の六甲Sこそ逃げて6着に敗れたものの、その後は先行策から3連勝。

5走前の活躍からその後の3連勝も当然で、前走の関屋記念では初重賞制覇を達成した。前走は内からハナを主張したシュリに行かせて2番手外を追走。超絶スローペースを上手く折り合い、3~4角でも我慢。ラスト2Fで仕掛けて先頭に立つと、そこからしぶとく伸びて3/4差で優勝した。

前走はシュリが2着に粘っているように、前有利の展開に恵まれた面もあった。しかし、前々走の米子Sでは平均ペースを3番手から抜け出し快勝しているように、ある程度ならペースが上がっても問題ない。ただし、今回はスタミナが不足する休養明け。レース当日は雨予報で先週同様に外差し馬場が予想される。それだけに2番枠から先行するとなると、狙いが下がるのも確か。

【能力値4位 ソダシ】
芝マイルでは4戦4勝、今年のヴィクトリアマイルでは3度目のGⅠ制覇を達成した馬。同レースは5番枠から楽に先行し、前のレシステンシアをマークしながらの競馬。最後の直線で3列目から内を突き、しっかりとレシステンシアを差し切っての優勝だった。

前走の府中牝馬Sではライティアが逃げ、前半は好位の最内を追走。向正面ではスタートで躓きハナに行けなかったローザノワールが強引に先頭に立ち、ペースを引き上げた。ソダシは外から内に切ってきたアブレイズを行かせ、中団に近い位置まで下げる形。これにより包まれて最後の直線では進路取りにやや苦労した。一度は中目に出したものの進路を確保できず、結局、内に切り替えアンドヴァラナウトとローザノワールの狭い間を割って伸びての2着だった。

前走はペース的な観点から、向正面で位置を下げたのは正解だった。ただ、最後の直線でスムーズさを欠いたことから、完璧な立ち回りだったとは言えない。また3~4角の最内で脚をタメ、最後の直線でしぶとく伸びたイズジョーノキセキが想像以上に強かったことから、悲観する2着惜敗ではなかった。今回へ向けての余力もそれなりにあるだろう。芝マイルは得意舞台ではあるが、これまでのマイル4勝は超高速馬場や高速馬場でのもの。時計の掛かる馬場となると不安もある。

【能力値5位 ジャスティンカフェ】
4走前の小豆島特別から横山典騎手に乗り替わり、超後半型の競馬をすることで良さが出た馬。3走前の湘南Sは14番枠から五分のスタートを切ったものの、二の脚が遅く、後方2番手からの競馬。そこから折り合い重視で乗られ、4角では外を回り直線序盤で大外に出されると、ラスト2Fで一気に突き抜け勝利。当時の指数は重賞通用レベルだった。

重馬場の前々走エプソムCでは11番枠から最後方まで下げ、先団からかなり離された位置でレースを進めた。4角では外に出す余裕がなく、馬場の悪い内を突き4着。3歳時のアーリントンC以来となる複勝圏外に敗れたが、着差は0.1秒と悪い内容ではなかった。

基本的には崩れにくい馬ではあるが、休養明けの前走毎日王冠でも4角から直線一気の競馬で、サリオスの2着と好走。ただ、ここで自己最高指数を記録したとなると、今回は反動が懸念される。雨が降って外差し馬場になることは本馬にとってプラスだが、信用しきれないところがある。

穴馬は外枠の2頭

今回の能力値上位かつ、上位人気が予想される馬たちの多くが内枠に入った。それらの馬たちは、馬場の悪い内を通る不利を受けてしまいそうだ。当初、芝1200m戦を叩いてここへの本気度が高く、能力値上位5頭と差のないシュネルマイスターを最有力視していた。しかし、4番枠は微妙。ここは人気もなく、外枠を引き当てた2頭に期待したい。

