【エリザベス女王杯】栗東所属馬、前走府中牝馬S組に強力データあり 本命はアンドヴァラナウト

門田光生

エリザベス女王杯の前走クラス別成績(過去15年,ⒸSPAIA

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スノーフェアリーの再現なるか

2022年11月13日に阪神競馬場で行われる第47回エリザベス女王杯。今回はアイルランドのマジカルラグーンが出走予定で、海外からの参戦は2011年以来、実に11年ぶり。

2011年といえば、ライアン・ムーア騎手騎乗のスノーフェアリーが連覇を果たした年。この時はクビ差だったが、衝撃的だったのはその前年、1回目のエリザベス女王杯を制した2010年だろう。アナウンサーが「すんごい脚!」と叫んだように、直線で抜けてくる脚は、まさに強烈だった。今年のマジカルラグーンにも、それぐらいのインパクトを期待したいものだ。

ちなみに、過去15年で外国馬はのべ7頭出走、勝ったのはスノーフェアリー(2勝)だけ。マジカルラグーンはスノーフェアリーと比べ血統がかなり重く、日本の馬場に適性があるかどうかは微妙なところ。しかし、2010年のスノーフェアリーと年齢、調教国が同じ。さらに愛オークス勝ちという共通点もあり、押さえは必要かもしれない。

前置きが少し長くなったが、今回も2007年から2021年までの過去15回のレースを基にデータ検証していきたい。

エリザベス女王杯出走馬の所属,ⒸSPAIA エリザベス女王杯出走馬の年齢,ⒸSPAIA


☆所属と年齢
美浦5連対(3勝)、栗東23連対(10勝)、そして海外2連対(2勝)。美浦と栗東の比較だと、勝率は大差ないが、連対率では栗東所属馬が2倍近く上回っている。また、近5年だと馬券に絡んだ15頭はすべて栗東所属馬。来日がなかった海外馬については判断がつかないが、近年は栗東所属馬が圧倒的に有利というデータが出ている。

年齢別だと、4歳馬が11連対(7勝)で最多。続いて3歳馬の10連対(5勝)。5歳馬も7連対(3勝)と悪くないが、6歳以上は未勝利で、美浦所属の6歳以上に限るとすべて着外。また、東西問わず7歳以上の馬も馬券に絡んでいない。

エリザベス女王杯出走馬の前走クラス,ⒸSPAIA エリザベス女王杯出走馬の主な前走,ⒸSPAIA


☆前走クラスと主な前走
勝ち馬全頭、また2着馬も12頭が前走でGⅠ(海外含む)かGⅡを使っていた。GⅢ組は2007年2着フサイチパンドラ(エルムS)と、2008年2着カワカミプリンセス(GⅢ時代の府中牝馬S)の2頭。エルムSはダート戦だが、フサイチパンドラは前年のエリザベス女王杯の勝ち馬。また、府中牝馬SはGⅡ昇格後に連対馬を多数出しているレースだ。

条件戦からは2013年2着馬ラキシス(鳴滝特別・1000万下)が連対。これを例外として扱うかどうかは後にして、この3例とも過去15年の中では古い方。基本は前走GⅠかGⅡ組を狙うのが正解だろう。

レース別だと、府中牝馬S(GⅡ昇格後)が5勝、2着5回で最も相性がいいステップレース。それに続くのは秋華賞の4勝、2着4回。連対した3歳馬で秋華賞を経由していないのは、外国馬のスノーフェアリーと上記で名前が出たラキシスのみ。どうやらラキシスは例外として扱うのが妥当のようだ。また、前走が新潟牝馬SやクイーンSだった馬は全く馬券に絡んでいなかった。

エリザベス女王杯出走馬のその他データ,ⒸSPAIA

☆その他
その他で気になったデータを挙げてみる。まずは前走着順。前走10着以下だった馬から勝ち馬は出ていない(2着は2頭)。続いて前走でコンマ6秒以上負けていた馬の勝率は2.2%と低くなっている。最後に前走馬体重が430キロ以下だった馬は15頭いて、馬券に絡んだのは2017年2着のクロコスミアだけ。ちなみに、クロコスミアは2018、2019年も2着だったが、この時は前走馬体重が430キロを超えていた。

☆おまけ
牝馬限定レースはGⅠに限らず荒れることが多いというのが定説。このレースも2009年に3連単で150万を超える高配当が出たことがある。5番人気以下で馬券に絡んだ馬の傾向を調べてみたので、ちょっとお付き合いを。

過去15年で美浦所属馬は3勝しているが、いずれも5番人気以下(それぞれ11、7、6番人気)だった。要するに、人気だった美浦所属馬は勝てていないということだ。また、6歳馬で連対した2頭も5番人気以下(12、7番人気)。高配当を狙うなら、人気薄の美浦所属馬、もしくは6歳馬となる。

府中牝馬S組が強い

エリザベス女王杯のデータをまとめてみよう。まず好データはA「栗東所属」B「4歳馬」C「府中牝馬S組or秋華賞組」。

勝率、もしくは連対率が低くなるのはD「6歳(栗東)」E「前走GⅠ、GⅡ以外」F「前走10着以下」G「前走コンマ6秒以上の負け」H「前走馬体重430キロ以下」。連対した例がないのはI「前走新潟牝馬S、もしくはクイーンS組」。

今年も多くの重賞をデータで検証してきたが、このエリザベス女王杯はかなり難解な部類に入る。まずは所属別。近5年だと美浦勢が1頭も馬券に絡んでいないので、美浦組をばっさり切る。

残った栗東組のうち、他のプラスデータであるB「4歳馬」C「府中牝馬S組or秋華賞組」を満たし、かつマイナスデータを持たない馬が1頭だけいる。それがアンドヴァラナウトだ。母の姉はこのレースを連覇したアドマイヤグルーヴ。祖母エアグルーヴも3着の実績があり、このレースに縁のある血統といえる。また、今回騎乗予定のムーア騎手は、冒頭で書いたスノーフェアリーに騎乗していた。当時の衝撃の再現を期待したい。

次位は、プラスデータを2つ持ち、同じくマイナスデータがない馬。イズジョーノキセキ、ジェラルディーナ、スタニングローズ、ナミュールの4頭。特に、イズジョーノキセキは6年連続で連対している府中牝馬S組。ここ6年で3回ワンツーを決めているので、アンドヴァラナウトとの1、2着というのも十分現実的だ。あと、冒頭で取り上げた外国馬のマジカルラグーンを押さえる。

人気が予想されるデアリングタクトだが、プラスデータがA「栗東所属」だけで、マイナスデータのG「前走コンマ6秒以上の負け」に引っかかるので、今回は軽視したい。

◎アンドヴァラナウト
◯イズジョーノキセキ
▲ジェラルディーナ
△スタニングローズ
×ナミュール
×マジカルラグーン

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて園田・姫路競馬を中心に予想・記事を執筆中。
これから年末にかけて、確定申告に必要な書類が次々と届きます。ひとところにまとめて置いておくのですが、どこにまとめたかを忘れるようになってきました。老いですね……。

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