【エアロロノア】
昨春のマイラーズCでは重賞初挑戦ながら差のない5着と重賞通用級の力を見せた。その後は昨冬のリゲルSと今春の六甲Sを勝利し、阪神芝1600mに高い適性を示した。前々走の安田記念は10番枠から出遅れ。また、前の馬とのスペースが作れず後方2番手まで下がってしまい、3~4角の外目を追走する競馬。最後の直線でさらに外に出されると、メンバー最速タイの上がりで勝ち馬から0.2秒差まで追い上げる脚を見せた。

前走の富士Sは外差し馬場。10番枠より外の馬が1~4着を独占した中で1番枠から出遅れて、そこから中団の内を追走する形。4角出口で中目に誘導されたが、上位馬が通った外までは出し切れず、5着に敗れた。しかし、それで勝ち馬セリフォスと0.5秒差なら悪くない。

本馬はリゲルS、六甲Sを勝利した直後のレースでは疲れが出て凡退している。それを考えれば、前哨戦の富士Sで全能力を出し切っていないことは今回に向けて好感が持てる。前々走でGⅠ通用の感触を掴み、今回は得意の阪神芝1600m。さらに13番枠だけに、馬場の良い外を通れそうだ。

ただスタートは決めたい。近走同様に出遅れるようだと、外枠でもそこまで有利にならない可能性もある。なぜなら先週はまだ騎手たちが外有利の馬場と確信していなかったため、極端な外枠有利の結果となった。しかし今回は内枠の騎手たちも外に進路を求める公算が高い。そうなると出遅れた場合、さらに外を回らされるからだ。

使い込まれた夏の新潟開催終盤の芝のように、外しか伸びない状況ならそれでも良いが、今週の阪神芝はそこまで極端な状態ではない。もし本馬が出遅れるようなら、外枠の利を生かせるのはもう一頭の穴馬かもしれない。

【ファルコニア】
スプリングS4着、京都新聞杯3着と3歳時から活躍していた馬。古馬になってからも着実に力をつけ、昨年はエプソムC3着、カシオペアS1着。今年に入ってからの5戦は全て3着以内という安定感で、前走の京成杯AHでは初重賞制覇を達成した。

自己最高指数を記録したのは、今年の5戦でもっとも強い内容をだった3走前の阪神芝1600mのマイラーズCだ。3番枠からまずまずのスタートを切って、好位の中目を追走。道中もベステンダンクが単騎逃げでペースを引き上げていく中、離れた3番手からレースを進めた。最後の直線では2番手ホウオウアマゾンの外からジリジリと伸び、ラスト1Fで同馬にクビ差まで迫った。外からソウルラッシュに差し切られて3着だったが、稍重でレースがややハイペースだったことを考えれば、最後までよく食らいついていた。

一方、前走の京成杯AHは初重賞制覇だったが、3走前ほど走れていない。前走時は同日の芝1600mの1勝クラスよりも0.5秒も決着タイムが遅かったように、かなりのスローペース。外枠からやや出遅れたミッキーブリランテが最初の2角で先頭に立てるほどだった。

本馬は11番枠からスタートは五分だったが、楽々2番手を追走。ミッキーブリランテに捲られ3番手にはなったが、レースが前残りになったため、ゴール手前で同馬を競り落として優勝した。しかし、詰めの甘い面がある本馬が積極的な競馬をしたせいか、指数は3走前と比べるとダウン。

前走のレースぶりからまだ余力は残っている可能性が高く、前々走の中京記念のように外枠から差す競馬なら、今回は通用するという計算だ。前々走はかなりの高速馬場の中、15番枠だったため中団外目から向正面で早めに上がって行く競馬。3~4角で好位の外々とかなりのロスを作ったことで3着に敗れたが、逃げて優勝したべレヌスとは0.1秒差だった。このことから今回想定される外差し馬場なら勝っていた可能性が高い。大外17番枠を引いた今回は、これまで以上の走りを見せる可能性がある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)サリオスの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の下線茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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